チューバ

チューバが上手くならない. 上手くなるには練習せねばならない. 練習するにはカラオケへ行かねばならない. カラオケ代もバカにはならない. ということでチューバ1について色々と考えたことをまとめる.

チューバの基本概念

チューバとは, 大雑把に言えば 倍音の倍数と運指から音が決まる写像である. 当然奏法だったり色々音色を変える術はあるだろうが, 音だけで言えば非常に物理的な性質を持った楽器である2.

倍音

チューバの本質は, 両端が開いた管である. 管は 固有振動数 ωn\omega_n を持ち, マウスピースでの唇の振動がそれと一致したときに, 管内で定常波となって共鳴する. 倍音の倍数 nn に対し, 出る音の B2\sf{B_2} からの音高差 mm [半音] は,

m=12log2nm = 12 \log_2 n

と表される.

倍数 n=1,,16n = 1, \dots, 16 について, mm とそれに対応する音 TT についてまとめた音が次の表3である. 一般的に用いられる倍音 n=2,3,4,5,6,8,n=2,3,4,5,6,8,\dots は音との音高差が比較的近いことがわかる.

倍音 nn [倍]B2\sf{B_2} との音高差 mm [半音]TT [半音]
110.000.00B2±0.00\sf{B_2} \pm 0.00
2212.0012.00B1±0.00\sf{B_1} \pm 0.00
3319.0219.02F+0.02\sf{F} + 0.02
4424.0024.00B±0.00\sf{B} \pm 0.00
5527.8627.86d0.14\sf{d} - 0.14
6631.0231.02f+0.02\sf{f} + 0.02
7733.6933.69a0.31\sf{a} - 0.31
8836.0036.00b±0.00\sf{b} \pm 0.00
9938.0438.04c1+0.04\sf{c^1} + 0.04
101039.8639.86d10.14\sf{d^1} - 0.14
111141.5141.51e10.49\sf{e^1} - 0.49
121243.0243.02f1+0.02\sf{f^1} + 0.02
131344.4144.41g10.59\sf{g^1} - 0.59
141445.6945.69as10.31\sf{as^1} - 0.31
151546.8846.88a10.12\sf{a^1} - 0.12
161648.0048.00b1±0.00\sf{b^1} \pm 0.00

また, 次の図は nnmm のグラフにチューバの倍音列を重ねたものである. 五線譜は線の間隔が一定ではないために無理がある図であるが, グラフと概ね一致していることがわかる.

チューバの倍音列と対数関数

運指

倍音に無い音を出すために, チューバには4個のロータリーバルブが付いている. 簡単のため, ii 番ロータリーバルブの状態を Fi{0,1}F_i \in \{0,1\} で表し, F=F2×20+F1×21+F3×22+F4×23F = F_2 \times 2^0 + F_1 \times 2^1 + F_3 \times 2^2 + F_4 \times 2^3 とする. ii 番レバーを押したとき, つまり Fi=1F_i = 1 のとき, 息の経路に ii 番管が追加され, 管長が伸び, 固有振動数が大きくなる. FF について, 00, 11, 22, 33 or 44, 55, 66 or 88, 77 or 99, 1010, 1111 or 1212, 1313, 1414, 1515 の順に音は半音ずつ下がっていく. それを利用することで, 倍音に無い音を出すことができる.

運指対応表(抜粋)

実用的な範囲4での (n,F)T(n, F) \mapsto T の対応は以下.

FF運指n=n=234568910
0○○○○B₁FBdfb
1○●○○A₁EAdesea
2●○○○As₁EsAscesas
3,4●●○○ or ○○●○G₁DGHdga
5○●●○Ges₁DesGesdesgesb
6,8●○●○ or ○○○●F₁CFAcf
7,9●●●○ or ○●○●E₁H₁H

逆引き運指表(抜粋)

特定の音 TT を出したいときは以下の表.

nnE₁F₁Ges₁G₁As₁A₁B₁H₁CDesDEsEFGesGAsABHcdesdesefgesgasab
105
93,4
87,96,853,4210
67,96,853,4210
56,83,4210
46,853,4210
37,96,853,4210
27,96,853,4210

全運指表

実用を無視して, 構造上考えられる全ての (n,F)T(n, F) \mapsto T の対応をまとめてみる.

運指対応表

斜字以外の音は理論的な音(ずれあり).

FF運指n=n=12345678910111213141516
0○○○○B₂B₁FBdfabas¹
1○●○○A₂A₁EAdeseasahdes¹es¹ges¹as¹
2●○○○As₂As₁EsAscesgasbes¹ges¹as¹
3,4●●○○ or ○○●○G₂G₁DGHdgesgahdes¹ges¹
5○●●○Ges₂Ges₁DesGesBdesfgesasbdes¹es¹ges¹
6,8●○●○ or ○○○●F₂F₁CFAcefgahes¹
7,9●●●○ or ○●○●E₂E₁H₁EAsHesegesasbhdes¹es¹
10●○○●Es₂Es₁B₁EsGBdesfgabdes¹es¹
11,12●●○● or ○○●●D₂D₁A₁DGesAdesdegesasahdes¹
13○●●●Des₂Des₁As₁DesFAscdesesfgasbhdes¹
14●○●●C₂C₁G₁CEGHcdegesgabh
15●●●●H₃H₂Ges₁H₁EsGesBHdesesfgesasabh

逆引き運指表

斜字以外の音は理論的な音(ずれあり).

nnH₃C₂Des₂D₂Es₂E₂F₂Ges₂G₂As₂A₂B₂H₂C₁Des₁D₁Es₁E₁F₁Ges₁G₁As₁A₁B₁H₁CDesDEsEFGesGAsABHcdesdesefgesgasabhdes¹es¹ges¹as¹
1615141311,12107,96,853,4210
1515141311,12107,96,853,4210
1415141311,12107,96,853,4210
1315141311,12107,96,853,4210
1215141311,12107,96,853,4210
1115141311,12107,96,853,4210
1015141311,12107,96,853,4210
915141311,12107,96,853,4210
815141311,12107,96,853,4210
715141311,12107,96,853,4210
615141311,12107,96,853,4210
515141311,12107,96,853,4210
415141311,12107,96,853,4210
315141311,12107,96,853,4210
215141311,12107,96,853,4210
115141311,12107,96,853,4210

本当に出るかは試してないし, そんな実力も無いので未検証. あとこんなこと考えても上達はしないので, 大人しく練習するべき. します.

Footnotes

  1. ここでのチューバとは, 私の持っているB管4ロータリーチューバのことを指す.

  2. 当然, 任意の楽器にも言えることで, チューバだけが特別なわけではない.

  3. 倍音 - Wikipedia #各倍音と倍音列

  4. 稲川榮一(2013), 『チューバ教本』, 管楽器メソッド・シリーズ, ドレミ楽譜.