環上の加群

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環上の加群

kk-代数 RR に対し, Abel 群 MM の加法 ++ と写像 λ:R×MMλ:R×M→Ma,bRa,b∈R, m,mMm,m'∈M に対し以下の条件を満たすとき, 組 (M,+,λ)(M,+,λ) または単に MMRR 上の左加群 left module over RR またはRR-加群 left RR-module, 単に RR-加群 RR-module という.

  1. Abel 群の加法に対するスカラー作用の分配律: λ(a,m+m)=λ(a,m)+λ(a,m)λ(a,m+m')=λ(a,m)+λ(a,m'),
  2. 環の加法に対するスカラー作用の分配則: λ(a+b,m)=λ(a,m)+λ(b,m)λ(a+b,m)=λ(a,m)+λ(b,m),
  3. 環の乗法とスカラー作用の両立条件: λ(ab,m)=λ(a,λ(b,m))λ(ab,m)=λ(a,λ(b,m)),
  4. スカラー作用の単位元の存在: λ(1,m)=mλ(1,m)=m.

RR 上の右加群または右 RR-加群も同様に定義される. Abel 群は Z\mathbb{Z}-加群である. 実際, Abel 群 GG の要素 gg に対して

ng:=g+g++gn,(1)g:=g,0g:=0n \cdot g := \underbrace{g+g+\cdots+g}_n, \quad (-1) \cdot g:=-g, \quad 0 \cdot g:=0

と定義すれば, 加法 ++ と写像 :Z×GG\cdot : \mathbb{Z}×G→G について GG は左 Z\mathbb{Z} の定義を満たす.

部分加群と剰余類

RR-加群 MM の部分集合 NN について, NN がまた RR-加群であるとき, NNMM部分 RR-加群 submodule という.

RR-加群 MM の部分加群 NN に対し, 和に対する左剰余類の全体 M/N:={m+NmM}M/N:=\{m+N \mid m∈M\} を考える. RR-加群の元 m,mMm,m'∈MxRx∈R に対して M/NM/N 上の演算を

(m+N)+(m+N):=(m+m)+N,x(m+N):=xm+N\begin{gathered} (m+N)+(m'+N):=(m+m')+N, \\ x(m+N):=xm+N \end{gathered}

と定義すると, M/NM/NRR-加群となる. これを商加群 quotient RR-module という. また, 商加群 M/NM/N の元(左剰余類)を [m]:=m+N[m]:=m+N と書く. これはちょうど, m,nMm,n∈M に対して同値関係を mn:mnNm∼n:⇔m-n∈N と定義したときの同値類 [m]={mMmn}[m]=\{m∈M \mid m∼n\} に等しい.

RR-準同型

RR-加群 MM, MM' について, 写像 f:MMf:M→M'a,bRa,b∈Rm,nMm,n ∈ M に対し

f(am+bn)=af(m)+bf(n)f(am+bn)=af(m)+bf(n)

を満たすとき, ffMM から MM' への RR-準同型写像 RR-homomorphism, あるいは単に RR-準同型 RR-hommomorohic という. MM から MM' への RR-準同型全体を HomR(M,M)\operatorname*{Hom}_R(M,M') と書く. また, 環 MM, MM' に対し, RR-加群の図式

MfMMfM\begin{CD} M @>{f}>> M' \\ @| \circlearrowleft @| \\ M @<<{f'}< M' \end{CD}

が可換になるような RR-準同型 f:MMf:M→M', f:MMf':M'→M が存在するとき, ffRR-同型写像 RR-isomorphism という. このとき, MM, MM'RR-同型 RR-isomorphic といい, MMM ≃ M' と書く.

参考文献