粒子系の量子論ノート
粒子系1の量子論の基本事項を体系的にまとめる. 自分用のノートなので, 正確性は保証されない2. また, 線型代数や関数解析で扱われるような数学的な事項には踏み込まず, 定義等も省略する.
状態ベクトルと観測量
まずは演算子形式と呼ばれる量子論の定式化を与える.
ある物理状態は状態ベクトル state vector と呼ばれる Hilbert 空間 \(\mathcal{H}\) のベクトル \(|ψ⟩\) で表される.
状態ベクトル \(|ψ⟩\) に定数 \(c ∈ ℂ\) をかけた \(c |ψ⟩\) は同じ状態を表し, 可能な限り3状態ベクトル \(|ψ⟩\) は正規化されているとする: \(⟨ψ | ψ⟩ = 1\). または, 正規化されていない状態ベクトル \(|ψ'⟩\) に対し, \(|ψ⟩ = |ψ'⟩ / \sqrt{⟨ψ' | ψ'⟩}\) は正規化された状態ベクトルである. \(\{e^{i θ} |ψ⟩\}_{θ ∈ ℝ}\) を射線 ray といい, 同じ状態を表す状態ベクトルである.
状態ベクトルの内積は, 状態間の遷移確率を与える.
物理状態が \(|ψ⟩\) から \(|φ⟩\) に遷移する確率は \(|⟨φ | ψ⟩|^2\) で与えられ, \(⟨φ | ψ⟩\) を遷移振幅という.
例えば, 演算子 \(\^V:\mathcal{H}→\mathcal{H}\) で表現される効果によって状態 \(|ψ⟩\) が \(|ψ'⟩ = \^V |ψ⟩\) になるとき, \(\^{V}\) の作用によって状態が \(|ψ⟩\) から \(|φ⟩\) に遷移する遷移振幅は \(⟨φ | ψ'⟩ = ⟨φ|\^V|ψ⟩\) である.
量子論における物理量は演算子で表される. 状態がその演算子によって変わらないとき(固有状態)に, 古典論的な物理量は係数(固有値)として現れる.
ある物理量 \(A\) を観測するとき, \(A\) に対応する Hermite 演算子 \(\^A : \mathcal{H} → \mathcal{H}\) の固有値 \(a\) が観測される物理量で, この性質を観測量 observable という. このとき, 物理状態は物理量 \(A = a\) を観測後に固有値 \(a\) に属する固有状態 \(|a⟩\) に遷移する.
状態 \(|ψ⟩\) で観測量 \(\^A\) の固有値 \(a\) が観測される確率は
\[|⟨a | ψ⟩|^2 \quad (= ⟨ψ | a⟩ ⟨a | ψ⟩ = ⟨ψ | a⟩ ⟨a | a⟩ ⟨a | ψ⟩ = ||a⟩ ⟨a | ψ⟩ |^2)\]と書ける. また, 状態 \(|ψ⟩\) に対する物理量 \(A\) の期待値は
\[\begin{aligned} ⟨A⟩ &≡ ∫ \d{a} a |⟨a | ψ⟩|^2 = ∫ \d{a} a ⟨ψ | a⟩ ⟨a | ψ⟩ \\ &= ∫ \d{a} ⟨ψ| \^A |a⟩ ⟨a | ψ⟩ = ⟨ψ| \^A \pqty{∫ \d{a} |a⟩ ⟨a|} |ψ⟩ \\ &= ⟨ψ| \^A |ψ⟩ \end{aligned}\]である. 物理量 \(A\) と対応する演算子 \(\^A\) を区別せず, どちらも \(A\) と書くこともあるが, この記事では一貫して区別することにする.
Hilbert 空間の性質から, 固有状態はそれぞれ直交している:
\[\begin{aligned} \textsf{連続スペクトル} \quad &:& ⟨a|b⟩ &= δ^D(a-b), \\ \textsf{離散スペクトル} \quad &:& ⟨m|n⟩ &= δ_{mn}. \\ \end{aligned}\]また, 固有状態は完全系をなす:
\[\begin{aligned} \textsf{連続スペクトル} \quad &:& ∫\d{a}|a⟩⟨a| &= 1, \\ \textsf{離散スペクトル} \quad &:& ∑_n|n⟩⟨n| &= 1. \\ \end{aligned}\]波動関数
ある観測量 \(A\) について, 固有値 \(a\) が観測される確率振幅を \(ψ(a) ≡ ⟨a | ψ⟩\) と書き, \(A\) 表示した波動関数という.
物理量 \(a\) が観測される確率は \(|⟨a | ψ⟩|^2 = |ψ(a)|^2\) であり, 正規化条件は
\[\begin{gathered} ⟨ψ | ψ⟩ = ⟨ψ| \pqty{∫ \d{a} |a⟩ ⟨a|} |ψ⟩ = ∫ \d{a} ⟨ψ | a⟩ ⟨a | ψ⟩ = ∫ \d{a} ψ^{*}(a) ψ(a) = ∫ \d{a} |ψ(a)|^2, \\ ∴ ∫ \d{a} |ψ(a)|^2 = 1 \end{gathered}\]である. また, 波動関数は状態ベクトルを固有状態によって展開したときの係数である:
\[|ψ⟩ = \pqty{∫ \d{a} |a⟩ ⟨a|} |ψ⟩ = ∫ \d{a} |a⟩ ⟨a | ψ⟩ = ∫ \d{a} ψ(a) |a⟩.\]観測量 \(B\) について, 任意の状態ベクトル \(|ψ⟩\) に対し
\[⟨a| \^B |ψ⟩ = \^B_A ⟨a | ψ⟩ = \^B_A ψ(a)\]を満たす波動関数に対する演算子 \(\^B_A : ℂ → ℂ\) が存在するとき, 観測量 \(A\) に対して \(\^B |ψ⟩ ↔ \^B_A ψ(a)\) の対応がある. 誤解が無いとき, 区別せず \(\^B_A\) も \(\^B\) と書く.
\(B = b\) に属する固有状態 \(|b⟩\) に対して \(ψ_b(a) ≡ ⟨a | b⟩\) とすれば, \(b\) は \(\^B_A\) の固有値, \(ψ_b(a)\) はそれに属する固有波動関数である.
\[\^B_A ψ_b(a) = ⟨a| \^B |b⟩ = b ⟨a | b⟩ = b ψ_b(a).\]また, 物理量 \(B\) の期待値は,
\[\begin{aligned} ⟨B⟩ &= ⟨ψ| \^B |ψ⟩ = ⟨ψ| \pqty{∫ \d{a} |a⟩ ⟨a|} \^B |ψ⟩ \\ &= ∫ \d{a} ⟨ψ | a⟩ ⟨a| \^B |ψ⟩ \\ &= ∫ \d{a} ⟨ψ | a⟩ \^B_A ⟨a | ψ⟩ \\ &= ∫ \d{a} ψ^{*}(a) \^B_A ψ(a) \end{aligned}\]と積分の形で書ける. また, 途中式より, \(\^B\) を \(\^B_A\) を用いて
\[\^B = ∫ \d{a} |a⟩ \^B_A ⟨a|.\]と表示することができる. これを \(\^B\) の \(A\)-表示という.
時間発展と描像
系が時間 \(t\) によって発展していく表現を考える.
状態ベクトルが時間に依存するとき, その時間発展は時間発展演算子と呼ばれる unitary 演算子を用いて変換される:
\[|ψ(t)⟩ = \^U(t, t_0) |ψ(t_0)⟩.\]ただし, \(\^U(t_2, t_1) = \^U^{\dagger}(t_1, t_2) = \^U^{-1}(t_1, t_2)\) を満たす.
時間発展演算子が unitary 演算子である必要性は, 正規化条件から得られる:
\[1 = ⟨ψ(t)|ψ(t)⟩ = ⟨ψ(t_0)| \^U^{\dagger}(t, t_0) \^U(t, t_0) |ψ(t_0)⟩ = ⟨ψ(t_0)⟩|ψ(t_0)⟩.\]時間発展演算子が時間間隔のみに依存し, 時間の始点と終点に依存しないとき, 時刻の基準を \(t = 0\) として \(\^U(t) ≡ \^U(t, 0)\) と略記する. 例えば \(\^U(t_2 - t_1) = \^U(t_2, t_1) = \^U(t_2, 0) \^U^{-1}(t_1, 0)\) と書く. また, 時間発展演算子が時間に依存する場合でも, 誤解が無いとき \(\^U(t) ≡ \^U(t, 0)\) と略記することにする.
状態ベクトルのみが時間発展し, 演算子は時間に依存しないとする方法を Schrödinger 描像 Schrödinger picture という. Schrödinger 描像の演算子, 状態ベクトル, 固有状態を以下のように書く:
\[\begin{aligned} \textsf{演算子} \quad &: \quad \^A, && \^A_\mathrm{S}, \\ \textsf{状態ベクトル} \quad &: \quad |ψ(t)⟩, && |ψ(t)⟩_\mathrm{S}, \\ \textsf{固有状態} \quad &: \quad |a⟩, && |a⟩_\mathrm{S}. \\ \end{aligned}\]これとは対照的に, 演算子に時間発展を押し付ける描像も考えられる.
演算子のみが時間発展し, 状態ベクトルは時間に依存しないとする方法を Heisenberg 描像 Heisenberg picture という. Heisenberg 描像の演算子, 状態ベクトル, 固有状態を以下のように書く:
\[\begin{aligned} \textsf{演算子} \quad &: \quad \^A(t), && \^A_\mathrm{H}(t), \\ \textsf{状態ベクトル} \quad &: \quad |ψ⟩, && |ψ⟩_\mathrm{H}, \\ \textsf{固有状態} \quad &: \quad |a,t⟩, && |a,t⟩_\mathrm{H}. \\ \end{aligned}\]どちらの描像でも初期状態 \(t = 0\) で一致 \(|ψ(0)⟩=|ψ⟩\), \(\^A=\^A(0)\) するとして, 正規化条件, 確率振幅および任意の観測量 \(A\) の期待値が常に等しいとすると, 両者の描像の関係
\[\begin{aligned} \^A(t) &= \^U^{-1}(t) \^A \^U(t), \\ |ψ⟩ &= \^U^{-1}(t) |ψ(t)⟩, \\ |a,t⟩ &= \^U^{-1}(t) |a⟩ \\ \end{aligned}\]が得られる. 実際,
\[\begin{gathered} ⟨ψ | ψ⟩ = ⟨ψ| \^U^{-1}(t) \^U(t) |ψ⟩ = ⟨ψ(t) | ψ(t)⟩, \\ ψ(a,t) = ⟨a,t | ψ⟩ = ⟨a| \^U(t) |ψ⟩ = ⟨a | ψ(t)⟩, \\ ⟨A⟩ = ⟨ψ(t)| \^A |ψ(t)⟩ = ⟨ψ| \^U^{-1}(t) \^A \^U(t) |ψ⟩ = ⟨ψ| \^A(t) |ψ⟩ \\ \end{gathered}\]である.
観測量の固有値は描像に依らない. 実際, 観測量 \(A\) に対し,
\[\begin{aligned} \^A(t) |a,t⟩ &= a |a,t⟩ \\ ⇔ \^U^{-1}(t) \^A \^U(t) \^U^{-1}(t) |a⟩ &= a \^U^{-1}(t) |a⟩ \\ ⇔ \^U^{-1}(t) \^A |a⟩ &= \^U^{-1}(t) a |a⟩ \\ ⇔ \^A |a⟩ &= a |a⟩ \\ \end{aligned}\]である.
また交換子 \([\^A, \^B] ≡ \^A \^B - \^B \^A\) の時間変化は
\[\begin{aligned} {[}\^A(t), \^B(t){]} &= [\^U^{-1}(t) \^A \^U(t), \^U^{-1}(t) \^B \^U(t)] \\ &= \^U^{-1}(t) \^A \^U(t) \^U^{-1}(t) \^B \^U(t) - \^U^{-1}(t) \^B \^U(t) \^U^{-1}(t) \^A \^U(t) \\ &= \^U^{-1}(t) \^A \^B \^U(t) - \^U^{-1}(t) \^B \^A \^U(t) \\ &= \^U^{-1}(t) (\^A \^B - \^B \^A) \^U(t) \\ &= \^U^{-1}(t) [\^A, \^B] \^U(t) \quad (≡ [\^A, \^B]_\mathrm{H}) \end{aligned}\]となる.
正準量子化
ここまでは表記法の約束であり, これだけでは物理的な予測をすることができない. 「量子化」と呼ばれる要請をすることで初めて物理系の記述ができるようになる.
古典論における Poisson 括弧 \(\{⋅,⋅\}_\mathrm{P}\) に対し, 量子論における交換関係 \(\displaystyle \frac1{i{\hbar}}[\^⋅,\^⋅]_\mathrm{H}\) が対応するという要請を正準量子化という:
\[\{A,B\}_\mathrm{P} \quad \xmapsto{\text{要請}} \quad \frac1{i{\hbar}}[\^A_\mathrm{H}(t),\^B_\mathrm{H}(t)].\]一粒子の正準変数 \((q^i, p_i)\) に対して正準量子化すると,
\[\begin{aligned} \{ q^i, p_j \}_\mathrm{P} &= δ_j^i, \\ \xrightarrow{\text{正準量子化}} \quad \frac1{i{\hbar}} [{\^q^i}{}_\mathrm{H}, {\^p_j}{}_\mathrm{H}] &= δ_j^i, \\ \end{aligned}\] \[\begin{aligned} \{ q^i, q^j \}_\mathrm{P} = \{ p_i, p_j \}_\mathrm{P} &= 0, \\ \xrightarrow{\text{正準量子化}} \quad \frac1{i{\hbar}} [{\^q^i}{}_\mathrm{H}, {\^q^j}{}_\mathrm{H}] = \frac1{i{\hbar}} [{\^p_i}{}_\mathrm{H}, {\^p_j}{}_\mathrm{H}] &= 0. \\ \end{aligned}\]したがって, 次の演算子 \((\^q^i, \^p_i)\) の交換関係が得られる.
一粒子の正準変数の演算子 \((\^q^i, \^p_i)\) は正準交換関係をと呼ばれる以下の交換関係を満たす:
\[\begin{gathered} {[}{\^q^i}, {\^p_j}{]} = i{\hbar} δ_i^j, \\ [\^q^i, \^q^j] = [\^p_i, \^p_j] = 0. \end{gathered}\]正準変数を変数として持つ物理量 \(A = A(q^i, p_i)\) に対応する演算子は, 正準変数の演算子を形式的に代入したものである:
\[A = A(q^i, p_i) \quad \xrightarrow{\text{正準量子化}} \quad \^A |ψ(t)⟩ = A(\^q^i, \^p_i) |ψ(t)⟩.\]TODO: ただし, \(\^A\) が Hermite になるよう量子化前に正準変数の順序を調整する(Weyl 順序).
また, \(\^A\) を \(B\) 表示した波動関数に対する演算子 \(\^A_B\) は, 同様に正準変数の演算子を代入したものとなる.
\[A = A(q^i, p_i) \quad \xrightarrow{\text{正準量子化}} \quad \^A_B ψ(b,t) = A({\^q^i}{}_B, {\^p_i}{}_B) ψ(b,t).\]特に, 正準変数の演算子が \(b\) とそれの微分の関数 \(({\^q^i}{}_B, {\^p_i}{}_B) = ({q^i}{}_B(b, \pdv{}{b}), {p_i}{}_B(b, \pdv{}{b}))\) であるとき, これを Schrödinger 表現という.
時間発展演算子と運動方程式
時間発展演算子の具体的な表式と, 系の時間発展を記述する運動方程式を求めよう.
時間に依存する物理量 \(A(q^i,p_i,t)\) の時間発展を正準量子化して,
\[\begin{aligned} \dv{A}{t} &= \{A, H\}_\mathrm{P} + \pdv{A}{t} \\ \xrightarrow{\text{正準量子化}} \quad \dv{\^A_\mathrm{H}}{t} &= \frac1{i{\hbar}}[\^A_\mathrm{H},\^H] + \pqty{\dv{\^A}{t}}_\mathrm{H}. \\ \end{aligned}\]これは観測量 \(A\) の時間発展を表した方程式である.
時間に依存する物理量 \(A(q^i,p_i,t)\) に対応する演算子 \(\^A(q^i,p_i,t)\) の時間発展は以下であり, これを Heisenberg の運動方程式 Heisenberg equation という:
\[i{\hbar} \dv{\^A_\mathrm{H}}{t} = [\^A_\mathrm{H},\^H] + i{\hbar} \pqty{\dv{\^A}{t}}_\mathrm{H}.\]特に, 時間に依存しない物理量 \(A(q^i,p_i)\) の Heisenberg の運動方程式は
\[i{\hbar} \dv{\^A_\mathrm{H}}{t} = [\^A_\mathrm{H},\^H]\]となる. この運動方程式を用いて, 時間発展演算子 \(\^U(t)\) の具体的な表式を求めよう. 両辺それぞれ計算して,
\[\begin{aligned} i{\hbar} \dv{\^A_\mathrm{H}}{t} &= i{\hbar} \dv{}{t} \bqty{\^U^{-1}(t) \^A \^U(t)} \\ &= i{\hbar} \dv{\^U^{-1}(t)}{t} \^A \^U(t) + i{\hbar} \^U^{-1}(t) \^A \dv{\^U(t)}{t}, \\ [\^A_\mathrm{H},\^H_\mathrm{H}] &= \^U^{-1}(t) \^A \^H \^U(t) + \^U^{-1}(t) \^H \^A \^U(t) \end{aligned}\]となるから, 辺々比較して,
\[i{\hbar} \dv{\^U(t)}{t} = \^H \^U(t)\]が得られる. これは時間発展演算子 \(\^U(t)\) に関する微分方程式であり, これを解くことで \(\^U(t)\) の表式が得られる.
Hamiltonian が時間に陽に依存しないとき, 時間発展演算子は時間間隔のみに依存して,
\[\^U(t-t_0) = e^{- \frac{i}{{\hbar}} {(t-t_0) \^H}}\]と書ける.
Hamiltonian が時間に陽に依存するとき, 時間発展演算子は時間の始点と終点に依存し,
\[\^U(t, t_0) = T \exp \bqty{- \frac{i}{{\hbar}} ∫_{t_0}^t \d{t'} \^H(t')}.\]ただし, \(T\) は時間順序積 time ordered product と呼ばれ, 演算子の積を時間の順序関係に応じて並び替える: Heaviside の階段関数 \(θ(t)\) を用いて,
\[\begin{aligned} T \^A(t_1) \^B(t_2) &≡ θ(t_1 - t_2) \^A(t_1) \^B(t_2) + θ(t_2 - t_1) \^B(t_2) \^A(t_1) \\ &= \begin{cases} \^A(t_1) \^B(t_2), & (t_1 > t_2) \\ \^B(t_2) \^A(t_1). & (t_2 > t_1) \\ \end{cases} \end{aligned}\]と定義される. つまり, 右に先に作用する演算子ほど「若い」ように並び換える.
Hamiltonian が時間に陽に依存しないときの時間発展演算子の標識は明らかである. Hamiltonian が時間に陽に依存するときは, \(\^U(t)\) に関する微分方程式を両辺積分して,
\[\begin{aligned} &\ \^U(t,t_0) \\ =&\ 1 + \frac1{i{\hbar}} ∫_{t_0}^t \d{t_1} \^H(t_1) \^U(t_1, t_0) \\ &\ \quad (\text{$\^U(t_1,t_0)$ を代入}) \\ =&\ 1 + \frac1{i{\hbar}} ∫_{t_0}^t \d{t_1} \^H(t_1) + \frac1{i{\hbar}} ∫_{t_0}^t \d{t_1} \frac1{i{\hbar}} ∫_{t_0}^{t_1} \d{t_2} \^H(t_1) \^H(t_2) \^U(t_2, t_0) \\ &\ \quad (\text{繰り返し $\^U(t_j,t_0)$ を代入}) \\ =&\ 1 + \frac1{i{\hbar}} ∫_|ψ(t)⟩_{\mathrm{S}} {t_0}^t \d{t_1} \^H(t_1) + \frac1{i{\hbar}} ∫_{t_0}^t \d{t_1} \frac1{i{\hbar}} ∫_{t_0}^{t_1} \d{t_2} \^H(t_1) \^H(t_2) \\ &\ \qquad \qquad + \frac1{i{\hbar}} ∫_{t_0}^t \d{t_1} \frac1{i{\hbar}} ∫_{t_0}^{t_1} \d{t_2} \frac1{i{\hbar}} ∫_{t_0}^{t_2} \d{t_3} \^H(t_1) \^H(t_2) \^H(t_3) + ⋯ \\ =&\ ∑_{n=0}^∞ \frac1{(i{\hbar})^n} ∫_{t_0}^t \d{t_1} ∫_{t_0}^{t_1} \d{t_2} ⋯ ∫_{t_0}^{t_{n-1}} \d{t_n} \^H(t_1) \^H(t_2) ⋯ \^H(t_n) \\ &\ \quad (\text{$t>t_1>…>t_{n-1}$ であることに注意して, 時間順序積を作用させる}) \\ =&\ T ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} \frac1{(i{\hbar})^n} ∫_{t_0}^t \d{t_1} ∫_{t_0}^t \d{t_2} ⋯ ∫_{t_0}^t \d{t_n} \^H(t_1) \^H(t_2) ⋯ \^H(t_n) \\ =&\ T ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} \bqty{\frac1{i{\hbar}} ∫_{t_0}^t \d{t} \^H(t)}^n \\ =&\ T \exp \bqty{\frac1{i{\hbar}} ∫_{t_0}^t \d{t} \^H(t)} \end{aligned}\]と得られる.
\(\^U(t)\) に関する微分方程式 \(i{\hbar} \d{\^U(t)} / \d{t} = \^H \^U(t)\) を \(|ψ⟩\) に作用させると,
\[\begin{aligned} i{\hbar} \dv{\^U(t)}{t} |ψ⟩ &= \^H \^U(t) |ψ⟩. \\ ∴ \quad i{\hbar} \dv{}{t} |ψ(t)⟩ &= \^H |ψ(t)⟩. \end{aligned}\]これは状態 \(|ψ(t)⟩\) の時間発展を表した方程式である.
状態 \(|ψ(t)⟩\) 時間発展は
\[i{\hbar} \dv{}{t} |ψ(t)⟩ = \^H |ψ(t)⟩\]であり, これを Schrödinger の運動方程式 Schrödinger equation という:
Schrödinger の運動方程式に左から \(⟨q|\) を内積させると,
\[⟨q| \^H |ψ(t)⟩ = i{\hbar} \pdv{}{t} ψ(q, t).\]これは Hamiltonian の Schrödinger 表現 \(\^H ψ(q, t) = ⟨q| \^H |ψ(t)⟩\) である:
位置 \(q\) 表示の波動関数 \(ψ(q, t)\) に対して, Hamiltonian \(\^H\) の Schrödinger 表現は
\[\^H ψ(q, t) = i{\hbar} \pdv{}{t} ψ(q, t)\]である.
位置演算子と運動量演算子
正準変数の演算子 \((\^q^i, \^p_i)\) について Schrödinger 表現を求める.
位置 \(q\) 表示の波動関数 \(ψ(q, t)\) に対して, 位置演算子 \(\^q\) の Schrödinger 表現は,
\[\^q^i ψ(q, t) = q^i ψ(q, t)\]である.
実際, \(⟨q| \^q^i = q^i ⟨q |\) に注意すれば
\[\^q^i ψ(q,t) = ⟨q| \^q^i |ψ(t)⟩ = q^i ⟨q | ψ(t)⟩ = q^i ψ(q,t)\]となる.
これに対応する \(\^p_i\) の表現を求める. ある定数 \(a^i\) に対し,
\[e^{\frac{i}{{\hbar}} a^j \^p_j} \^q^i e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^j \^p_j} = \^q^i + a^i\]である. 実際, 交換関係に注意すれば
\[\begin{aligned} &\ \dv{(e^{\frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} \^q^i e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k})}{a^j} \\ =&\ \dv{e^{\frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k}}{a^j} \^q^i e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} + e^{\frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} \^q^i \dv{e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k}}{a^j} \\ =&\ \frac{i}{{\hbar}} \^p_j e^{\frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} \^q^i e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} - \frac{i}{{\hbar}} e^{\frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} \^q^i \^p_j e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} \\ =&\ \frac{i}{{\hbar}} \^p_j e^{\frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} \^q^i e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} - \frac{i}{{\hbar}} e^{\frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} (i {\hbar} δ_i^j + \^p_j \^q^i) e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} \\ &\ \quad (∵ [\^q^i, \^p_j] = \^q^i \^p_j - \^p_j \^q^i = i {\hbar} δ_i^j) \\ =&\ \frac{i}{{\hbar}} \^p_j e^{\frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} \^q^i e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} + δ_i^j - \frac{i}{{\hbar}} e^{\frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} \^p_j \^q^i e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} \\ &\ \quad (∵ [e^{\frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k}, \^p_j] = e^{\frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} \^p_j - \^p_j e^{\frac{i}{{\hbar}} a^k \^p_k} = 0) \\ =&\ δ_i^j \end{aligned}\]となる. したがって,
\[\begin{gathered} \^q^i e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^j \^p_j} |q⟩ = e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^j \^p_j} (\^q^i + a^i) |q⟩ = (q^i + a^i) e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^j \^p_j} |q⟩, \\ ∴ e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^i \^p_i} |q⟩ = |q+a⟩ \end{gathered}\]である. 一般の状態ベクトル \(|ψ(t)⟩\) に \(e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^i \^p_i}\) を作用させると,
\[\begin{aligned} e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^i \^p_i} |ψ(t)⟩ &= e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^i \^p_i} \pqty{∫ \d{{}^D q'} |q'⟩ ⟨q'|} |ψ(t)⟩ = ∫ \d{{}^D q'} e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^i \^p_i} |q'⟩ ⟨q' | ψ(t)⟩ \\ &= ∫ \d{{}^D q'} ψ(q',t) |q'+a⟩ \\ &= ∫ \d{{}^D q'} ψ(q'-a,t) |q'⟩ \end{aligned}\]となるから, 左から \(⟨q|\) をかけると,
\[\begin{aligned} ⟨q| e^{- \frac{i}{{\hbar}} a^i \^p_i} |ψ(t)⟩ &= ⟨q| ∫ \d{{}^D q'} ψ(q'-a,t) |q'⟩ = ∫ \d{{}^D q'} ψ(q'-a,t) ⟨q | q'⟩ \\ &= ∫ \d{{}^D q'} ψ(q'-a,t) δ^D(q - q') \\ &= ψ(q-a,t) \end{aligned}\]となる. ただし固有状態の直交性 \(⟨q | q'⟩ = δ^D(q - q')\) を用いた. \(a\) について1次まで羃展開すれば
\[\begin{gathered} ⟨q| \pqty{1 - \frac{i}{{\hbar}} a^i \^p_i} |ψ(t)⟩ = \pqty{1 - a^i \pdv{}{q^i}} ψ(q,t), \quad ∴ - \frac{i}{{\hbar}} ⟨q| \^p_i |ψ(t)⟩ = - \pdv{}{q^i} ψ(q,t), \\ ∴ \^p_i ψ(q,t) = ⟨q| \^p_i |ψ(t)⟩ = - i{\hbar} \pdv{}{q^i} ψ(q,t) \end{gathered}\]が得られる.
位置 \(q\) 表示の波動関数 \(ψ(q, t)\) に対して, 運動量演算子 \(\^p\) の Schrödinger 表現は,
\[\^p_i ψ(q, t) = - i{\hbar} \pdv{}{q^i} ψ(q, t)\]である.
運動量 \(p\) の固有波動関数 \(ψ_p(q,t)\) に対し,
\[- i {\hbar} \pdv{}{q^i} ψ_p(q,t) = \^p_i ψ_p(q,t) = p_i ψ_p(q,t), \quad ∴ ψ_p(q,t) = ⟨q | p⟩ = \frac1{\sqrt{(2π {\hbar})^D}} e^{\frac{i}{{\hbar}} q^i p_i}\]である. ただし, \(D\) は座標 \(q\) の次元とし, 固有状態の直交性を満たすよう定数を決めた:
\[\begin{aligned} ⟨p',t | p,t⟩ &= ⟨p',t| \pqty{∫ \d{{}^Dq} |q,t⟩ ⟨q,t|} |p,t⟩ = ∫ \d{{}^D q} ⟨p',t | q,t⟩ ⟨q,t | p,t⟩ \\ &= ∫ \d{{}^D q} ψ_{p'}^{*}(q,t) ψ_p(q,t) = ∫ \frac{\d{{}^D q}}{(2π {\hbar})^D} e^{\frac{i}{{\hbar}} q^i (p_i - {p'}_i)} \\ &= δ^D(p_i - {p'}_i). \end{aligned}\]Schrödinger 方程式
Schrödinger の運動方程式に \(\^H = H(\^q^i, \^p_i)\) やその表現を代入したものもまた Schrödinger 方程式という: 位置 \(q\) 表示では,
\[H\pqty{q^i, - i{\hbar} \pdv{}{q^i}} ψ(q, t) = i{\hbar} \pdv{}{t} ψ(q, t)\]である.
例: 一次元一粒子系
一次元一粒子系の Hamiltonian は
\[H(q,p) = \frac{p^2}{2m} + V(q)\]であるから, 正準量子化して, Hamiltonian の演算子は
\[H(\^q, \^p) = \frac{\^p^2}{2m} + V(\^q) = - \frac{{\hbar}^2}{2m} \pdv{{}^2}{q^2} + V(q)\]である. したがって Schrödinger 方程式は,
\[\bqty{- \frac{{\hbar}^2}{2m} \pdv{{}^2}{q^2} + V(q)} ψ(q, t) = i{\hbar} \pdv{}{t} ψ(q, t)\]と求まる.
例: 三次元一粒子系
三次元一粒子系の Hamiltonian は
\[H(\bm{x},\bm{p}) = \frac{\bm{p}^2}{2m} + V(\bm{x})\]であるから, 正準量子化して, Hamiltonian の演算子は
\[H(\^{\bm{x}}, \^{\bm{p}}) = \frac{\^{\bm{p}}^2}{2m} + V(\^{\bm{x}}) = - \frac{{\hbar}^2}{2m} \laplacian + V(\bm{x})\]である. したがって Schrödinger 方程式は,
\[\bqty{- \frac{{\hbar}^2}{2m} \laplacian + V(\bm{x})} ψ(\bm{x}, t) = i{\hbar} \pdv{}{t} ψ(\bm{x}, t)\]と求まる.
生成・消滅演算子
演算子 \(\^a\) とその Hermite 共役 \(\^a^{\dagger}\) が交換関係
\[\begin{gathered} {}[\^a, \^a^{\dagger}] = 1, \\ [\^a, \^a] = [\^a^{\dagger}, \^a^{\dagger}] = 0 \end{gathered}\]を満たすとき, \(\^a\) を消滅演算子 annihilation operator, \(\^a^{\dagger}\) を生成演算子 creation operator という.
また, Hermite 演算子 \(\^N ≡ \^a^{\dagger} \^a\) を数演算子 the number operation といい, \(\^N\) の固有値 \(n\) に属する固有状態を \(|n⟩\) とする.
\[\^N|n⟩ = n|n⟩.\]\(\^a^{\dagger}|n⟩\) は固有値 \(n+1\) に属する固有状態である:
\[\begin{aligned} \^N\^a^{\dagger}|n⟩ &= \^a^{\dagger}\^a\^a^{\dagger}|n⟩ \\ &= \^a^{\dagger}(\^a^{\dagger}\^a + 1)|n⟩ \\ &= \^a^{\dagger}(\^N + 1)|n⟩ \\ &= (n + 1)\^a^{\dagger}|n⟩. \end{aligned}\]したがって \(|n+1⟩\) は \(\^a^{\dagger}|n⟩\) を正規化して,
\[\begin{gathered} |n+1⟩ = \frac{\^a^{\dagger}|n⟩}{\sqrt{⟨n|\^a\^a^{\dagger}|n⟩}} = \frac{\^a^{\dagger}|n⟩}{\sqrt{⟨n|(\^N + 1)|n⟩}} = \frac{\^a^{\dagger}|n⟩}{\sqrt{n+1}}. \\ ∴ \^a^{\dagger}|n⟩ = \sqrt{n+1}|n+1⟩ \end{gathered}\]である. また, 同様に \(\^a|n⟩\) は固有値 \(n-1\) に属する固有状態である:
\[\begin{aligned} \^N\^a|n⟩ &= \^a^{\dagger}\^a\^a|n⟩ \\ &= (\^a\^a^{\dagger} - 1)\^a|n⟩ \\ &= \^a(\^a^{\dagger}\^a - 1)|n⟩ \\ &= \^a(\^N - 1)|n⟩ \\ &= (n - 1)\^a|n⟩. \end{aligned}\]したがって \(|n-1⟩\) は \(\^a|n⟩\) を正規化して,
\[\begin{gathered} |n-1⟩ = \frac{\^a|n⟩}{\sqrt{⟨n|\^a^{\dagger}\^a|n⟩}} = \frac{\^a|n⟩}{\sqrt{⟨n|\^N|n⟩}} = \frac{\^a|n⟩}{\sqrt{n}}. \\ ∴ \^a|n⟩ = \sqrt{n}|n-1⟩ \end{gathered}\]である. 特に \(n=0\) のときの状態 \(|0⟩\) を真空状態といい, \(\^a|0⟩ = 0\) を満たす:
\[⟨0|\^a^{\dagger}\^a|0⟩ = ⟨0|\^N|0⟩ = 0.\]\(n<0\) は許されない. 実際, 内積の半正定値性から
\[n = ⟨n|\^N|n⟩ = ⟨n|\^a^{\dagger}\^a|n⟩ = ⟨n'|n'⟩ ≥ 0\]である. ただし \(|n'⟩ ≡ \^a|n⟩\) とした. また, \(n\) が正の非整数とすると, 繰り返し \(\^a\) を左右することで \(n\) を負にすることができてしまうから, \(n\) は非整数ではない. したがって, \(n\) は 0 以上の整数である: \(n = 0,1,2,…\).
TODO: 調和振動子による例
不確定性原理
物理量 \(A\) の分散 \((ΔA)^2 ≡ ⟨(A-⟨A⟩)^2⟩\) に対し, 以下の関係が成立する:
\[(ΔA)^2 (ΔB)^2 \geq \frac14 \abs{⟨[A,B]⟩}^2.\]実際,
\[\begin{aligned} (ΔA)^2 (ΔB)^2 &= ⟨(A-⟨A⟩)^2⟩ ⟨(B-⟨B⟩)^2⟩ \\ &≥ \abs{⟨(A-⟨A⟩)(B-⟨B⟩)⟩}^2 \\ &≥ \abs{\Im{⟨(A-⟨A⟩)(B-⟨B⟩)⟩}}^2 \\ &≥ \frac14\abs{⟨(A-⟨A⟩)(B-⟨B⟩)⟩ - ⟨(B-⟨B⟩)(A-⟨A⟩)⟩}^2 \\ &= \frac14\abs{⟨[A-⟨A⟩,B-⟨B⟩]⟩}^2 \\ &= \frac14\abs{⟨[A,B]⟩}^2. \\ \end{aligned}\]TODO: 詳しい説明と位置・運動量の不確定関係
相互作用描像
Hamiltonian \(\^H\) を, 相互作用を含まない自由項 \(H_0\) と相互作用項 \(H_\mathrm{I}\) に分ける:
\[H(t) = H_0 + H_\mathrm{I}(t).\]このとき, 以下を満たす演算子 \(\^A_\mathrm{T}(t)\) と状態ベクトル \(|ψ(t)⟩\) は相互作用描像 Interaction picture と呼ばれる:
\[\begin{gathered} i{\hbar} \dv{\^A_\mathrm{T}}{t} = [\^A_\mathrm{T},\^H_0], \\ i{\hbar} \dv{}{t} |ψ(t)⟩_\mathrm{T} = \^H_\mathrm{I} |ψ(t)⟩_\mathrm{T}. \end{gathered}\]第 1 式より, Schrödinger 描像と相互作用描像の演算子の対応
\[\^A_\mathrm{T}(t) = e^{\frac{i}{{\hbar}}\^H_0(t-t_0)} \^A e^{-\frac{i}{{\hbar}}\^H_0(t-t_0)}\]が得られる. また, 期待値がどの描像でも等しいという条件
\[{}_\mathrm{T}⟨ψ(t)| \^A_\mathrm{T}(t) |ψ(t)⟩_\mathrm{T} = {}_\mathrm{T}⟨ψ(t)| e^{i\^H_0(t-t_0)} \^A e^{-i\^H_0(t-t_0)} |ψ(t)⟩_\mathrm{T} = ⟨ψ(t)| \^A |ψ(t)⟩\]より, Schrödinger 描像と相互作用描像の状態ベクトルの対応
\[|ψ(t)⟩ = e^{-i\^H_0(t-t_0)} |ψ(t)⟩_\mathrm{T}.\]が得られる. 更に, 時間発展演算子と同様の議論から,
\[|ψ(t)⟩_\mathrm{T} = T \exp \bqty{- \frac{i}{{\hbar}} ∫_{t_0}^t \d{t'} \^H_\mathrm{I}(t')} |ψ(t_0)⟩_\mathrm{T}\]であることがわかる.
経路積分表示
時刻 \(t_i\) に座標 \(q_i\) で粒子が観測された状態に対し, 時刻 \(t_f\) に座標 \(q_f\) で粒子が観測される確率振幅は
\[⟨q_f,t_f|q_i,t_i⟩ \quad \pqty{= ⟨q_f|\^U(t_f,t_i)|q_i⟩ = ⟨q_f|T \exp \bqty{\frac1{i{\hbar}} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t} \^H(t)}|q_i⟩}\]で与えられる. 時間 \(t_i\), \(t_f\) 間を \(N\) 分割
\[Δt = \frac{t_f-t_i}{N}, \quad t_j = t_i + nΔt, \quad q_j = q(t_j). \quad t_0=t_i, \quad \ t_N=t_f.\]して, 完全系 \(∫\d{q_j}|q_j⟩⟨q_j| = 1\) を順に挟めば,
\[\begin{aligned} ⟨q_f,t_f|q_i,t_i⟩ &= ∫\d{{}^Dq_1} ⋯ ∫\d{{}^Dq_{N-1}} ⟨q_f,t_f|q_{N-1},t_{N-1}⟩⟨q_{N-1},t_{N-1}|⋯|q_1,t_1⟩⟨q_1,t_1|q_i,t_i⟩ \\ &= ∫\d{{}^Dq_1} ⋯ ∫\d{{}^Dq_{N-1}} \pqty{∏_{j=0}^{N-1} ⟨q_{j+1},t_{j+1}|q_j,t_j⟩} \\ \end{aligned}\]となる. ここで, \(Δt\) が十分に小さいとすると,
\[⟨q_{j+1},t_{j+1}|q_j,t_j⟩ = ⟨q_{j+1}|\exp \bqty{-\frac{i}{{\hbar}} Δt \^H(t_j)}|q_j⟩\]であり, また \(\^H(t_j)=H(\^q,\^p,t_j)\) は Weyl 順序であって,
\[⟨q_{j+1}|\^H(t_j)|q_j⟩ = ∫\frac{\d{{}^Dp_j}}{(2π\hbar)^D} e^{i(q_{j+1}-q_j)p_j/\hbar} H\pqty{\frac{q_{j+1}+q_j}{2}, p_j,t_j}\]を満たすから, これを用いると,
\[\begin{aligned} ⟨q_{j+1},t_{j+1}|q_j,t_j⟩ &= ∫\frac{\d{{}^Dp_j}}{(2π\hbar)^D} e^{i(q_{j+1}-q_j)p_j/\hbar} \exp \bqty{-\frac{i}{{\hbar}} Δt H\pqty{\frac{q_{j+1}+q_j}{2}, p_j,t_j}} \\ &= ∫\frac{\d{{}^Dp_j}}{(2π\hbar)^D} \exp \frac{i}{{\hbar}} Δt \bqty{\frac{q_{j+1}-q_j}{Δt}p_j - H\pqty{\frac{q_{j+1}+q_j}{2}, p_j,t_j}} \\ \end{aligned}\]と求まる. したがって,
\[\begin{aligned} ⟨q_f,t_f|q_i,t_i⟩ &= ∫\d{{}^Dq_1} ⋯ ∫\d{{}^Dq_{N-1}} \qty{∏_{j=0}^{N-1} ∫\frac{\d{{}^Dp_j}}{(2π\hbar)^D} \exp \frac{i}{{\hbar}} Δt \bqty{\frac{q_{j+1}-q_j}{Δt}p_j - H\pqty{\frac{q_{j+1}+q_j}{2}, p_j,t_j}}} \\ &= ∫\frac{\d{{}^Dp_0}}{(2π\hbar)^D} ∏_{j=1}^{N-1} ∫\frac{\d{{}^Dq_j}\d{{}^Dp_j}}{(2π\hbar)^D} \exp \frac{i}{{\hbar}} ∑_{j=0}^{N-1} Δt \bqty{\frac{q_{j+1}-q_j}{Δt}p_j - H\pqty{\frac{q_{j+1}+q_j}{2}, p_j,t_j}} \\ \end{aligned}\]となる. あるいは \(N→∞\) の極限で, 汎関数積分を用いれば,
\[\begin{aligned} ⟨q_f,t_f|q_i,t_i⟩ &= ∫_{q_i,p=-∞}^{q_f,p=+∞} \mathcal{D}^Dq \ \mathcal{D}^Dp \ \exp \frac{i}{\hbar} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t} \bqty{\.q^i p_i - H(q^i,p_i,t)} \\ &≡ ∫_{q_i,p=-∞}^{q_f,p=+∞} \mathcal{D}^Dq \ \mathcal{D}^Dp \ e^{\frac{i}{\hbar} S[q^i,p_i]} \end{aligned}\]と書ける.
TODO: 位相空間の経路積分量子化
経路積分量子化
時刻 \(t_i\) から \(t_f\) の運動で粒子が \(q_i ≡ q(t_i)\) から \(q_f ≡ q (t_f)\) へ移動するときの作用は
\[S[q(t)] = ∫_{t_i}^{t_f} \d{t} L(q, \.q, t)\]で与えられる. このとき, 汎関数積分を用いた次の量子化が定義される:
状態 \(|q_i,t_i⟩\) から状態 \(|q_f,t_f⟩\) への確率振幅は以下であるという要請を経路積分量子化 Path integral formulation という:
\[\begin{gathered} K(q_f,t_f;q_i,t_i) ≡ ⟨q_f,t_f|q_i,t_i⟩ \overset{\text{要請}}{=} ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ e^{\frac{i}{{\hbar}} S[q(t)]}. \end{gathered}\]また, この \(K(q_f,t_f;q_i,t_i)\) を伝播関数という. これは Green 関数とも呼ばれ, 以下を満たす:
\[\bqty{H\pqty{q^i,-i{\hbar}∂_i,t}-i{\hbar}\pdv{}{t}} K(q,t;q_0,t_0) = -i{\hbar}δ^D(q-q_0)δ(t-t_0).\]位置表示の波動関数に対して
\[ψ(q,t) = ∫ \d{{}^D q_0} K(q,t;q_0,t_0) ψ(q_0,t_0).\]が成立する. 実際, 時刻 \(t_0\) における完全性を使えば,
\[\begin{aligned} ψ(q,t) &= ⟨q,t | ψ⟩ \\ &= ⟨q,t| \pqty{∫ \d{{}^D q_0} |q_0,t_0⟩ ⟨q_0,t_0|} |ψ⟩ \\ &= ∫ \d{{}^D q_0} ⟨q,t|q_0,t_0⟩ ⟨q_0,t_0|ψ⟩ \\ &= ∫ \d{{}^D q_0} K(q,t;q_0,t_0) ψ(q_0,t_0) \end{aligned}\]となる. また, これを用いると波動関数が Schrödinger 方程式を満たすことがわかる. つまり,
\[\begin{aligned} &\ \bqty{H\pqty{q^i,-i{\hbar}\pdv{}{q^i},t}-i{\hbar}\pdv{}{t}} ψ(q,t) \\ =&\ \bqty{H\pqty{q^i,-i{\hbar}\pdv{}{q^i},t}-i{\hbar}\pdv{}{t}} ∫ \d{{}^D q_0} ∫_{q_0}^q \mathcal{D}^Dq'\ e^{\frac{i}{{\hbar}} S[q'(t)]} ψ(q_0,t_0) \\ & \pqty{q'(t)≡q(t)+δq(t),\ \text{$q(t)$ : 古典軌道},\ δS[q]≡S[q+δq]-S[q]} \\ =&\ \bqty{H\pqty{q^i,-i{\hbar}\pdv{}{q^i},t}-i{\hbar}\pdv{}{t}} ∫ \d{{}^D q_0} e^{\frac{i}{{\hbar}} S[q(t)]} ∫_{q_0}^q \mathcal{D}^Dδq\ e^{\frac{i}{{\hbar}} δS[q(t)]} ψ(q_0,t_0) \\ =&\ ∫ \d{{}^D q_0} \bqty{H\pqty{q^i,-i{\hbar}\pdv{}{q^i},t}-i{\hbar}\pdv{}{t}} e^{\frac{i}{{\hbar}} S[q(t)]} ∫_{q_0}^q \mathcal{D}^Dδq\ e^{\frac{i}{{\hbar}} δS[q(t)]} ψ(q_0,t_0) \\ =&\ ∫ \d{{}^D q_0} \bqty{H\pqty{q^i,\pdv{S}{q^i},t}+\pdv{S}{t}} e^{\frac{i}{{\hbar}} S[q(t)]} ∫_{q_0}^q \mathcal{D}^Dδq\ e^{\frac{i}{{\hbar}} δS[q(t)]} ψ(q_0,t_0) \\ =&\ 0 \quad \pqty{∵ \text{古典軌道に対する Hamilton–Jacobi 方程式}} \end{aligned}\]であるから,
\[H\pqty{q^i,-i{\hbar}\pdv{}{q^i},t} ψ(q,t) = i{\hbar}\pdv{}{t} ψ(q,t)\]である. 正準量子化の仮定を使っていないことに注意. 以上のことから, 伝播関数が Schrödinger 方程式の Green 関数になることがわかる. TODO: この計算は正確か?
また, 経路積分量子化は古典極限を取ることで最小作用の原理を与える. \(q'=q+δq\) として鞍点法を用いると,
\[\begin{aligned} K(q_f,t_f;q_i,t_i) &= ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq' \ e^{\frac{i}{{\hbar}} S[q'(t)]} \\ &\quad \pqty{\text{$q'=q+δq$ のとき $\displaystyle S[q'] = S[q] + ∫_{t_i}^{t_f} \d{t'} \fdv{S[q(t)]}{q(t')} δq(t')$}} \\ &= e^{\frac{i}{{\hbar}} S[q(t)]} ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dδq \ \exp\pqty{\frac{i}{{\hbar}} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t'} \fdv{S[q(t)]}{q(t')} δq(t')} \\ \end{aligned}\]であるから, \({\hbar}→0\) の極限で \(|K(q_f,t_f;q_i,t_i)|^2=1\) となる条件は
\[\fdv{S[q^i(t)]}{q^j(t')} = 0 \quad (t_1<t'<t_2)\]となる. これは最小作用の原理に他ならない.
例: 一次元自由一粒子系
一次元自由一粒子系の Lagrangian は
\[L(q,\.q,t) = \frac{m}{2} \.q^2.\]このときの伝播関数を求めると,
\[\begin{aligned} K(q_f,t_f;q_i,t_i) &= ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}q \ \exp\bqty{\frac{i}{{\hbar}} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t} \frac{m}{2} \.q^2} \\ &= \sqrt{\frac{m}{2πi{\hbar}(t_f-t_i)}} \exp\bqty{\frac{im(q_f-q_i)^2}{2{\hbar}(t_f-t_i)}}. \\ \end{aligned}\]したがって, 一般の位置表示の波動関数 \(ψ(q,t)\) は,
\[ψ(q,t) = ∫\d{q_0} \sqrt{\frac{m}{2πi{\hbar}(t-t_0)}} \exp\bqty{\frac{i}{{\hbar}} \frac{m}{2} \frac{(q-q_0)^2}{t-t_0}} × ψ(q_0,t_0).\]TODO: 調和振動子の例
\(n\) 点 Green 関数と生成汎関数
\(t_i<t_m<t_f\) (\(m=1,…,n\)) に対し
\[⟨q_f,t_f| T\^q(t_n)⋯\^q(t_1) |q_i,t_i⟩ = ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ q(t_n)⋯q(t_1) e^{\frac{i}{{\hbar}} S[q(t)]}\]を \(n\) 点 Green 関数という. ただし \(T\) は時間順序積.
実際, \(t_i<t_{σ_1}<⋯<t_{σ_n}<t_f\) を満たす適当な置換 \(σ = \pmqty{1&⋯&n\\σ_1&⋯&σ_n}\) を用いると,
\[\begin{aligned} &\ ⟨q_f,t_f| T\^q(t_n)⋯\^q(t_1) |q_i,t_i⟩ \\ =&\ ⟨q_f,t_f| \^q(t_{σ_n})⋯\^q(t_{σ_1}) |q_i,t_i⟩ \\ =&\ ⟨q_f,t_f| \^q(t_{σ_n}) \pqty{ ∫\d{{}^D q_{σ_n}} |q_{σ_n},t_{σ_n}⟩ ⟨q_{σ_n},t_{σ_n}|} ⋯ \^q(t_{σ_1}) \pqty{∫\d{{}^D q_{σ_1}}|q_{σ_1},t_{σ_1}⟩ ⟨q_{σ_1},t_{σ_1}|} |q_i,t_i⟩ \\ =&\ ∫\d{{}^D q_{σ_n}}⋯∫\d{{}^D q_{σ_1}} ⟨q_f,t_f| \^q(t_{σ_n}) |q_{σ_n},t_{σ_n}⟩ ⟨q_{σ_n},t_{σ_n}| ⋯\^q(t_{σ_1}) |q_{σ_1},t_{σ_1}⟩ ⟨q_{σ_1},t_{σ_1}|q_i,t_i⟩ \\ =&\ ∫\d{{}^D q_{σ_n}}⋯∫\d{{}^D q_{σ_1}} q_{σ_n}⋯q_{σ_1} ⟨q_f,t_f|q_{σ_n},t_{σ_n}⟩ ⟨q_{σ_n},t_{σ_n}| ⋯ |q_{σ_1},t_{σ_1}⟩ ⟨q_{σ_1},t_{σ_1}|q_i,t_i⟩ \\ =&\ ∫\d{{}^D q_{σ_n}}⋯∫\d{{}^D q_{σ_1}} q_{σ_n}⋯q_{σ_1} \pqty{∫_{q_{σ_n}}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ e^{\frac{i}{{\hbar}} S_{t∈[t_{σ_n},t_f]}[q]}} ⋯ \pqty{∫_{q_i}^{q_{σ_1}} \mathcal{D}^Dq \ e^{\frac{i}{{\hbar}} S_{t∈[t_i,t_{σ_1}]}[q]}} \\ =&\ ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ q(t_{σ_n})⋯q(t_{σ_1}) e^{\frac{i}{{\hbar}} S[q(t)]} \\ =&\ ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ q(t_n)⋯q(t_1) e^{\frac{i}{{\hbar}} S[q(t)]} \\ \end{aligned}\]となる. 最初と最後は \(σ\) を含まないから, これは置換 \(σ\) に依らず成立する.
\(n\) 点 Green 関数は次に定義される生成汎関数から機能的に得ることができる.
で定義される汎関数 \(Z[J(t)]\) を生成汎関数という. この生成汎関数を \(n\) 回汎関数微分すると \(n\) 点 Green 関数が得られる:
\[(-i)^n {\hbar}^n \left. \frac{δ^n Z[J(t)]}{δJ(t_n)⋯δJ(t_1)} \right|_{J=0} = ⟨q_f,t_f| T\^q(t_n)⋯\^q(t_1) |q_i,t_i⟩.\]定義中の2つ目の等号は,
\[\begin{aligned} &\ ⟨q_f,t_f| T\exp\bqty{\frac{i}{{\hbar}} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t} J(t)\^q(t)} |q_i,t_i⟩ \\ =&\ ⟨q_f,t_f| T ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} \bqty{\frac{i^n}{{\hbar}^n} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_n} ⋯ ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_1} J(t_n)⋯J(t_1) \^q(t_n)⋯\^q(t_1)} |q_i,t_i⟩ \\ =&\ ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} \frac{i^n}{{\hbar}^n} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_n} ⋯ ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_1} J(t_n)⋯J(t_1) ⟨q_f,t_f| T\^q(t_n)⋯\^q(t_1)|q_i,t_i⟩ \\ =&\ ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} \frac{i^n}{{\hbar}^n} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_n} ⋯ ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_1} J(t_n)⋯J(t_1) ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ q(t_n)⋯q(t_1) e^{\frac{i}{{\hbar}} S[q(t)]} \\ =&\ ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ \bqty{∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} \frac{i^n}{{\hbar}^n} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_n} ⋯ ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_1} J(t_n)⋯J(t_1) q(t_n)⋯q(t_1)} e^{\frac{i}{{\hbar}} S[q(t)]} \\ =&\ ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ \exp\bqty{\frac{i}{{\hbar}} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t} J(t)q(t)} e^{\frac{i}{{\hbar}} S[q(t)]} \\ \end{aligned}\]より成立する. また, この式変形の途中
\[Z[J(t)] = ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_n} ⋯ ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_1} \bqty{\frac{i^n}{{\hbar}^n} ⟨q_f,t_f| T\^q(t_n)⋯\^q(t_1)|q_i,t_i⟩} J(t_n)⋯J(t_1)\]を \(Z[J(t)]\) の \(J=0\) まわりの汎関数冪展開
\[Z[J(t)] = ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_n} ⋯ ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_1} \left. \frac{δ^n Z[J(t)]}{δJ(t_n)⋯δJ(t_1)} \right|_{J=0} J(t_n)⋯J(t_1)\]と比較すると, \(J(t)\) は任意だから, \(n\) 点 Green 関数との関係式が得られる.
非相対論的方程式 : Schrödinger 方程式
非相対論的な一粒子 \((\bm{x},\bm{p})\) の分散関係
\[H(\bm{x},\bm{p},t) = \frac{\bm{p}^2}{2m} + V(\bm{x},t)\]の量子化を考える. このときの Schrödinger 方程式は,
\[\pqty{\frac{{\^{\bm{p}}}^2}{2m} + V(\^{\bm{x}},t)} |ψ(t)⟩ = i{\hbar} \dv{}{t} |ψ(t)⟩,\]あるいは位置 \(\bm{x}\) 表示の Schrödinger 方程式は,
\[\pqty{-\frac{{\hbar}^2}{2m} \laplacian + V(\bm{x},t)} ψ(\bm{x},t) = i{\hbar} \pdv{}{t} ψ(\bm{x},t)\]である. 一般に Schrödinger 方程式というとき, この方程式を指すことが多い.
非相対論的な一粒子の位置表示の波動関数 \(ψ(\bm{x},t)\) は次の Schrödinger 方程式を満たす:
\[\pqty{-\frac{{\hbar}^2}{2m} \laplacian + V(\bm{x},t)} ψ(\bm{x},t) = i{\hbar} \pdv{}{t} ψ(\bm{x},t).\]時間 \(t\) にいて粒子が \(\bm{x}\) に見い出される確率密度を
\[ρ(\bm{x},t) = |ψ(\bm{x},t)|^2\]とすると, 粒子の確率は連続方程式
\[\pdv{ρ}{t} + \div\bm{j} = 0\]を満たす. ただし
\[\bm{j}(\bm{x},t) ≡ - \frac{i{\hbar}}{2m} \pqty{ψ^* \grad ψ - ψ \grad ψ^*}\]は確率流密度と呼ばれる. 実際,
\[\begin{aligned} \pdv{ρ}{t} &= \pdv{}{t} (ψ^* ψ) \\ &= \frac1{i{\hbar}} \pqty{ψ^* i{\hbar}\pdv{}{t} ψ + ψ i{\hbar}\pdv{}{t} ψ^*} \\ &= \frac1{i{\hbar}} \bqty{ψ^* \pqty{-\frac{{\hbar}^2}{2m} \laplacian + V(\bm{x},t)} ψ - ψ \pqty{-\frac{{\hbar}^2}{2m} \laplacian + V(\bm{x},t)} ψ^*} \\ &= \frac{i{\hbar}}{2m} \pqty{ψ^* \laplacian ψ - ψ \laplacian ψ^*} \\ &= \frac{i{\hbar}}{2m} \bqty{\div (ψ^* \grad ψ) - \grad ψ^* \grad ψ - \div (ψ \grad ψ^*) + \grad ψ \grad ψ^*} \\ &= - \div \bqty{- \frac{i{\hbar}}{2m} \pqty{ψ^* \grad ψ - ψ \grad ψ^*}} \\ &= - \div \bm{j} \\ \end{aligned}\]である.
相対論的方程式 : Klein-Gordon 方程式
相対論的な一粒子 \((\bm{x},\bm{p})\) の分散関係
\[\pqty{\frac{H(\bm{x},\bm{p})}{c}}^2 = \bm{p}^2 + (mc)^2\]の量子化を考える. 状態ベクトル \(|ϕ(t)⟩\) に Hamiltonian 演算子を二回作用させると,
\[\frac{{\^H}^2}{c^2} |ϕ(t)⟩ = \frac1{c^2} \pqty{i{\hbar}\dv{}{t}} \pqty{i{\hbar}\dv{}{t}} |ϕ(t)⟩ = - {\hbar}^2 \frac{\d{{}^2}}{c^2\d{t^2}} |ϕ(t)⟩.\]また, 分散関係より,
\[\frac{{\^H}^2}{c^2} |ϕ(t)⟩ = \pqty{\frac{H\pqty{\^{\bm{x}},\^{\bm{p}}}}{c^2}}^2 |ϕ(t)⟩ = \bqty{{\^{\bm{p}}}^2 + (mc)^2} |ϕ(t)⟩.\]したがって,
\[\bqty{{\^{\bm{p}}}^2 + (mc)^2} |ϕ(t)⟩ = - {\hbar}^2 \frac{\d{{}^2}}{c^2\d{t^2}} |ϕ(t)⟩.\]特に, 位置 \(\bm{x}\) 表示の波動関数については,
\[\bqty{- {\hbar}^2 \laplacian + (mc)^2} ϕ(\bm{x},t) = - {\hbar}^2 \frac{∂^2}{c^2∂t^2} ϕ(\bm{x},t).\]あるいは \(x=(x^μ)=(t,\bm{x})\), \((∂^μ) = (c^{-1} ∂_t,\grad)\) として,
\[\bqty{∂^μ∂_μ + \pqty{\frac{mc}{{\hbar}}}^2} ϕ(x) = 0.\]これは相対論的な一粒子の位置表示の波動関数が満たすべき方程式である:
相対論的な一粒子の位置表示の波動関数 \(ϕ(x)\) は次の Klein-Gordon 方程式を満たす:
\[\bqty{∂^μ∂_μ + \pqty{\frac{mc}{{\hbar}}}^2} ϕ(x) = 0.\]Klein-Gordon 方程式の確率に関する連続方程式を導出してみよう. Klein–Gordon 方程式とその複素共役
\[\pqty{∂^μ∂_μ + m^2}ϕ = 0, \quad \pqty{∂^μ∂_μ + m^2}ϕ^* = 0\]にそれぞれ \(ϕ^*\), \(ϕ\) をかけたもの
\[ϕ^*\pqty{∂^μ∂_μ + m^2}ϕ = 0, \quad ϕ\pqty{∂^μ∂_μ + m^2}ϕ^* = 0\]を辺々引くと,
\[ϕ^*∂^μ∂_μϕ - ϕ∂^μ∂_μϕ^* = 0\]となり, 左辺を変形すれば
\[\begin{gathered} ∂^μ(ϕ^*∂_μϕ - ϕ∂_μϕ^*) = (∂^μϕ^*∂_μϕ + ϕ^*∂^μ∂_μϕ) - (∂^μϕ∂_μϕ^* + ϕ∂^μ∂_μϕ^*) = ϕ^*∂^μ∂_μϕ - ϕ∂^μ∂_μϕ^* \\ ∴∂^μj_μ = 0, \quad j_μ ≡ i(ϕ^*∂_μϕ - ϕ∂_μϕ^*) \end{gathered}\]が得られる. ただし \(j_μ\) を実数にするために \(i\) を乗じた. \(j^μ = (ρ, \bm{j})\) とすれば,
\[\pdv{ρ}{t} + \div \bm{j} = 0, \quad ρ(\bm{x},t) ≡ i(ϕ^*∂_tϕ - ϕ∂_tϕ^*), \quad \bm{j}(\bm{x},t) ≡ -i(ϕ^* \grad ϕ - ϕ \grad ϕ^*)\]となり, 非相対論的の場合と似た形になる. 自然な発想として, Klein–Gordon 方程式から得られる \(ρ(\bm{x},t), \bm{j}(\bm{x},t)\) をそれぞれ相対論的な「確率」と「確率の流れ」と解釈したくなるが,
\[ρ(\bm{x},t) = i(ϕ^*∂_tϕ - ϕ∂_tϕ^*)\]は正にも負にも成り得るから確率の公理を満たさない. したがって, Klein–Gordon 方程式に従う \(ϕ(\bm{x},t)\) から作られる \(ρ(\bm{x},t)\) を確率として解釈するのは困難である.
また, Klein–Gordon 方程式に従うときのエネルギー固有値を調べてみよう.
\[ϕ_{\bm{P}}(\bm{x},t) = c_+e^{-i(E_{\bm{P}}t-\bm{P}\cdot\bm{x})}, \quad E_{\bm{P}} ≡ \sqrt{\bm{P}^2+m^2}>0\]は Klein–Gordon 方程式を満たす. ただし, \(c_+\) は \(0\) でない定数とする. 実際,
\[\pqty{∂^μ∂_μ + m^2}ϕ_{\bm{P}} = C \pqty{∂_t^2 - ∇^2 + m^2} e^{-i(E_{\bm{P}}t-\bm{P}\cdot\bm{x})} = C \pqty{- E_{\bm{P}}^2 + \bm{P}^2 + m^2} e^{-i(E_{\bm{P}}t-\bm{P}\cdot\bm{x})} = 0\]となる. この \(ϕ_{\bm{P}}(\bm{x},t)\) に Hamiltonian を作用させると
\[Hϕ_{\bm{P}} = E_{\bm{P}}ϕ_{\bm{P}}\]となるから, \(ϕ_{\bm{P}}\) はエネルギー固有値 \(E_{\bm{P}}\) に属する固有関数である. さて, \(E_{\bm{P}}\) を使って新しい関数
\[ϕ'_{\bm{P}}(\bm{x},t) = c_-e^{i(E_{\bm{P}}t-\bm{P}\cdot\bm{x})}\]を定義すると, この関数もまた同様に Klein–Gordon 方程式を満たす. ただし, \(c_-\) は \(0\) でない定数とした. また Hamiltonian を作用させると
\[Hϕ'_{\bm{P}} = -E_{\bm{P}}ϕ'_{\bm{P}}\]となるから, \(ϕ'_{\bm{P}}\) はエネルギー固有値 \(-E_{\bm{P}}\) に属する固有関数である. したがって, エネルギー固有値 \(E_{\bm{P}}(>0)\) に対し, 符号を反転した \(-E_{\bm{P}}\) もまたエネルギー固有値である. したがって, 系のエネルギーはいくらでも低くなれるために基底状態が存在せず, 安定しない. そのため, 負のエネルギー解が存在することは従来の量子力学にとって不都合である.
以上の不都合は Klein-Gordon 方程式が2階の微分方程式であるから生じるとして, 相対論的な分散関係を満たす1階の微分方程式を求めて作られたのが次の Dirac 方程式である.
相対論的方程式 : Dirac 方程式
\(d\) 次正方行列 \(α_1\), \(α_2\), \(α_3\), \(β\) に対し,
\[\frac{H}{c} = α^1p_1 + α^2p_2 + α^3p_3 + βmc ≡ \bm{α}⋅\bm{p} + βmc,\]としたとき, 相対論的分散関係式 \((H/c)^2=p^2+(mc)^2\) を満たす \(\bm{α}\), \(β\) の条件を考える. 2乗すると,
\[\begin{aligned} \pqty{\frac{H}{c}}^2 &= (α^1p_1 + α^2p_2 + α^3p_3 + βmc)(α^1p_1 + α^2p_2 + α^3p_3 + βmc) \\ &= (α^1)^2p_1^2 + (α^2)^2p_2^2 + (α^3)^2p_3^2 + \{α^i,α^j\}p_ip_j|_{i≠j} + \{α^i,β\}p_imc + β^2(mc)^2. \end{aligned}\]これが分散関係式を満たす条件は
\[(α^i)^2=β^2=1, \quad \{α^i,β\} = 0, \quad α^iα^j + α^jα^i = 0.\]定義の式に左から \(β\) をかけて,
\[\frac{H}{c} = \bm{α}⋅\bm{p} + βmc,\]または左から \(β\) をかけ, \((γ^μ)=(γ^0,\bm{γ})≡(β,β\bm{α})\) とすれば,
\[γ^0\frac{H}{c} = \bm{γ}⋅\bm{p} + mc.\]ただし, \(γ^μ\) は以下の反交換関係を満たす:
\[\{γ^μ,γ^ν\}=2g^{μν}.\]実際, \(\{α^i,α^j\} = 2δ^{ij}\) に \(β^2\) を左からをかけると,
\[2δ^{ij} = β^2 \{α^i,α^j\} = ββα^iα^j + ββα^jα^i = - βα^iβα^j - βα^jβα^i = - \{βα^i,βα^j\}.\]ただし, \(βα^i=-α^iβ\) を使った. さて, このときの分散関係式は \(d^2\) 本の連立方程式である. これらを量子化すると,
\[\begin{gathered} \pqty{\bm{α}⋅\bm{p} + βmc} |ψ(t)⟩ = i{\hbar}\frac{\d{}}{c\d{t}} |ψ(t)⟩, \\ \pqty{-i{\hbar}\bm{α}⋅\grad + βmc} ψ(x,t) = i{\hbar}\frac{∂}{c∂t} ψ(x,t). \end{gathered}\]または \(γ^μ\) を使って,
\[\begin{gathered} \pqty{\bm{γ}⋅\bm{p} + mc} |ψ(t)⟩ = i{\hbar}γ^0\frac{\d{}}{c\d{t}} |ψ(t)⟩, \\ \pqty{-i{\hbar}\bm{γ}⋅\grad + mc} ψ(x,t) = i{\hbar}γ^0\frac{∂}{c∂t} ψ(x,t). \end{gathered}\]偏微分をまとめると,
\[\pqty{iγ^μ∂_μ - \frac{mc}{{\hbar}}} ψ(x,t) = 0.\]または Dirac 演算子 \(\slashed{∂}≡γ^μ∂_μ\) を用いると,
\[\pqty{i\slashed{∂} - \frac{mc}{{\hbar}}} ψ(x,t) = 0.\]相対論的な一 Fermi 粒子の位置表示の波動関数 \(ψ(x)\) は次の Dirac 方程式を満たす: \(β^2=0\), \(\{α^i,β\} = 0\), \(\{α^i,α^j\} = δ^{ij}\) を満たす行列 \(α\), \(β\) に対し,
\[ \pqty{-i{\hbar}\bm{α}⋅\grad + βmc} ψ(x,t) = i{\hbar}\frac{∂}{c∂t} ψ(x,t),\]あるいは, \(\{γ^μ,γ^ν\}=g^{μν}\) を満たす \(γ\) 行列に対し, \(\slashed{∂}≡γ^μ∂_μ\) として,
\[ \pqty{i\slashed{∂} - \frac{mc}{{\hbar}}} ψ(x,t) = 0.\]時間 \(t\) にいて粒子が \(\bm{x}\) に見い出される確率密度を
\[ρ(\bm{x},t) = ψ^{\dagger}(\bm{x},t) ψ(\bm{x},t)\]とすると, 粒子の確率は連続方程式
\[\frac{∂ρ}{c∂t} + \div\bm{j} = 0\]を満たす. ただし
\[\bm{j}(\bm{x},t) ≡ ψ^{\dagger}(\bm{x},t)\bm{α}ψ(\bm{x},t)\]は確率流密度と呼ばれる. あるいは, \(γ\) 行列を用いると, 連続方程式は
\[∂_μ j^μ(x) ≡ 0\]と簡単になる. 実際,
\[\begin{aligned} \frac{∂ρ}{c∂t} &= \frac{∂}{c∂t} (ψ^{\dagger} ψ) \\ &= \frac1{i{\hbar}} \bqty{ψ^{\dagger} \pqty{i{\hbar}\overrightarrow{\frac{∂}{c∂t}}} ψ - ψ^{\dagger} \pqty{-i{\hbar}\overleftarrow{\frac{∂}{c∂t}}} ψ} \\ &= \frac1{i{\hbar}} \bqty{ψ^{\dagger} \pqty{-i{\hbar}\bm{α}⋅\overrightarrow{\grad} + βmc} ψ - ψ^{\dagger} \pqty{i{\hbar}\bm{α}⋅\overleftarrow{\grad} + βmc} ψ} \\ &= - \bqty{ψ^{\dagger} \bm{α}⋅\overrightarrow{\grad} ψ + ψ^{\dagger} \bm{α}⋅\overleftarrow{\grad} ψ} \\ &= - \grad⋅\pqty{ψ^{\dagger} \bm{α} ψ}, \\ \end{aligned}\] \[\begin{aligned} \frac{∂ρ}{c∂t} &= \frac{∂}{c∂t} (\overline{ψ}ψ) ≡ \frac{∂}{c∂t} (ψ^{\dagger}γ^0ψ) \\ &= \frac1{i{\hbar}} \bqty{ψ^{\dagger} \pqty{i{\hbar}γ^0\overrightarrow{\frac{∂}{c∂t}}} ψ - ψ^{\dagger} \pqty{-i{\hbar}γ^0\overleftarrow{\frac{∂}{c∂t}}} ψ} \\ &= \frac1{i{\hbar}} \bqty{ψ^{\dagger} \pqty{-i{\hbar}\bm{γ}⋅\overrightarrow{\grad} + mc} ψ - ψ^{\dagger} \pqty{i{\hbar}\bm{γ}⋅\overleftarrow{\grad} + mc} ψ} \\ &= - \bqty{ψ^{\dagger} \bm{γ}⋅\overrightarrow{\grad} ψ + ψ^{\dagger} \bm{γ}⋅\overleftarrow{\grad} ψ} \\ &= - \grad⋅\pqty{ψ^{\dagger} \bm{γ} ψ}. \\ \end{aligned}\]ここで \(\overline{ψ}≡ψ^{\dagger}γ^0\) は Dirac 共役と呼ばれる.
場の量子論との関係
位置 \(\bm{x}\) 表示の波動関数 \(Ψ(\bm{x},t)\) に対し,
\[Ψ(\bm{x},t) = ⟨\bm{x},t|Ψ⟩ = ⟨0|\^ψ(\bm{x},t)|Ψ⟩\]を満たすような演算子 \(\^ψ(\bm{x},t)\) を場の演算子という. つまり,
\[|\bm{x},t⟩ = {\^ψ}^{\dagger}(\bm{x},t)|0⟩.\]ここで, \(|0⟩\) は真空状態と呼ばれる状態で, \({\^ψ}^{\dagger}(\bm{x},t)\) を真空状態に作用させることで \((\bm{x},t)\) に1粒子が観測される状態になる. この場の演算子 \(\^ψ(\bm{x},t)\) はある古典場 \(ψ(\bm{x},t)\) を力学変数として量子化した結果に得られるものである.
場の演算子 \(\^ψ(\bm{x},t)\) は波動関数 \(Ψ(\bm{x},t)\) と同じ Schrödinger 方程式を満たす. 実際, Schrödinger 方程式に代入すると,
\[H \pqty{\bm{x},-i{\hbar}\grad} ⟨0|\^ψ(\bm{x},t)|Ψ⟩ = i{\hbar}\pdv{}{t} ⟨0|\^ψ(\bm{x},t)|Ψ⟩.\] \[∴ H \pqty{\bm{x},-i{\hbar}\grad} \^ψ(\bm{x},t) = i{\hbar}\pdv{}{t} \^ψ(\bm{x},t).\]反対に, 古典場 \(ψ(\bm{x},t)\) が満たす Euler-Lagrange 方程式に対し, その場を量子化した演算子 \(\^ψ(\bm{x},t)\) によって得られる1粒子状態の波動関数 \(Ψ(\bm{x},t) = ⟨\bm{x},t|Ψ⟩ = ⟨0|\^ψ(\bm{x},t)|Ψ⟩\) は, Euler-Lagrange 方程式のうちの1つと同じ形の Schrödinger 方程式を満たす.
参考文献
- 清水 明 『新版 量子論の基礎 その本質のやさしい理解のために』 (サイエンス社, 2004)
- 杉田 勝実, 岡本 良夫, 関根 松夫 『経路積分と量子電磁力学』(森北出版, 1998)
- 日笠 健一 『ディラック方程式 相対論的量子力学と量子場理論』 (サイエンス社, 2004)
- 坂井 典佑 『場の量子論』(裳華房フィジックスライブラリー, 2002)