物理ノート

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はじめに

適当なことを書いているノート. 疑って読むこと.

複素解析

虚数単位と複素数体

\(i^2 = -1\) を満たす数 \(i\) を虚数単位と言い, 形式的に \(i = \sqrt{-1}\) とも書く.

2 実数 \(x,y∈ℝ\) を係数とした \(1,i\) の線形結合 \(x+yi\) を複素数といい, 複素数の全体を \(ℂ\) と書く. 複素数 \(z=x+yi\) の \(x =: \Re{z}\), \(y = \Im{z}\) をそれぞれ \(z\) の実部 real part, 虚部 imaginary part という.

複素数 \(z=x+yi\) に対して, \(z^*:=x-yi\) を \(z\) 複素共役といい, 複素数 \(z\) の絶対値 \(|z|\) を \(|z|^2 := z^*z = x^2 + y^2 ≥ 0\) で定義する.

三角関数と指数関数

複素数 \(z\) に対する三角関数 \(\cos z\), \(\sin z\) を以下で定義する:

\[\begin{aligned} \cos z &:= ∑_{n=0}^∞ \frac{(-1)^n}{(2n)!} z^{2n} &&= 1 - \frac{z^2}{2!} + \frac{z^4}{4!} - \frac{z^6}{6!} +- ⋯, \\ \sin z &:= ∑_{n=0}^∞ \frac{(-1)^n}{(2n+1)!} z^{2n+1} &&= z - \frac{z^3}{3!} + \frac{z^5}{5!} - \frac{z^7}{7!} +- ⋯. \end{aligned}\]

また, 指数関数 \(e^z\) (または \(\exp z\)) を以下で定義する:

\[e^z := ∑_{n=0}^∞ \frac{z^n}{n!} = 1 + z + \frac{z^2}{2!} + \frac{z^3}{3!} + ⋯.\]

これらは実数における三角関数と指数関数の自然な拡張である.

指数関数と三角関数について以下が成立する:

\[\begin{gathered} e^{iz} = \cos z + i \sin z, \\ \cos z = \frac{e^{iz} + e^{-iz}}{2}, \quad \sin z = \frac{e^{iz} - e^{-iz}}{2i}. \end{gathered}\]

複素平面と極形式

複素数 \(z=x+yi∈ℂ\) に対し, \((x,y)\) を点とする \(ℝ^2\) 平面を複素平面といい, この \(ℝ^2\) と \(ℂ\) を同一視する. たとえば, 原点 \(O = (0,0)\) から点 \((x,y)\) までの距離は \(\sqrt{x^2+y^2}\) で複素数 \(z\) の絶対値 \(|z|\) と同じである.

\(z = |z| e^{iθ} = |z| \cos θ + i |z| \sin θ\) のような形で与えられる複素数を極形式といい, \(θ\) を偏角という: 実際, 複素平面上では点 \((|z| \cos θ, |z| \sin θ)\) に対応し, 極座標では \((|z|, θ)\) である. したがって,

\[\begin{gathered} x + yi = |z| e^{iθ} \\ ⇔ |z|^2 = x^2 + y^2,\; \cos θ = \frac{x}{|z|},\; \sin θ = \frac{y}{|z|} \end{gathered}\]

都合の良い偏角の範囲を偏角の主値といい, \(\arg{z}\) と書く: たとえば \(0 ≤ \arg{z} < 2π\) や \(-π < \arg{z} ≤ π\) など.

複素微分

複素関数 \(f(z)\) の点 \(z\) における微分は

\[\dv{f}{z} := \lim_{Δz→0} \frac{f(z + Δz) - f(z)}{Δz}.\]

定義式の極限値が存在するとき, \(f(z)\) は \(z\) で微分可能であるという.

\(f(z)=u(z)+iv(z)\) が \(z=x+iy\) で微分可能である条件は, \(u(x,y) := u(x+iy)\), \(v(x,y) := v(x+iy)\) として, 以下の方程式が成立することである. これを Cauchy-Riemann 方程式 Cauchy-Riemann equation という:

\[\pdv{u}{x} = \pdv{v}{y}, \quad \pdv{u}{y} = - \pdv{v}{x}.\]

実際, 微分の定義式において \(Δz = |Δz| e^{iθ}\) とすると, \(f(z)\) が \(z\) で微分可能であるための条件は, この値が \(θ\) によらないことである. したがって,

\[\begin{aligned} \dv{f}{z} &= \lim_{|Δz|→0} \frac{e^{-iθ}}{|Δz|} \Big[f(z + |Δz| e^{iθ}) - f(z)\Big] \\ &= \lim_{|Δz|→0} \frac{e^{-iθ}}{|Δz|} \Big[ u(x + |Δz| \cos θ, y + |Δz| \sin θ) + i v(x + |Δz| \cos θ, y + |Δz| \sin θ) - u(x, y) - i v(x, y) \Big] \\ &= \lim_{|Δz|→0} \frac{e^{-iθ}}{|Δz|} \bqty{ \pdv{u}{x} |Δz| \cos θ + \pdv{u}{y} |Δz| \sin θ + i \pdv{v}{x} |Δz| \cos θ + i \pdv{v}{y} |Δz| \sin θ + O(|Δz|^2) } \\ &= \pqty{ \pdv{u}{x} + i \pdv{v}{x}} e^{-iθ} \cos θ + \pqty{ \pdv{u}{y} + i \pdv{v}{y}} e^{-iθ} \sin θ \\ &= \pqty{ \pdv{u}{x} + i \pdv{v}{x}} e^{-iθ} (e^{iθ} - i \sin θ) + \pqty{ \pdv{u}{y} + i \pdv{v}{y}} e^{-iθ} \sin θ \\ &= \pqty{ \pdv{u}{x} + i \pdv{v}{x}} - \pqty{i \pdv{u}{x} - \pdv{v}{x}} e^{-iθ} \sin θ + \pqty{ \pdv{u}{y} + i \pdv{v}{y}} e^{-iθ} \sin θ \\ &= \pqty{ \pdv{u}{x} + i \pdv{v}{x}} + \bqty{ \pqty{\pdv{u}{y} + \pdv{v}{x}} - i \pqty{\pdv{u}{x} - \pdv{v}{y}} } e^{-iθ} \sin θ. \end{aligned}\]

正則関数と特異点

関数 \(f(z)\) が \(z\) とその近傍で 1 価関数かつ微分可能であるとき, \(f(z)\) は \(z\) において正則という. \(f(z)\) が領域 \(D\) 内の全ての点で正則であるとき, \(f(z)\) は \(D\) において正則という.

\(f(z)\) が正則でない点を \(f(z)\) の特異点 singularity という. また近くに特異点が存在しない特異点を特に孤立特異点といい, 以下の二つに分類される:

リーマン面

ある関数に関し, その点を中心とする閉曲線に沿って一周するとき, 周回の度に値が変わるような孤立特異点を分岐点といい, このような関数を多価関数という. たとえば, \(f(z)=z^{1/2}\) は 2 価関数である: \(z=e^{iθ}\) とすれば \(e^{0i}=e^{2πi}=1\) であるが, \(f(z)=e^{iθ/2}\) より \(f(e^{0i})=e^{0i}=0\), \(f(e^{2πi})=e^{iπ}=1\) で \(f(1)=0,1\) である.

複素積分

関数 \(f(z)\) の経路 \(C\) に沿った積分は

\[I = ∫_C \d{z} f(z).\]

または, 関数を \(f(z)=u(z)+iv(z)\), 経路を \(C(t)∈ℂ\) として,

\[I = ∫ \d{t} f(C(t)) = ∫ \d{t} u(C(t)) + i ∫ \d{t} v(C(t)).\]

領域 \(D\) で正則な \(f(z)\) を, その境界である閉曲線 \(∂D\) で積分するとその値は \(0\) になる. これを Cauchy の積分定理という:

\[∮_{∂D} \d{z} f(z) = 0.\]

実際, \(z=x+iy\), \(f(z)=u(x,y)+iv(x,y)\) に対し,

\[\begin{aligned} ∮_{∂D} \d{z} f(z) &= ∮_{∂D} (\d{x}+i\d{y}) \Big[ u(x,y)+iv(x,y) \Big] \\ &= ∮_{∂D} \bigg\{ \d{x} \Big[ u(x,y)+iv(x,y) \Big] + \d{y} \Big[ i u(x,y) - v(x,y) \Big] \bigg\} \\ &= ∮_{∂D} \Big[ \d{x} u(x,y) - \d{y} v(x,y) \Big] + i ∮_{∂D} \Big[ \d{y} u(x,y) + \d{x} v(x,y) \Big] \\ &= ∬_D \d{x} \d{y} \bqty{- \pdv{v}{x} - \pdv{u}{y}} + i ∬_D \d{x} \d{y} \bqty{\pdv{u}{x} - \pdv{v}{y}} \qquad (∵\text{Green の定理}) \\ &= 0. \qquad (∵\text{Cauchy-Riemann 方程式}) \end{aligned}\]

Cauchy の積分定理より, 積分は経路を特異点を越えない連続的な経路の変更に対して不変である: \(C↦C'\) の経路変更に対して, 内部領域 \(D\) で関数 \(f(z)\) 正則であるから,

\[∫_C \d{z} f(z) \quad ↦ \quad ∫_{C'} \d{z} f(z) = ∫_{C' + \overline{C}} \d{z} f(z) - ∫_{\overline{C}} \d{z} f(z) = ∫_C \d{z} f(z).\]

領域 \(D\) で正則な関数 \(f(z)\) について, \(z=a∈D\) を囲む \(D\) 内の閉曲線 \(C\) に対し以下が成立する. これを Cauchy の積分公式という:

\[f(a) = \frac1{2πi} ∮_C \d{z} \frac{f(z)}{z-a}.\]

実際, \(z=a\) を中心とし \(D\) 内に含まれる半径 \(\varepsilon\) の円 \(S\) に対し, \(C\) と \(S\) を巡り内部が正則であるような閉曲線 \(C'\) について Cauchy の積分定理より,

\[∮_{C'} \d{z} \frac{f(z)}{z-a} = ∮_C \d{z} \frac{f(z)}{z-a} + ∮_{\overline{S}} \d{z} \frac{f(z)}{z-a} = 0.\] \[\begin{aligned} ∴ ∮_C \d{z} \frac{f(z)}{z-a} &= ∮_S \d{z} \frac{f(z)}{z-a} \\ &\quad (z = a + \varepsilon e^{iθ}, \; \d{z} = i \varepsilon e^{iθ} \d{θ}) \\ &= ∫_0^{2π} \d{θ} i \varepsilon e^{iθ} \frac{f(a + \varepsilon e^{iθ})}{\varepsilon e^{iθ}} \\ &= i ∫_0^{2π} \d{θ} f(a + \varepsilon e^{iθ}) \\ &= i ∫_0^{2π} \d{θ} \Big[ f(a) + O(\varepsilon) \Big] \\ &= 2πi f(a) + O(\varepsilon). \end{aligned}\]

ここで \(\varepsilon\) は任意だから, \(\varepsilon→0\) の極限で Cauchy の積分公式が得られる.

Cauchy の積分公式の条件下で, 以下が同様に成立する. これを Goursat の定理という.

\[f^{(n)}(a) = \frac{n!}{2πi} ∮_C \d{z} \frac{f(z)}{(z-a)^{n+1}}.\]

これは Cauchy の積分公式を \(a\) で \(n\) 回微分することで得られる.

冪級数

複素数の冪級数

\[f(z) = ∑_{n=0}^∞ c_n z^n = c_0 + c_1 z + c_2 z^2 + ⋯\]

について, これが収束する条件は \(n→∞\) の極限で \(|c_nz^n|>|c_{n+1}z^{n+1}|\) であるから, 収束半径と呼ばれる実数

\[R = \lim_{n→∞} \frac{|c_n|}{|c_{n+1}|}\]

に対し, \(|z|<R\) で \(f(z)\) は収束する: 実際,

\[R - |z| = \lim_{n→∞} \pqty{\frac{|c_n|}{|c_{n+1}|} - \abs{\frac{z^{n+1}}{z^n}}} = \lim_{n→∞} \frac{|c_nz^n|-|c_{n+1}z^{n+1}|}{|c_{n+1}z^n|}>0.\]

\(z=a\) において正則な関数 \(f(z)\) を以下の冪級数に展開することができる. これを \(z=a\) まわりの Tayler 級数展開という:

\[\begin{gathered} f(z) = ∑_{n=0}^∞ A_n (z-a)^n = A_0 + A_1 (z-a) + A_2 (z-a)^2 + ⋯ \\ A_n = \frac1{2πi} ∮_C \d{ζ} \frac{f(ζ)}{(ζ-a)^{n+1}} = \frac{f^{(n)}(a)}{n!}. \quad (∵\text{Goursat の定理}) \end{gathered}\]

ただし \(z=a\) を中心として \(f(z)\) が正則である最大の半径 \(R\) の円領域 \(D\) に対し, \(C\) は \(z=a\) を囲む \(D\) 内の閉曲線. また収束半径は \(R\). 実際, Cauchy の積分定理より \(C = ∂D\) として十分, Cauchy の積分公式より

\[\begin{aligned} f(z) &= \frac1{2πi} ∮_C \d{ζ} \frac{f(ζ)}{ζ-z} \\ &= \frac1{2πi} ∮_C \d{ζ} \frac{f(ζ)}{ζ-a} \frac1{\displaystyle 1-\frac{z-a}{ζ-a}} \\ &= \frac1{2πi} ∮_C \d{ζ} \frac{f(ζ)}{ζ-a} ∑_{n=0}^∞ \pqty{\frac{z-a}{ζ-a}}^n \\ &= ∑_{n=0}^∞ (z-a)^n \frac1{2πi} ∮_C \d{ζ} \frac{f(ζ)}{(ζ-a)^{n+1}}. \end{aligned}\]

ただし, \(|z|<1\) に対し以下が成立することを用いた:

\[\begin{gathered} ∑_{n=0}^{N-1} z^n - z ∑_{n=0}^{N-1} z^n = 1 - z^N. \\ ∴ ∑_{n=0}^{N-1} z^n = \frac{1-z^N}{1-z} \quad \xrightarrow{N→∞} \quad ∑_{n=0}^∞ z^n = \frac1{1-z}. \end{gathered}\]

\(z=a\) を極あるいは真性特異点として持つ関数 \(f(z)\) を以下の冪級数に展開することができる. これを \(z=a\) まわりの Laurent 級数展開という:

\[\begin{gathered} f(z) = ∑_{n=-∞}^∞ A_n (z-a)^n = ⋯ + \frac{A_{-1}}{z-a} + A_0 + A_1 (z-a) + ⋯, \\ A_n = \frac1{2πi} ∮_C \d{ζ} \frac{f(ζ)}{(ζ-a)^{n+1}}. \end{gathered}\]

ただし \(z=a\) を中心として \(f(z)\) が正則である円環領域 \(D\) に対し, \(C\) は \(z=a\) を囲む \(D\) 内の閉曲線. \(n < 0\) 項を \(f(z)\) 主要部という.

留数定理

\(z=a\) まわりの Laurent 級数展開 \(f(z) = ∑_{n=-∞}^∞ A_n (z-a)^n\) において, \(n=-1\) の項の係数

\[\Res(a) := A_{-1} = \frac1{2πi} ∮_C \d{z} f(z)\]

留数 residual といい, 次の留数定理が成立: \(f(z)\) が閉曲線 \(C\) 内で有限個の特異点 \(a_1,…,a_N\) を除いて正則であるとき,

\[∮_C \d{z} f(z) = 2πi ∑_{n=1}^N \Res(a_n).\]

実際, 特異点を \(z=a_n\) のみ含む閉曲線 \(C_n\) に対し, 留数の定義から

\[∮_{C_n} \d{z} f(z) = 2πi \Res(a_n).\]

\(C\) および \(\overline{C_1},…,\overline{C_N}\) を巡り, 内部が正則であるような閉曲線 \(C'\) を考えると, Cauchy の積分定理より

\[\begin{gathered} ∮_{C'} \d{z} f(z) = ∮_C \d{z} f(z) + ∑_{n=1}^N ∮_{\overline{C_n}} \d{z} f(z) = 0. \\ ∴ ∮_C \d{z} f(z) = ∑_{n=1}^N ∮_{C_n} \d{z} f(z) = 2πi ∑_{n=1}^N \Res(a_n). \end{gathered}\]

留数の求め方の例

\(z=a\) で正則な関数 \(g(z)\) に対し, 以下の \(f(z)\) は \(z=a\) で特異点を持つ. このとき, \(f(z)\) の留数 \(\Res(a)\) の求め方は以下:

\[\begin{aligned} f(z) &= \frac{1}{(z-a)^n} ∑_{m=0}^N \frac{g^{(m)}(a)}{m!} (z-a)^{m} \\ &= \frac{1}{z-a} ∑_{m=0}^N \frac{g^{(m)}(a)}{m!} (z-a)^{m-(n-1)} \end{aligned}\]

より, \(m = n-1\) の項は留数:

\[\Res(a) = \frac{g^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}.\]

特に \(n=1, 2\) のとき

\[\begin{aligned} f(z) &= \frac{g(z)}{z-a} & ⇒ \quad \Res(a) &= g(a), \\ f(z) &= \frac{g(z)}{(z-a)^2} & ⇒ \quad \Res(a) &= g'(a). \end{aligned}\] \[\begin{aligned} f(z) &= \frac{g(z)}{∑_{n=1}^N h^{(n)}(a) \ (z-a)^n / n!} \\ &= \frac1{z-a} \frac{g(z)}{∑_{n=1}^N h^{(n)}(a) \ (z-a)^{n-1} / n!}. \end{aligned}\]

したがって分母の総和の \(n=1\) 項は留数:

\[\Res(a) = \frac{g(z)}{h'(a)}.\]

定積分への応用

一致の定理と解析接続

2 関数 \(f(z)\), \(g(z)\) がどちらも領域 \(D\) で正則で, \(D\) の部分領域 \(D_0\) において \(f(z) = g(z)\) であるとき, \(D\) においても \(f(z) = g(z)\) である. これを一致の定理という. 実際, \(h(z) := f(z) - g(z)\) の Tayler 展開の係数 \(\{A_n\}\) を考えると, \(D_0\) 内の点まわりでの Tayler 展開では \(h(z) = 0\) より \(\{A_n = 0\}\). したがって \(D_0\) 外の点でも \(f(z) = g(z)\) である.

領域 \(D_0\) で定義された関数 \(f_0(z)\) に対し, \(D_0\) を含む領域 \(D\) で \(f_0(z)\) が正則かつ, 同様に正則な \(f(z)\) が \(D_0\) で \(f_0(z) = f(z)\) であるとき, \(f(z)\) を \(D\) への \(f_0(z)\) の解析接続 analytic continuation という. \(f(z)\) が存在すればただ一つである. 実際, \(f_0(z)\) に対し \(D_0\) で一致する関数が複数存在する場合も, 一致の定理よりそれらは \(D\) において同一の関数である.

解析接続の例

\[\begin{aligned} Γ(z+1) &= ∫_0^∞ \d{x} x^z e^{-x} \\ &= \bqty{-x^ze^{-x}}_0^∞ + z ∫_0^∞ \d{x} x^{z-1} e^{-x} \\ &= z Γ(z). \end{aligned}\]
ca.md

Fourier 変換と Laplace 変換

Fourier 級数

区間 \((-L, L)\) で区分的に連続な周期 \(2L\) の関数 \(f(x)\) は以下の冪級数に展開することができる. これを Fourier 級数 Fourier series という:

\[\begin{gathered} f(x) = \frac{a_0}2 + ∑_{n=1}^∞ \pqty{a_n \cos \frac{nπx}L + b_n \sin \frac{nπx}L}, \\ a_n = \frac1L ∫_{-L}^L \d{x} f(x) \cos \frac{nπx}L, \\ b_n = \frac1L ∫_{-L}^L \d{x} f(x) \sin \frac{nπx}L. \\ \end{gathered}\]
foulap.md

汎関数

ここでは定義域が関数であるような関数を汎関数 functional とする. 例えば, \(F:(A→B)→C\) など. このとき, \(φ:A→B\) を用いて \(F[φ(x)]∈C\) と書く. ただし表記中 \(x∈A\) は「ダミー」であって, 汎関数の定義中で用いられる文字である. 単に \(F[φ]\) とも略記される. この文章中では, ダミー変数を添字にした \(F_x[φ]\), \(F_{x∈A}[φ]\) も用いる1. \(F[φ(x)]\) が汎関数であるとき, 通常の関数 \(g:C→D\) を用いた \(g(F[φ(x)])\) もまた汎関数である.

以下では物理学において頻出する汎関数の基本的な計算方法についてまとめる. 数学的な厳密性は一切考慮していない. 高校微積分程度の理解を目指している2. また, 独自の解釈も多く含んでいるので参考程度に読んでほしい.

汎関数の考え方

例として関数 \(φ:[a,b]→ℝ\) の汎関数 \(F[φ(x)]\) を考える. \(I\) の分割 \(a = x_0 < ⋯ < x_N = b\) に対し, 関数値を \(φ_n := φ(x_n)\) として, 汎関数 \(F[φ(x)]\) はある関数 \(f_N(φ_0,…,φ_N)\) の分割数 \(N\) を極限まで増やしたものと見做すことができる. たとえば積分 \(\displaystyle F[φ(x)] = ∫_a^b \d{x} φ(x)\) では, 分割幅を \(Δx_n := x_n - x_{n-1}\) として, Riemann 積分の考え方を用いれば3,

\[\begin{gathered} f_N(φ_0,…,φ_N) = ∑_{n=1}^{N} Δx_n × φ(x_n) \\ \overset{N→∞}{⟶} \quad F[φ(x)] = ∫_a^b \d{x} φ(x). \end{gathered}\]

または, 等間隔な分割 \(\displaystyle x_n := a + \frac{n(b-a)}{N}\), 分割幅 \(\displaystyle Δx := \frac{b-a}{N}\) に対し, 例えば \(φ(x) := x^2\) とすると,

\[\begin{gathered} f_N(x_0^2,…,x_N^2) = ∑_{n=1}^{N} \Delta{x} × x_n^2 \\ \overset{N→∞}{⟶} \quad F[x^2] = ∫_a^b \d{x} x^2. \end{gathered}\]

このような汎関数の離散的な表現を考えることも重要である. 特に, 汎関数積分の計算においては離散表現が必須である.

汎関数の例

以下は汎関数である:

  1. 積分

    \[\begin{gathered} i_N(φ_0,…,φ_N) = ∑_{n=1}^N Δx × g(φ_n) \\ \overset{N→∞}{⟶} \quad I[φ(x)] = ∫ \d{x} g(φ(x)). \end{gathered}\]
  2. 代入

    \[\begin{gathered} s(φ_0,…,φ_N;x_m=x') = ∑_{n=1}^N Δx × φ_n \frac{δ_{nm}}{Δx} = φ_m \\ \overset{N→∞}{⟶} \quad S[φ(x)](x') = ∫ \d{x} φ(x) δ(x-x') = φ(x'). \end{gathered}\]

    汎関数中のデルタ関数 \(δ(x-x')\) は, 離散表現の \(\displaystyle \frac{δ_{nm}}{Δx}\) に対応している.

  3. Fourier 変換

    \[\begin{gathered} f_N(φ_0,…,φ_N;k_m) = ∑_{n=1}^N \frac{Δx}{\sqrt{2π}} × φ_n e^{-ik_mx_n} \\ \overset{N→∞}{⟶} \quad \mathcal{F}[φ(x)](k) = ∫ \frac{\d{x}}{\sqrt{2π}} φ(x) e^{-ikx}. \end{gathered}\]
  4. Fourier 逆変換

    \[\begin{gathered} f^{\text{``$\scriptstyle-1$''}}_N(\~φ_0,…,\~φ_N;x_n) = ∑_{m=1}^N \frac{Δk}{\sqrt{2π}} × \~φ_m e^{ik_mx_n} \\ \overset{N→∞}{⟶} \quad \mathcal{F}^{-1}[\~φ(k)](x) = ∫ \frac{\d{k}}{\sqrt{2π}} \~φ(k) e^{ikx}; \end{gathered}\]

    実際, \(\mathcal{F}^{-1}[\mathcal{F}[φ(\~x)](k)](x) = φ(x)\).

  5. 汎関数のダミー変数を関数にしたもの

    \[\begin{gathered} g_N(x_0,…,x_N) = f_N(φ_0,…,φ_N) \\ \overset{N→∞}{⟶} \quad G_t[x] := F_{x(t)}[φ]. \end{gathered}\]

    ただし, \(x_n = x(t_n)\). 例えば \(\displaystyle F_x[φ] := ∫\d{x} φ(x)\) に対して,

    \[\begin{gathered} g_N(x_0,…,x_N) = f_N(φ_0,…,φ_N) = ∑_{n=1}^N Δx × φ_n = ∑_{n=1}^N Δt × \frac{Δx}{Δt} φ(x_n) \\ \overset{N→∞}{⟶} \quad G_t[x] = F_{x(t)}[φ] = ∫\d{x(t)} φ(x(t)) = ∫\d{t} \dv{x}{t} φ(x(t)). \end{gathered}\]

汎関数微分

汎関数 \(F[φ(x)]\) の点 \(y\) における汎関数微分 functional derivative は, 以下で定義される:

\[\fdv{F[φ(x)]}{φ(y)} := \lim_{h→0} \frac{F[φ(x) + hδ(x-y)] - F[φ(x)]}{h}.\]

物理では汎関数微分を変分とも呼び, 単に \(\displaystyle \fdv{F[φ]}{φ}\) とも略記される.

汎関数微分の離散的な表現は, \(y=x_m\) として, 定義から

\[\begin{aligned} \quad&\ \lim_{h→0} \frac{\displaystyle f_N\pqty{φ_1+h\frac{δ_{1m}}{Δx},…,φ_N+h\frac{δ_{Nm}}{Δx}} - f_N(φ_1,…,φ_N)}{h} \\ =&\ \frac1{Δx} \lim_{h→0} \frac{f_N(φ_1,…,φ_m+h/Δx,…,φ_N) - f_N(φ_1,…,φ_N)}{h/Δx} \\ =&\ \frac1{Δx} \pdv{f_N}{φ_m}. \end{aligned}\]

したがって, 汎関数微分演算子 \(\displaystyle \fdv{}{φ(y)}\) に対応する離散表現は \(\displaystyle \frac1{Δx} \pdv{}{φ_m}\) である.

汎関数微分の計算例

以下の汎関数 \(F[φ(x)]\) について汎関数微分 \(\displaystyle \fdv{F[φ(x)]}{φ(y)}\) を計算する:

  1. \(\displaystyle F[φ(x)] = ∫ \d{x} g(x) φ(x)\):

    \[\begin{aligned} &\ \fdv{}{φ(y)} ∫ \d{x} g(x) φ(x) \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \bqty{∫ \d{x} g(x) (φ(x) + hδ(x-y)) - ∫ \d{x} g(x) φ(x)} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h ∫ \d{x} g(x) hδ(x-y) \\ =&\ ∫ \d{x} g(x) δ(x-y) = g(y). \end{aligned}\]

    離散表現では, \(y=x_m\) として,

    \[\frac1{Δx} \pdv{}{φ_m} ∑_{n=1}^N Δx × g(x_n) φ_n = g(x_m).\]
  2. \(F[φ(x)] = φ(x')\):

    \[\fdv{φ(x')}{φ(y)} = \fdv{}{φ(y)} ∫ \d{z} φ(z) δ(x'-z) = δ(x'-y).\]

    離散表現では, \(y=x_m\), \(x'=x_k\) として,

    \[\frac1{Δx} \pdv{}{φ_m} ∑_{n=1}^N Δx × φ_n \frac{δ_{nk}}{Δx} = \frac{δ_{mk}}{Δx}.\]
  3. \(\displaystyle F[φ(x)] = ∫ \d{x} g(φ(x))\):

    \[\begin{aligned} &\ \fdv{}{φ(y)} ∫ \d{x} g(φ(x)) \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \bqty{∫ \d{x} g(φ(x) + hδ(x-y)) - ∫ \d{x} g(φ(x))} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \qty{∫ \d{x} \bqty{h \dv{g(φ(x))}{φ(x)} δ(x-y) + O(h^2)}} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \bqty{h \dv{g(φ(y))}{φ(y)} + O(h^2)} \\ =&\ \dv{g(φ(y))}{φ(y)}. \end{aligned}\]

    離散表現では, \(y=x_m\) として,

    \[\frac1{Δx} \pdv{}{φ_m} ∑_{n=1}^N Δx × g(φ_n) = \dv{g(φ_m)}{φ_m}.\]
  4. \(\displaystyle F[φ(x)] = ∫ \d{x} g\pqty{φ'(x)}\):

    \[\begin{aligned} &\ \fdv{}{φ(y)} ∫ \d{x} g\pqty{φ'(x)} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \bqty{∫ \d{x} g\pqty{\dv{\qty{φ(x) + hδ(x-y)}}{x}} - ∫ \d{x} g\pqty{\dv{φ(x)}{x}}} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \bqty{∫ \d{x} g\pqty{\dv{φ(x)}{x} + h\dv{δ(x-y)}{x}} - ∫ \d{x} g\pqty{\dv{φ(x)}{x}}} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \qty{∫ \d{x} \bqty{h \dv{g(\d{φ(x)}/\d{x})}{(\d{φ(x)}/\d{x})} \dv{δ(x-y)}{x} + O(h^2)}} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \qty{∫ \d{x} \bqty{- h \dv{}{x} \dv{g(\d{φ(x)}/\d{x})}{(\d{φ(x)}/\d{x})} δ(x-y) + h \dv{}{t} \pqty{\dv{g(\d{φ(x)}/\d{x})}{(\d{φ(x)}/\d{x})} δ(x-y)} + O(h^2)}} \\ &\ (∵\text{部分積分}) \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \bqty{- h \dv{}{y} \dv{g(\d{φ(y)}/\d{y})}{(\d{φ(y)}/\d{y})} + h ∫ \d{\pqty{\dv{g(\d{φ(x)}/\d{x})}{(\d{φ(x)}/\d{x})} δ(x-y)}} + O(h^2)} \\ =&\ - \dv{}{y} \dv{g(\d{φ(y)}/\d{y})}{(\d{φ(y)}/\d{y})} + ∫ \d{\pqty{\dv{g(\d{φ(x)}/\d{x})}{(\d{φ(x)}/\d{x})} δ(x-y)}} \\ =&\ - \dv{}{y} \dv{g(φ'(y))}{φ'(y)} + ∫ \d{\pqty{\dv{g(φ'(x))}{φ'(x)} δ(x-y)}}. \end{aligned}\]

    特に \(y\) が積分範囲の内部にあるとき, 発散項を消すことができて,

    \[\fdv{}{φ(y)} ∫ \d{x} g\pqty{φ'(x)} = - \dv{}{y} \dv{g(φ'(y))}{φ'(y)}.\]

    離散表現では, \(y=x_m\) として,

    \[\begin{aligned} \frac1{Δx} \pdv{}{φ_m} ∑_{n=1}^N Δx × g\pqty{\frac{φ_n-φ_{n-1}}{Δx}} &= - \frac{\displaystyle g'\pqty{\frac{φ_{m+1}-φ_{m}}{Δx}} - g'\pqty{\frac{φ_m-φ_{m-1}}{Δx}}}{Δx}. \end{aligned}\]
  5. \(\displaystyle F[φ(x)] = ∫ \d{x} g\pqty{φ(x),φ'(x)}\):
    上の例を繰り返し使うことで,

    \[\fdv{}{φ(y)} ∫ \d{x} g\pqty{φ(x),φ'(x)} = \pdv{g}{φ(y)} - \dv{}{y} \pdv{g}{φ'(y)} + ∫ \d{\pqty{\pdv{g}{φ'(x)} δ(x-y)}},\]

    あるいは, \(y\) が積分範囲の内部にあるとき,

    \[\fdv{}{φ(y)} ∫ \d{x} g\pqty{φ(x),φ'(x)} = \pdv{g}{φ(y)} - \dv{}{y} \pdv{g}{φ'(y)}.\]

汎関数冪級数

連続な汎関数は Tayler 級数に相当する以下の冪級数に展開することができる. これを Volterra 級数 Volterra series という: 微小な関数 \(η(x)\) を用いて,

\[\begin{aligned} F[φ(x) + η(x)] &= F[φ(x)] + ∫ \d{y} \fdv{F[φ(x)]}{φ(y)} η(y) \\ & \qquad\qquad\quad + \frac12 ∫ \d{y_1} ∫ \d{y_2} \frac{δ^2F[φ(x)]}{δφ(y_1) δφ(y_2)} η(y_1) η(y_2) + ⋯ \\ &= ∑_{n = 0}^∞ \frac1{n!} ∫ \d{y_1} ⋯ ∫ \d{y_n} \frac{δ^n F[φ(x)]}{δφ(y_1)⋯δφ(y_n)} η(y_1)⋯η(y_n). \end{aligned}\]

特に, \(φ=0\) まわりの冪展開は,

\[\begin{aligned} F[φ(x)] &= F[0] + ∫ \d{y} \left. \fdv{F[φ(x)]}{φ(y)} \right|_{φ=0} φ(y) + \frac12 ∫ \d{y_1} ∫ \d{y_2} \left. \frac{δ^2F[φ(x)]}{δφ(y_1) δφ(y_2)} \right|_{φ=0} φ(y_1) φ(y_2) + ⋯ \\ &= ∑_{n = 0}^∞ \frac1{n!} ∫ \d{y_1} ⋯ ∫ \d{y_n} \left. \frac{δ^n F[φ(x)]}{δφ(y_1)⋯δφ(y_n)} \right|_{φ=0} φ(y_1)⋯φ(y_n). \end{aligned}\]

汎関数冪級数の離散表現は,

\[\begin{aligned} &\ f_N(φ_0+η_0,…,φ_N+η_N) \\ =&\ f_N(φ_0,…,φ_N) + ∑_{m=0}^N Δx \frac1{Δx}\pdv{f_N}{φ_m} η_m + \frac12 ∑_{{m_1}=0}^N Δx ∑_{{m_2}=0}^N Δx \frac1{(Δx)^2} \frac{∂^2f_N}{∂φ_{m_1}∂φ_{m_2}} η_{m_1} η_{m_2} + ⋯ \\ =&\ ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} ∑_{{m_1}=0}^N Δx ⋯ ∑_{{m_n}=0}^N Δx \frac1{(Δx)^n} \frac{∂^nf_N(φ_0,…,φ_N)}{∂φ_{m_1}⋯∂φ_{m_n}} η_{m_1} ⋯ η_{m_n}. \end{aligned}\]

この表現は関数 \(f_N(φ_0+η_0,…,φ_N+η_N)\) の \((φ_0,…,φ_N)\) まわりでの Taylor 展開になっている.

\(n\) 階汎関数微分 \(\displaystyle \frac{δ^n F[φ(x)]}{δφ(y_1)⋯δφ(y_n)}\) が \(y_1,…,y_n\) について対称であると仮定して, \(\displaystyle \fdv{{}^n F}{φ^n}\) と略記する. また,

\[\fdv{{}^n F}{φ^n} * η^n := ∫ \d{y_1} ⋯ ∫ \d{y_n} \frac{δ^n F[φ(x)]}{δφ(y_1)⋯δφ(y_n)} η(y_1)⋯η(y_n)\]

とすると, Volterra 級数は以下のように書き直せる:

\[F[φ(x) + η(x)] = ∑_{n = 0}^∞ \frac1{n!} \fdv{{}^n F}{φ^n} * η^n.\]

冪級数を用いた計算例

  1. \(\displaystyle \fdv{{}^n F}{φ^n} * η^n\) の \(η(y)\) による汎関数微分:

    \[\begin{aligned} &\ \fdv{}{η(y)} \pqty{\fdv{{}^n F}{φ^n} * η^n} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \left[∫ \d{y_1} ⋯ ∫ \d{y_n} \frac{δ^n F[φ(x)]}{δφ(y_1)⋯δφ(y_n)} [η(y_1)+hδ(y_1-y)]⋯[η(y_n)+hδ(y_n-y)]\right. \\ &\qquad\qquad\quad - \left.∫ \d{y_1} ⋯ ∫ \d{y_n} \frac{δ^n F[φ(x)]}{δφ(y_1)⋯δφ(y_n)} η(y_1)⋯η(y_n)\right] \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \bqty{∑_{i=0}^n ∫ \d{y_1} ⋯ ∫ \d{y_n} \frac{δ^n F[φ(x)]}{δφ(y_1)⋯δφ(y_n)} η(y_1)⋯\widehat{η(y_i)}⋯η(y_n) hδ(y_i-y) + O(h^2)} \\ =&\ ∑_{i=0}^n ∫ \d{y_1} ⋯ ∫ \d{y_n} \frac{δ^n F[φ(x)]}{δφ(y_1)⋯δφ(y_n)} η(y_1)⋯\widehat{η(y_i)}⋯η(y_n) δ(y_i-y) \\ =&\ n ∫ \d{y_1} ⋯ ∫ \d{y_{n-1}} \frac{δ^n F[φ(x)]}{δφ(y)δφ(y_1)⋯δφ(y_{n-1})} η(y_1)⋯η(y_{n-1}) \\ =&\ n \fdv{}{φ(y)} \pqty{\fdv{{}^{n-1} F}{φ^{n-1}}} * η^{n-1} \quad \pqty{\text{$\displaystyle =: n \fdv{{}^{n} F}{φ^{n}} * η^{n-1}$ とも書く}}. \end{aligned}\]
  2. \(g(F[φ(x)])\) の汎関数微分:

    \[\begin{aligned} &\ \fdv{g(F[φ(x)])}{φ(y)} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \bqty{g(F[φ(x) + hδ(x-y)]) - g(F[φ(x)])} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \bqty{g \pqty{F[φ(x)] + ∫ \d{z} \fdv{F[φ(x)]}{φ(z)} hδ(z-y) + O(h^2)} - g(F[φ(x)])} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \bqty{g \pqty{F[φ(x)] + h \fdv{F[φ(x)]}{φ(y)} + O(h^2)} - g(F[φ(x)])} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \bqty{h \dv{g(F[φ(x)])}{F[φ(x)]} \fdv{F[φ(x)]}{φ(y)} + O(h^2)} \\ =&\ \dv{g(F[φ(x)])}{F[φ(x)]} \fdv{F[φ(x)]}{φ(y)}. \end{aligned}\]
  3. \(x\) の積分で定義される汎関数 \(F[φ(x, t)]\) に対し, 微分 \(\displaystyle \dv{}{t}F[φ(x, t)]\):

    \[\begin{aligned} &\ \dv{}{t}F[φ(x, t)] \\ =&\ \lim_{h→0} \frac{F[φ(x, t + h)] - F[φ(x, t)]}{h} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \qty{F\bqty{φ(x, t) + h \pdv{φ(x, t)}{t} + O(h^2)} - F[φ(x, t)]} \\ =&\ \lim_{h→0} \frac1h \qty{F\bqty{φ(x, t)} + h ∫ \d{y} \fdv{F[φ(x)]}{φ(y)} \pdv{φ(y, t)}{t} + O(h^2) - F[φ(x, t)]} \\ =&\ ∫ \d{y} \fdv{F[φ(x, t)]}{φ(y, t)} \pdv{φ(y, t)}{t}. \\ \end{aligned}\]
  4. 微小変換 \(x(t)↦x'(t)=x(t)+δx(t)\) に対し \(φ(x(t))↦φ'(x'(t))=φ(x(t))+δφ(x(t))\) と変換されるとき, 汎関数 \(F_{x'(t)}[φ']\) を 1 次まで展開することを考える. 汎関数 \(F_{x(t)}[φ']\) をパラメータ \(x(t)\) に関する汎関数 \(G_t[x]:=F_{x(t)}[φ']\) と見れば \(δx(t)\) の 1次で展開することができ,

    \[\begin{aligned} &\ F_{x'(t)}[φ'] \\ =&\ F_{x(t)+δx(t)}[φ'] \\ &\ \pqty{= G_t[x+δx] = G_t[x] + ∫\d{x_0} \fdv{G_t[x]}{x(t_0)} δx(t_0)} \\ =&\ F_{x(t)}\bqty{φ'} + ∫\d{t_0} \fdv{F_{x(t)}\bqty{φ'}}{x(t_0)} δx(t_0) \\ =&\ F_{x(t)}\bqty{φ+δ^Lφ} + ∫\d{t_0} \fdv{F_{x(t)}\bqty{φ+δ^Lφ}}{x(t_0)} δx(t_0) \\ =&\ F_{x(t)}\bqty{φ+δ^Lφ} + ∫\d{t_0} \fdv{F_{x(t)}\bqty{φ}}{x(t_0)} δx(t_0). \\ \end{aligned}\]

    ただし, \(δ^Lφ(x(t))\) は Lie 微分である:

    \[δ^Lφ(x(t)) := φ'(x(t)) - φ(x(t)) = δφ(x(t)) - \dv{φ(x(t))}{x(t)} δx(t).\]

    次に \(F_{x(t)}[φ']\) を 1 次で展開して,

    \[\begin{aligned} &\ F_{x(t)}[φ+δ^Lφ] \\ =&\ F_{x(t)}[φ] + ∫\d{x(t_0)} \fdv{F_{x(t)}[φ]}{φ(x(t_0))} δ^Lφ(x(t_0)) \\ =&\ F_{x(t)}[φ] + ∫\d{x(t_0)} \fdv{F_{x(t)}[φ]}{φ(x(t_0))} δφ(x(t_0)) - ∫\d{x(t_0)} \fdv{F_{x(t)}[φ]}{φ(x(t_0))} \dv{φ(x(t_0))}{x(t_0)} δx(t_0) \\ =&\ F_{x(t)}[φ] + ∫\d{x(t_0)} \fdv{F_{x(t)}[φ]}{φ(x(t_0))} δφ(x(t_0)) - ∫\d{t_0} \fdv{F_{x(t)}[φ]}{φ(x(t_0))} \dv{φ(x(t_0))}{t_0} δx(t_0). \\ \end{aligned}\]

    これを前の式に代入すれば, \(F_{x'(t)}[φ']\) の 1 次の展開が得られる:

    \[\begin{aligned} F_{x'(t)}[φ'] &= F_{x(t)}[φ] + ∫\d{x(t_0)} \fdv{F_{x(t)}[φ]}{φ(x(t_0))} δ^Lφ(x(t_0)) + ∫\d{t_0} \fdv{F_{x(t)}[φ]}{x(t_0)} δx(t_0) \\ &= F_{x(t)}[φ] + ∫\d{x(t_0)} \fdv{F_{x(t)}[φ]}{φ(x(t_0))} δφ(x(t_0)) \\ & \qquad\qquad + ∫\d{t_0} \bqty{\fdv{F_{x(t)}[φ]}{x(t_0)} - \fdv{F_{x(t)}[φ]}{φ(x(t_0))} \dv{φ(x(t_0))}{t_0}} δx(t_0). \\ \end{aligned}\]

汎関数積分

\(x∈[a,b]\) の関数上で定義される \(F[φ(x)]\) の汎関数積分 functional integration は, 以下で定義される:

\[\begin{aligned} ∫ \mathcal{D}φ(x) F[φ(x)] &:= \frac1{θ} \pqty{∏_{x∈[a,b]} ∫ \d{φ(x)}} F[φ(x)] \\ &:= \lim_{N→∞} \frac1{θ(N)} ∫ \d{φ_0} ⋯ ∫ \d{φ_N} f_N(φ_0,…,φ_N). \end{aligned}\]

ただし, \(θ\) は有限値に収束させるための正規化因子, \(f_N(φ_0,…,φ_N)\) は \(F[φ(x)]\) の離散表現である. 単に \(∫ \mathcal{D} φ F[φ]\) とも略記される.

\(\varphi(x)\) の端を固定した汎関数積分も重要である:

\[\begin{aligned} ∫_{φ_0}^φ \mathcal{D}φ(x) F[φ(x)] &:= \left. \frac1{θ} \pqty{∏_{x∈(a,b)} ∫ \d{φ(x)}} F[φ(x)] \right|_{φ(a)=φ_0}^{φ(b)=φ} \\ &:= \lim_{N→∞} \frac1{θ(N)} ∫ \d{φ_1} ⋯ ∫ \d{φ_{N-1}} f_N(φ_0,φ_1,…,φ_{N-1},φ). \end{aligned}\]

これは, 端点を固定した経路の経路上各点について積分した積になっていることから, 経路積分とも呼ばれる.

汎関数積分の計算例

  1. \(\displaystyle F[φ(x)] = \exp \bqty{i ∫_a^b \d{x} \frac{A}2 \qty{φ(x)}^2}\) の汎関数積分 \(\displaystyle I(φ) = ∫_{φ_0}^φ \mathcal{D}φ(x) F[φ(x)]\), ただし \(\displaystyle ∫ \d{φ} I(φ) = 1\) として正規化:
    \(F[φ(x)]\) の離散表現は,

    \[f_N(φ_0,φ_1,…,φ_{N-1},φ) = \exp \bqty{i ∑_{n=1}^N Δx × \frac{A}2 φ_n^2}_{φ_0=φ_0}^{φ_N=φ}.\]

    ただし, 分割幅を \(Δx := (b-a)/N\) とした. したがって \(F[φ(x)]\) の汎関数積分は,

    \[\begin{aligned} I(φ) &= ∫_{φ(a)=φ_0}^{φ(b)=φ} \mathcal{D}φ(x) \exp \bqty{i ∫_a^b \d{x} \frac{A}2 \qty{φ(x)}^2} \\ &= \lim_{N→∞} \frac1{θ(N)} ∫ \d{φ_1} ⋯ ∫ \d{φ_{N-1}} \exp \bqty{i ∑_{n=1}^N Δx × \frac{A}2 φ_n^2}_{φ_0=φ_0}^{φ_N=φ} \\ &= \lim_{N→∞} \frac1{θ(N)} \exp \bqty{i Δx × \frac{A}2 φ^2} ∏_{n=1}^{N-1} ∫ \d{φ_n} \exp \bqty{i \frac{AΔx}2 φ_n^2} \\ & \quad \pqty{∫ \d{x} \exp \pqty{-iax^2} = \sqrt{\frac{π}{ia}}} \\ &= \lim_{N→∞} \frac1{θ(N)} \pqty{\frac{2πi}{AΔx}}^{(N-1)/2} \exp \bqty{i \frac{AΔx}2 φ^2}. \\ \end{aligned}\]

    ここで, 定数 \(C\) を用いて \(\displaystyle θ(N) = \frac1C\pqty{\frac{2πi}{AΔx}}^{N/2}\) とすれば,

    \[\begin{aligned} I(φ) &= \lim_{N→∞} C \pqty{\frac{AΔx}{2πi}}^{N/2} \pqty{\frac{2πi}{AΔx}}^{(N-1)/2} \exp \bqty{i \frac{AΔx}2 φ^2} \\ &= \lim_{N→∞} C \sqrt{\frac{AΔx}{2πi}} \exp \bqty{i \frac{AΔx}2 φ^2}. \\ \end{aligned}\]

    正規化条件より定数 \(C\) を決定すると,

    \[1 = ∫ \d{φ} I(φ) = \lim_{N→∞} C ∫ \d{φ} \sqrt{\frac{AΔx}{2πi}} \exp \bqty{i \frac{AΔx}2 φ^2} = C.\]

    したがって,

    \[I(φ) = \lim_{N→∞} \sqrt{\frac{AΔx}{2πi}} \exp \bqty{i \frac{AΔx}2 φ^2} = \lim_{N→∞} \sqrt{\frac{A(b-a)}{2πiN}} \exp \bqty{i \frac{A(b-a)}{2N} φ^2}.\]
  2. \(\displaystyle F[φ(x)] = \exp \bqty{i ∫_a^b \d{x} \frac{A}2 \qty{φ'(x)}^2}\) の汎関数積分 \(\displaystyle I(φ) = ∫_{φ_0}^φ \mathcal{D}φ(x) F[φ(x)]\), ただし \(\displaystyle ∫ \d{φ} I(φ) = 1\) として正規化:
    \(F[φ(x)]\) の離散表現は,

    \[f_N(φ_0,φ_1,…,φ_{N-1},φ) = \exp \bqty{i ∑_{n=1}^N Δx × \frac{A}2 \pqty{\frac{φ_n - φ_{n-1}}{Δx}}^2}_{φ_0=φ_0}^{φ_N=φ}.\]

    ただし, 分割幅を \(Δx := (b-a)/N\) とした. したがって \(F[φ(x)]\) の汎関数積分は,

    \[\begin{aligned} I(φ) &= ∫_{φ(a)=φ_0}^{φ(b)=φ} \mathcal{D}φ(x) \exp \bqty{i ∫_a^b \d{x} \frac{A}2 \qty{φ'(x)}^2} \\ &= \lim_{N→∞} \frac1{θ(N)} ∫ \d{φ_1} ⋯ ∫ \d{φ_{N-1}} \exp \bqty{i ∑_{n=1}^N Δx × \frac{A}2 \pqty{\frac{φ_n - φ_{n-1}}{Δx}}^2}_{φ_0=φ_0}^{φ_N=φ} \\ &= \lim_{N→∞} \frac1{θ(N)} ∫ \d{φ_1} ⋯ ∫ \d{φ_{N-1}} \exp \bqty{\frac{iA}{2Δx} ∑_{n=1}^N (φ_n - φ_{n-1})^2}_{φ_0=φ_0}^{φ_N=φ} \\ &= \lim_{N→∞} \frac1{θ(N)} ∫ \d{φ_1} ⋯ ∫ \d{φ_{N-1}} \exp \qty{\frac{iA}{2Δx} \bqty{(φ - φ_{N-1})^2 + ∑_{k=1}^{N-1} (φ_{N-k} - φ_{N-(k+1)})^2}}_{φ_0=φ_0}. \end{aligned}\]

    ここで \(φ_{N-k}\) の積分について考えると,

    \[\begin{aligned} & ∫ \d{φ_{N-k}} \exp \qty{\frac{iA}{2Δx} \bqty{\frac1k (φ - φ_{N-k})^2 + (φ_{N-k} - φ_{N-(k+1)})^2}} \\ =& ∫ \d{φ_{N-k}} \exp \qty{\frac{iA}{2Δx} \bqty{\frac{k+1}k φ_{N-k}^2 - 2 \pqty{\frac1k φ + φ_{N-(k+1)}} φ_{N-k} + \pqty{\frac1k φ^2 + φ_{N-(k+1)}^2}}} \\ =& ∫ \d{φ_{N-k}} \exp \bqty{\frac{iA}{2Δx} \frac{k+1}k φ_{N-k}^2 - \frac{iA}{2Δx} 2 \pqty{\frac1k φ + φ_{N-(k+1)}} φ_{N-k} + \frac{iA}{2Δx} \pqty{\frac1k φ^2 + φ_{N-(k+1)}^2}} \\ & \quad \pqty{∫ \d{x} \exp \pqty{-iax^2+ibx} = \sqrt{\frac{π}{ia}} \exp \pqty{\frac{ib^2}{4a}} } \\ =& \sqrt{\frac{k}{k+1}} \sqrt{\frac{2πiΔx}{A}} \exp \bqty{- \frac{iA}{2Δx} \frac{k}{k+1} (φ + φ_{N-(k+1)})^2 + \frac{iA}{2Δx} \pqty{\frac1k φ^2 + φ_{N-(k+1)}^2}} \\ =& \sqrt{\frac{k}{k+1}} \sqrt{\frac{2πiΔx}{A}} \exp \bqty{\frac{iA}{2Δx} \frac1{k+1} \pqty{φ - φ_{N-(k+1)}}^2} \end{aligned}\]

    より, \(k=1,…,N-1\) で順に積分することで,

    \[\begin{aligned} I(φ) &= \lim_{N→∞} \frac1{θ(N)} \sqrt{\frac12} \sqrt{\frac23} ⋯ \sqrt{\frac{N-1}{N}} \pqty{\sqrt{\frac{2πiΔx}{A}}}^{N-1} \exp \bqty{\frac{iA}{2NΔx} \pqty{φ - φ_0}^2} \\ &= \lim_{N→∞} \frac1{θ(N)} \frac1{\sqrt{N}} \pqty{\frac{2πiΔx}{A}}^{(N-1)/2} \exp \bqty{\frac{iA}{2NΔx} \pqty{φ - φ_0}^2}. \end{aligned}\]

    ここで, 定数 \(C\) を用いて \(\displaystyle θ(N) = \frac1C\pqty{\frac{2πiΔx}{A}}^{N/2}\) とすれば,

    \[\begin{aligned} I(φ) &= \lim_{N→∞} C \pqty{\frac{A}{2πiΔx}}^{N/2} \frac1{\sqrt{N}} \pqty{\frac{2πiΔx}{A}}^{(N-1)/2} \exp \bqty{\frac{iA}{2NΔx} \pqty{φ - φ_0}^2} \\ &= \lim_{N→∞} C \sqrt{\frac{a}{2πiNΔx}} \exp \bqty{\frac{iA}{2NΔx} \pqty{φ - φ_0}^2} \\ &= C \sqrt{\frac{A}{2πi(b-a)}} \exp \bqty{i \frac{A}2 \frac{(φ - φ_0)^2}{b-a}}. \end{aligned}\]

    正規化条件より定数 \(C\) を決定すると,

    \[1 = ∫ \d{φ} I(φ) = C ∫ \d{φ} \sqrt{\frac{A}{2πi(b-a)}} \exp \bqty{i \frac{A}2 \frac{(φ - φ_0)^2}{b-a}} = C.\]

    したがって,

    \[I(φ) = ∫_{φ(a)=φ_0}^{φ(b)=φ} \mathcal{D}φ(x) \exp \bqty{i ∫_a^b \d{x} \frac{A}2 \qty{φ'(x)}^2} = \sqrt{\frac{A}{2πi(b-a)}} \exp \bqty{i \frac{A}2 \frac{(φ - φ_0)^2}{b-a}}.\]
  3. 汎関数積分の連結:
    \(x_3>x_2>x_1\) に対し, \(x∈[x_3,x_1]\) の関数上で定義される汎関数 \(F[φ(x)]\) について,

    \[∫_{φ_1}^{φ_2} \mathcal{D}φ(x) ∫\d{φ_2} ∫_{φ_2}^{φ_3} \mathcal{D}φ(x) F[φ(x)] = ∫_{φ_1}^{φ_3} \mathcal{D}φ(x) F[φ(x)].\]

    実際,

    \[\begin{aligned} &\ ∫_{φ_1}^{φ_2} \mathcal{D}φ(x) ∫\d{φ_2} ∫_{φ_2}^{φ_3} \mathcal{D}φ(x) g(φ_2) F[φ(x)] \\ =&\ \frac1θ \pqty{∏_{x∈(t_1,t_2)} ∫\d{φ(x)}} ∫\d{φ(x_2)} \pqty{∏_{x∈(t_2,t_3)} ∫\d{φ(x)}} F[φ(x)] \\ =&\ \frac1θ \pqty{∏_{x∈(t_1,t_3)} ∫\d{φ(x)}} F[φ(x)] \quad \pqty{∵(t_1,t_2)∪\{t_2\}∪(t_2,t_3) = (t_1,t_3)} \\ =&\ ∫_{φ_1}^{φ_3} \mathcal{D}φ(x) F[φ(x)]. \\ \end{aligned}\]

    特に, 指数法則 \(F_{x∈A}[φ]F_{x∈B}[φ]=F_{x∈A∪B}[φ]\) を満たす汎関数 (例えば \(F_{x∈[a,b]}[φ] = \exp \bqty{∫_a^b \d{x} φ(x)}\)) に対しては,

    \[\begin{aligned} &\ ∫\d{φ_2} g(φ_2) \pqty{∫_{φ_1}^{φ_2} \mathcal{D}φ(x) F_{x∈[x_1,x_2]}[φ]} \pqty{∫_{φ_2}^{φ_3} \mathcal{D}φ(x) F_{x∈[x_2,x_3]}[φ]} \\ =&\ ∫_{φ_1}^{φ_3} \mathcal{D}φ(x) F_{x∈[x_1,x_3]}[φ] g(φ(x_2)). \end{aligned}\]

    実際,

    \[\begin{aligned} &\ ∫\d{φ_2} g(φ_2) \pqty{∫_{φ_1}^{φ_2} \mathcal{D}φ(x) F_{x∈[x_1,x_2]}[φ]} \pqty{∫_{φ_2}^{φ_3} \mathcal{D}φ(x) F_{x∈[x_2,x_3]}[φ]} \\ =&\ ∫_{φ_1}^{φ_2} \mathcal{D}φ(x) ∫\d{φ_2} ∫_{φ_2}^{φ_3} \mathcal{D}φ'(x) g(φ_2) F_{x∈[x_1,x_2]}[φ] F_{x∈[x_2,x_3]}[φ'] \\ =&\ ∫_{φ_1}^{φ_3} \mathcal{D}φ(x) g(φ(x_2)) F_{x∈[x_1,x_3]}[φ]. \\ \end{aligned}\]

参考文献

Footnotes

  1. \(F[φ(x)]\) という表記法は誤解を生む. たとえば, 十分に小さい \(x\) の関数 \(ε:A→A\) に対して \(F[φ(x+ε(x))]\) を考える. このとき,

    \[φ(x+ε(x)) = φ(x)+φ'(x)ε(x)\]

    であるが,

    \[F[φ(x+ε(x))] ≠ F[φ(x)+φ'(x)ε(x)]\]

    である. ダミー変数を添字にした \(F_x[φ]\) という表記法を用いれば, 不等号の理由は明らかであろう:

    \[F_{x+ε(x)}[φ] ≠ F_x[φ+φ'ε].\]
  2. それすら怪しいかもしれない. 気付いたことがあれば随時更新する.

  3. これは Riemann 積分ではなく「区分求積法」である. Riemann 和を用いるならば \(φ_n = φ(x_n)\) ではなく, 代表点 \(x_{n-1}≤ξ_n≤x_n\) を用いて \(φ_n := φ(ξ_n)\) とするべき. しかし, ここでは計算を主目的としているので, 細かいことは気にしない.

functional.md

代数学

集合 \(G\) と写像 \(μ : G × G → G\) に対して, 以下の3条件を考える.

  1. 結合律 associativity: \(μ(μ(x, y), z) = μ(x, μ(y, z))\),
  2. 単位元の存在 identity: \(∃ e ∈ G\), \(μ(x, e) = μ(e, x) = x\),
  3. 逆元の存在 inverse: \(∃ x' ∈ G\), \(μ(x, x') = μ(x', x) = e\),
  4. 可換律 commutativity: \(μ(x, y) = μ(y, x)\).

組 \((G, μ)\) あるいは単に \(G\) について, 条件1を満たすものを半群 semi-group, 条件1,2を満たすものをモノイド monoid, 条件1,2,3を満たすものを group, 条件1,2,3,4を満たすものを可換群 commutative group あるいは Abel 群 abelian group という. \(μ(x, y) =: x ⋅ y =: xy\), \(e =: 1\), \(x' =: x^{-1}\) などと表記される. また, 可換群において, \(μ(x, y) =: x + y\), \(e =: 0\), \(x' =: -x\) などと表記される.

群 \(G\) が有限集合であるとき, \(G\) を有限群 finite group という. このとき, \(G\) の濃度を \(G\) の位数 order といい, \(|G|\) と書く. 群 \(G\) が有限群でないとき, \(G\) を無限群 infinite group という.

群 \(G\) の元 \(g\) に対して, \(g^n = e\) となる \(n ∈ ℕ\) が存在するとき, \(g\) は有限位数であるといい, またこれを満たす最小の \(n\) を \(g\) の位数といい, \(\mathrm{ord}(g)\) と書く. 位数 \(n\) の \(g\) の羃乗で作られる群を巡回群という.

集合 \(X\) から \(X\) への全単射の全体は, 写像の合成に関して群をなし, これを \(X\) の自己同型群といい, \(\mathrm{Aut}(X)\) と書く.

部分群と剰余類

群 \(G\) について, 部分集合 \(H⊂G\) が群の元 \(x,y∈H\) に対して \(xy^{-1}∈H\) を満たすとき, \(H\) を \(G\) の部分群という. また, 部分集合 \(S ⊂ G\) に対して, \(S\) を含む最小の部分群を \(S\) が生成する部分群 subgroup generated by \(S\) といい, \(⟨S⟩\) と書く. 特に \(G = ⟨S⟩\) であるとき, \(S\) を \(G\) の生成系 system of generators という.

群 \(G\) の部分群 \(H\) について, \(gH := \{ gh ∣ h ∈ H \} ⊂ G\) を左剰余類 left conset という. 左剰余類の全体を \(G/H\) と書く. 同様に右剰余類 \(Hg\) とその全体 \(H \backslash G\) が定まる.

群 \(G\) の部分群 \(H\) について, 群の元 \(g ∈ G\) に対し \(gHg^{-1} = H\) を満たす \(H\) を \(G\) の正規部分群 normal subgroup といい, \(H \triangleleft G\) と書く. 群の元 \(g, g' ∈ G\) に対して, \(G/H\) 上の演算 \((gH)(g'H) := (gg')H\) によって \(G/H\) は群となる. この群を商群 quotient group という.

準同型写像

群 \(G\), \(G'\) について, 写像 \(f : G → G'\) が群の元 \(x, y ∈ G\) に対し \(f(xy) = f(x) f(y)\) を満たすとき, \(f\) を \(G\) から \(G'\) への準同型写像 homomorphism, あるいは単に準同型 hommomorohic という. また, 準同型 \(f\) が全単射であるとき, \(f\) を同型写像 isomorphism, あるいは単に同型 isomorphic といい, \(G ≃ G'\) と書く.

準同型写像 \(f : G → G'\) に対して, 部分群 \(\Im f := \{ f(x) ∈ G' ∣ x ∈ G \}\) を \(f\) の image, 部分群 \(\mathrm{Ker} f := \{ x ∈ G ∣ f(x) = e' ∈ G' \}\) を \(f\) の kernel という. また, \(\mathrm{Ker} f\) は \(G\) の正規部分群である: \(\mathrm{Ker} f \triangleleft G\). また, \(\mathrm{Coker} f := G' / \Im f\) を余核 cokernel, \(\mathrm{Coim} f := G' / \mathrm{Ker} f\) を余像 coimage という.

群の作用

群 \(G\) と集合 \(X\) について, 準同型 \(ρ : G → \mathrm{Aut} (X)\) が与えられたとき, 群 \(G\) が集合 \(X\) に左作用する \(G\) acts on \(X\) あるいは単に作用するといい, \(g ⋅ x = gx := ρ(g) (x)\) と書く. このとき, \(g, h ∈ G\), \(x ∈ X\) に対し, \(g (hx) = (gh) x\), \(ex = x\) を満たす. また, この \(X\) を左 \(G\)-集合 left \(G\)-set あるいは単に \(G\)-集合 \(G\)-set という. 同様に右作用と右 \(G\)-集合も \(x ⋅ g = xg := ρ(g) (x)\) によって定義される.

群 \(G\) の \(X\) への作用 \(G × X → X\) に対して, \(Gx := \{ gx ∣ g ∈ G \}\) を \(x\) の軌道 orbit という. また, \(G_x := \{ g ∈ G ∣ gx = x \}\) を固定化部分群 stabilizer という. このとき, \(G\) の \(G_x\) による商群と軌道 \(Gx\) は同型である: \(G / G_x ≃ Gx\).

左 \(G\)-集合 \(X\) について, \(x ∈ X\) に対して \(Gx = X\) となる作用は推移的 transitive であるという. また, \(G_x = \{ e \}\) であるとき, この作用は単一推移的 simply transitive という.

環・体

集合 \(R\) に対して, 加法 \(+\) について Abel 群, 乗法 \(⋅\) について半群で, \(x, y, z ∈ R\) に対して分配法則 \(x (y + z) = x y + x z\), \((x + y) z = x z + y z\) を満たすとき, 組 \((R, +, ⋅)\) あるいは単に \(R\) を ring という.

乗法について可換である環を可換環 commutative ring という. 乗法について群である環を斜体 skew field または可除環 division ring という. 乗法について可換群である環, つまり可換環かつ斜体である環を可換体 commutative ring または単に field という.

環 \(R\) が任意の元 \(x, y ∈ R\) について \(x, y ≠ 0\) ならば \(xy ≠ 0\) であるとき, \(R\) を整環 domain という. 聖域である可換環を特に整域 integral domain という.

部分環

環 \(R\) の加法に関する部分群 \(S\) について, \(S\) が \(R\) の乗法で閉じている, つまり任意の \(S\) の元 \(x, y ∈ S\) について \(xy ∈ S\) であるとき, \(S\) を \(R\) の部分環 subring という.

環 \(R\) 部分環 \(\{ x∈R ∣ ∀y∈R, xy=yx \}\) を \(R\) の中心といい, \(Z(R)\) と書く.

環準同型

環 \(G\), \(G'\) について, 写像 \(φ : R → R'\) が環の元 \(x, y ∈ R\) に対し \(fφ(x + y) = φ(x) + φ(y)\), \(φ(xy) = φ(x) φ(y)\) を満たすとき, \(φ\) を \(R\) から \(R'\) への環準同型写像 ring homomorphism, あるいは単に環準同型 ring hommomorohic という.

代数

環 \(R\) に対し, 環 \(S\) および環準同型 \(ρ : R → Z(S)\) の組 \((R, ρ)\) または単に \(S\) を \(R\) 上の代数 algebra または \(R\) 代数という.

体 \(K\) 上の代数 \(S\) について, \(S\) の \(K\) 上の基底 \(\{ e_μ \}\) に対し

\[e_μ e_ν = {a^λ}_{μν} e_λ\]

を満たす \({a^λ}_{μν} ∈ K\) を \(S\) の構造定数 structure constant という.

環上の加群

環 \(R\) に対し, Abel 群 \(M\) の加法 \(+\) と写像 \(λ : R × M → M\) が \(a, b ∈ R\), \(m, m' ∈ R\) に対し以下の条件を満たすとき, 組 \((M, +, λ)\) または単に \(M\) を \(R\) 上の左加群 left module over \(R\) または単に左 \(R\) 加群 left \(R\)-module, \(R\) 加群 \(R\)-module という:

  1. Abel 群の加法に対するスカラー作用の分配律: \(λ(a, m + m') = λ(a, m) + λ(a, m')\),
  2. 環の加法に対するスカラー作用の分配則: \(λ(a + b, m) = λ(a, m) + λ(a, m')\),
  3. 環の乗法とスカラー作用の両立条件: \(λ(ab, m) = λ(a, λ(b, m))\),
  4. スカラー作用の単位元の存在: \(λ(1, m) = m\).

\(R\) 上の右加群または右 \(R\)-加群も同様に定義される.

参考文献

algebra.md

線形代数学

ベクトル空間

体 \(K\) 上の加群を \(K\) 上のベクトル空間という. または, 集合 \(V\) が, 加法と呼ばれるその上の二項演算子 \(+\) と, スカラー乗法と呼ばれる体 \(K\) の \(V\) への作用 \(∘\) を持ち, \(u, v, w ∈ V\), \(a, b ∈ K\) に関して以下の公理系を満たすとき, \((V, +, ∘)\) を \(K\) 上のベクトル空間という. \(V\) をベクトル空間と呼ぶこともある. ベクトル空間 \(V\) の元をベクトルと呼ぶ.

  1. 加法の可換律: \(u + v = v + u\),
  2. 加法の結合律: \(u + (v + w) = (u + v) + w\),
  3. 加法単位元の存在: \(\exists 0 ∈ V, u + 0 = 0 + u = u\),
  4. 体の乗法とスカラーの乗法の両立条件: \(a(bu) = (ab)u\),
  5. 体の加法に対するスカラー乗法の分配律: \((a + b)u = au + bu\),
  6. 加法に対するスカラー乗法の分配律: \(a(u + v) = au + av\),
  7. スカラーの乗法の単位元の存在: \(1u = u\),
  8. 加法逆元の存在: \(\exists (-u) ∈ V, u + (-u) ∈ 0\).

ベクトル空間 \(V\) のベクトル列 \(\{ u_i \}\) の線形結合と呼ばれる \(c^i u_i\) (\(c^i ∈ K\)) について, \(c^i u_i = 0\) を満たす \(c^i\) が \(c^i = 0\) に限るとき, この \(\{ u_i \}\) は線形独立であるという. また, \(V\) の全てのベクトルが \(\{ u_i \}\) の線形結合で表されるとき, この \(\{ u_i \}\) が \(V\) を生成するという. \(V\) のベクトル列 \(\{ e_i \}\) が線形独立かつ \(V\) を生成するとき, この \(\{ e_i \}\) を \(V\) の基底という. \(V\) の基底を構成するベクトルの個数を \(V\) の次元といい \(\dim(V)\) と書く.

線形写像

\(K\) 上のベクトル空間 \(U\), \(V\) に対し, 写像 \(T : U → V\) が線形性 \(T(au + bv) = a T(u) + b T(v)\) (\(a, b ∈ K\), \(u, v ∈ U\)) を満たすとき, \(T\) を \(K\) 上の線形写像といい, その全体を \(\mathrm{Hom}_K (U, V)\) と書く. \(U\) から \(U\) 自身への線形写像の全体 \(\mathrm{End}_K (U) := \mathrm{Hom}_K (U, U)\) の元を線形変換といい, 恒等写像 \(1_U ∈ \mathrm{End}_K (U)\) を単位変換という. 線形写像の部分写像を線形作用素あるいは線形演算子という.

線形写像 \(T := \mathrm{Hom}_K (U, V)\) に対して, \(T^{-1} T = 1_U\), \(T T^{-1} = 1_V\) を満たす \(T^{-1} ∈ \mathrm{Hom}_K (V, U)\) が存在するとき, \(T\) を \(K\) 上の線形同型写像といい, \(U\) と \(V\) は \(K\) 上の線形同型という. 線形同型写像 \(T ∈ \mathrm{End}_K (U)\) を同型変換, \(T^{-1}\) を逆変換という.

線形写像 \(T := \mathrm{Hom}_K (U, V)\) に対して, \(\Im (T) = \{ T(u) ∈ V ∣ u ∈ U \}\) を \(T\) の, \(\mathrm{Ker} (T) = \{ u ∈ U ∣ T(u) = 0 ∈ V \}\) を \(T\) のという.

線形写像 \(T := \mathrm{Hom}_K (U, V)\) に対して, \(U\) の基底 \(\{ u_1, …, u_n \}\), \(V\) の基底 \(\{ v_1, …, v_m \}\) について \((T(u_1), ⋯, T(u_n)) = (v_1, ⋯, v_m) A\) と表されるとき, 行列 \(A\) を表現行列という.

線形変換 \(T ∈ \mathrm{End}_K (U)\) に対して, あるベクトル \(u ∈ U\) が \(T(u) = λ u\) を満たすとき, \(λ ∈ K\) を \(T\) の固有値, \(u\) を \(λ\) に属する \(T\) の固有ベクトルという. 異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する.

双対空間

\(K\) 上のベクトル空間 \(V\) に対し, 線形写像 \(V^{*} := \mathrm{Hom}_K (V, K)\) を双対空間といい, \(V^{*}\) の元を線形汎関数, あるいは代数的1-形式という. 双対空間はベクトル空間であり, その次元は元のベクトル空間と等しい: \(\dim (V^{*}) = \dim (V)\).

\(V\) の基底 \(\{ e_i \}\) に対して, \(e^i(e_j) = δ_{ij}\) を満たす \(V^{*}\) の基底 \(\{ e^i \}\) を \(\{ e_i \}\) の双対基底という. 線形写像 \(T ∈ \mathrm{Hom}_K (U, V)\) に対して, \((T^† (ω))(u) = ω(T(u))\) を満たす \(T^† ∈ \mathrm{Hom}_K (V^{*}, U^{*})\) を \(T\) の双対写像という. 表現行列 \(A\) を持つ線形写像 \(T\) の双対写像 \(T^†\) の表現行列は \(A^†\) である. \(A = A^†\) であるとき \(A\) を Hermite 行列あるいは自己共役行列といい, このとき \(T = T^†\) であるから \(T\) を Hermite 変換あるいは自己共役変換という.

テンソル代数

体 \(K\) 上のベクトル空間 \(V\), \(W\) の基底 \(\{ v_i \}\), \(\{ w_j \}\) について, \(v, v' ∈ V\), \(w, w' ∈ W\), \(c ∈ K\) に関して以下の双線形性を満たすテンソル積 tensor product で作られる組 \(\{ v_i ⊗ w_j \}\) を基底とするベクトル空間を \(V ⊗ W\) と書き, \(V\) と \(W\) とのテンソル積空間 tensor product space という. このとき, \(\dim (V ⊗ W) = \dim (V) ⋅ \dim (W)\).

  1. 第一引数に対する線形性: \((v + v') ⊗ w = v ⊗ w + v' ⊗ w\),
  2. 第二引数に対する線形性: \(v ⊗ (w + w') = v ⊗ w + v ⊗ w'\),
  3. スカラー倍に対する結合性: \((c v) ⊗ w = v ⊗ (c w) = c (v ⊗ w)\).

ベクトル空間列 \(\{ V_i \}\) に対し, 多重線形なテンソル積空間 \(V_1 ⊗ ⋯ ⊗ V_p\) が自然に構成される. 一つのベクトル空間 \(V\) によるテンソル積空間 \(V^{⊗ p} := \underbrace{V ⊗ ⋯ ⊗ V}_p\) と \({V^{*}}^{⊗ q}\) について, \(V^{⊗ p}\) あるいは \(V^{⊗p} ⊗ {V^{*}}^{⊗ q}\) をテンソル空間 tensor product という.

体 \(K\) 上のベクトル空間 \(V\) に対し, \(T^0(V) := K\), \(T^p(V) := V^{⊗ p}\) の直和 \(T(V) := ⨁^∞_{p=0} T^p(V)\) をテンソル代数 tensor algebra という.

外積代数

テンソル積空間 \(V^{⊗ p}\) に対し, ベクトル \(v_1, …, v_p ∈ V\) と置換群 \(S_p\) を用いて,

\[\begin{aligned} v_1 ⊙ ⋯ ⊙ v_p &:= \frac1{p!} ∑_{σ ∈ S_p} v_{σ(1)} ⊗ ⋯ ⊗ v_{σ(p)}, \\ v_1 ∧ ⋯ ∧ v_p &:= \frac1{p!} ∑_{σ ∈ S_p} \mathrm{sgn} (σ) \ v_{σ(1)} ⊗ ⋯ ⊗ v_{σ(p)}, \end{aligned}\]

と定義される積 \(⊙\) をそれぞれ対称積, \(∧\) を交代積あるいは外積という. 対称積は \(v_1 ⋯ v_p := v_1 ⊙ ⋯ ⊙ v_p\) とも書く. \(u, v ∈ V\) について, \(u ⊙ v = v ⊙ u\), \(u ∧ v = - v ∧ u\) を満たす. また, 交代 \(V\) の基底 \(\{ e_i \}\) に対し, \(\{ e_1 ⊙ ⋯ ⊙ e_p \}\) を基底とするベクトル空間 \(S^p (V)\) を \(V\) の \(p\) 次対称テンソル空間 space of symmetric tensors, \(\{ e_1 ∧ ⋯ ∧ e_p \}\) を基底とするベクトル空間 \(Λ^p (V)\) を \(V\) の \(p\) 次交代テンソル空間 space of alternating tensors という.

交代テンソル空間 \(Λ^p(V)\), \(Λ^q(V)\) について, 2つの交代テンソル空間を交代テンソル空間に移す双線形写像 \(Λ^p(V) × Λ^q(V) → Λ^{p+q}(V)\) を以下で定義する: \(Λ^p(V)\) の基底 \(\{ e_1 ∧ ⋯ ∧ e_p \}\) と \(Λ^q(V)\) の基底 \(\{ e_1 ∧ ⋯ ∧ e_q \}\) に対し, \(\displaystyle t = \frac1{p!} t^{μ_1⋯μ_p} e_{μ_1} ∧ ⋯ ∧ e_{μ_p} ∈ Λ^p(V)\), \(\displaystyle s = \frac1{q!} s^{μ_1⋯μ_q} e_{μ_1} ∧ ⋯ ∧ e_{μ_q} ∈ Λ^q(V)\) の外積は,

\[\begin{aligned} t ∧ s &= \left( \frac1{p!} t^{μ_1 ⋯ μ_p} e_{μ_1} ∧ ⋯ ∧ e_{μ_p} \right) ∧ \left( \frac1{q!} s^{μ_1 ⋯ μ_q} e_{μ_1} ∧ ⋯ ∧ e_{μ_q} \right) \\ &:= \frac1{p!q!} t^{μ_1 ⋯ μ_p} s^{μ_{p+1} ⋯ μ_{p+q}} (e_{μ_1} ∧ ⋯ ∧ e_{μ_p}) ∧ (e_{μ_{p+1}} ∧ ⋯ ∧ e_{μ_{p+q}}). \end{aligned}\]

また, \(t ∧ s = (-1)^{pq} s ∧ t\) を満たす.

体 \(K\) 上のベクトル空間 \(V\) に対して, \(Λ^0(V) := K\) と \(Λ^p(V)\) の直和 \(Λ(V) := ⨁^∞_{p=0} Λ^p(V)\) を Grassmann 代数 Grassmann algebra あるいは外積代数 exterior algebra という.

内積空間

複素数体 \(ℂ\) 上のベクトル空間 \(V\) について, 写像 \(⟨\ ,\ ⟩ : V × V → ℂ\) が \(u, v, w ∈ V\), \(a, b ∈ ℂ\) に関して以下の条件を満たすとき, この写像を内積と呼び, このとき \(V\) を内積空間と呼ぶ. 第一引数を制限した内積は \(V\) に双対である: \(u ∈ V\) に対して \(⟨u, \ ⟩ ∈ \mathrm{Hom}_ℂ (V, ℂ) = V^{*}\).

  1. 第二引数に対する線形性: \(⟨u, a v + b w⟩ = a ⟨u, v⟩ + b ⟨u, w⟩\),
  2. 共役対称性: \(⟨u, v⟩ = (⟨v, u⟩)^{*}\),
  3. 正定値性: \(⟨u, u⟩ \geq 0\),
  4. 非退化性: \(⟨u, u⟩ = 0 ⇒ u = 0\).

\(V\) の基底 \(\{ u_i \}\) が \(⟨u_i, u_j⟩ = δ_{i, j}\) を満たすとき, この \(\{ u_i \}\) を \(V\) の正規直交基底という. このとき, \(\{ ⟨u_i, \ ⟩ \}\) は \(\{ u_i \}\) の双対基底である.

線形変換 \(T ∈ \mathrm{End}_ℂ (V)\) が Hermite 変換であるとき, \(u, v ∈ V\) に対して \(⟨u, T(v)⟩ = ⟨T(u), v⟩\) を満たす.

線形変換 \(U ∈ \mathrm{End}_ℂ (V)\) が内積を不変に保つ, つまり \(u, v ∈ V\) に対して \(⟨U(u), U(v)⟩ = ⟨u, v⟩\) を満たすとき, \(U\) を unitary 変換という. 言い換えると, unitary 変換は \(U^† U = U U^† = 1_V\) あるいは \(U^† = U^{-1}\) を満たす線形変換 \(U\) である.

ブラ-ケット記法

複素数体 \(ℂ\) 上のベクトル空間 \(H\) のベクトルを \(|φ⟩\) と書き, ケットベクトルと呼ぶ. また, 双対空間 \(H^{*}\) のベクトルを \(⟨φ| := ⟨(|φ⟩), \ ⟩\) と書き, ブラベクトルと呼ぶ. これらの記法を用いて, ベクトル \(|φ⟩, |ψ⟩ ∈ H\) の内積は \(⟨φ ∣ ψ⟩\) \(⟨φ ∣ ψ⟩\) と書く. 例えば, \(H\) の基底 \(\{ |m⟩ \}\) とその双対基底 \(\{ ⟨n| \}\) は \(⟨n ∣ m⟩ = δ_{nm}\) を満たす. また, 双対写像はブラベクトルに右から作用する: \(A^† ∈ \mathrm{End}_K (H^{*})\) で \(⟨(A |φ⟩), \ ⟩ = ⟨φ| A^†\). 線形変換 \(A ∈ \mathrm{End}_ℂ (H)\) が Hermite 変換, つまり \(⟨φ| (A |ψ⟩) = (⟨φ| A) |ψ⟩\) であるとき, これを単に \(⟨A⟩{ψ}\) と書く. また, \(|φ⟩^† := ⟨φ|\), \(⟨φ|^† := |φ⟩\) と定義すれば \((A |φ⟩)^† = ⟨φ| A^†\) が得られる.

複素数体 \(ℂ\) 上のベクトル空間 \(H\) の基底 \(\{ |n⟩ \}\) に対し, 線形写像 \(|n⟩ ⟨n|\) を射影写像という: ケットベクトル \(|φ⟩ = ∑_m φ_m |m⟩\) に対し, \(|n⟩ ⟨n | φ⟩ = φ_n |n⟩\). また, \(∑_n |n⟩ ⟨n| = 1_H\) である. 線形変換 \(A ∈ \mathrm{End}_ℂ (H)\) の固有値 \(\{ a_n \}\) にそれぞれ属する固有ベクトル \(\{ |a_n⟩ \}\) はベクトル空間 \(H\) の基底であり, \(A\) は射影写像 \(|a_n⟩ ⟨a_n|\) の線形結合で表される: \(A = ∑_n a_n |a_n⟩ ⟨a_n|\).

参考文献

la.md

位相空間

位相空間

台集合と呼ばれる集合 \(X\) と開集合系と呼ばれる \(X\) の部分集合の族 \(\mathscr{U}\) に対して, 以下の条件を満たす組 \((X, \mathscr{U})\) または単に \(X\) を位相空間 topological space という. 開集合系の元を開集合という.

  1. 空集合および台集合は開集合: \(\varnothing, X ∈ \mathscr{U}\).
  2. 開集合の和もまた開集合: \(\~{\mathscr{U}} ⊂ \mathscr{U} ⇒ \bigcup_{U ∈ \tilde{\mathscr{U}}} U ∈ \mathscr{U}\).
  3. 有限個の開集合の積もまた開集合: \(U_1, …, U_n ∈ \mathscr{U} ⇒ \bigcap^n_{i = 1} U_i ∈ \mathscr{U}\).

位相空間 \(X\) の点 \(x ∈ X\) について, \(x\) を含む開集合を \(x\) の開近傍といい, \(x\) の開近傍を含む任意の集合を \(x\) の近傍という.

連続写像と同相

位相空間 \(X\), \(Y\) と 写像 \(f : X → Y\) について, \(x ∈ X\) に対し \(f(x) ∈ Y\) の近傍の \(f\) による逆像が \(x\) の近傍になるとき, \(f\) は \(x\) で連続であるという. また, \(Y\) の開集合の \(f\) による逆像が \(X\) の開集合となるとき, \(f\) を連続という. 全単射 \(f : X → Y\) が連続で \(f^{-1}\) も連続であるとき, \(f\) を同相写像といい, \(X\) と \(Y\) は位相同型あるいは同相という.

topology.md

微分幾何学

束と切断

底空間 base space と呼ばれる空間 \(B\) と全空間 total space と呼ばれる空間 \(E\) に対して, 射影 projection と呼ばれる写像 \(π : E → B\) があるとき, 三対 \((E, π, B)\) を bundle という. \(E \xrightarrow{π} B\), または単に \(E\) を束と呼ぶこともある.

\[\begin{CD} E \\ @VVπV \\ B \end{CD}\]

任意の \(b ∈ B\) について, 射影による逆像 \(π^{-1}(b) ∈ E\) を束の \(b\) 上のファイバー fibre という. 位相空間 \(B\), \(E\) を底空間, 全空間に持つ束 \(E \xrightarrow{π} B\) に対し, 位相空間 \(F\) が任意の \(b ∈ B\) 上のファイバーと同相であるとき, \(F\) を束のファイバーという. 特に \(E = B × F\) であるとき, この束 \(E\) は自明な束 trivial bundle という. このときの射影は \(π = \mathrm{prod}_1\).

\[\begin{CD} B × F \\ @VV{\mathrm{prod}_1}V \\ B \end{CD}\]

また, 写像 \(σ : B → E\) が \(π ∘ σ = 1_B\) を満たすとき, \(σ\) を切断 cross section という. 言い換えると, 切断とは, 任意の底空間上の点 \(b ∈ B\) に対して各ファイバー上の 1 点 \(σ(b) ∈ π^{-1}(b)\) を決める写像 \(σ\) である. 束 \(E\) の切断の全体を \(Γ(E)\) と表す.

\[\begin{CD} E \\ @AA{σ ∈ Γ(E)}A \\ B \end{CD}\]

ファイバー束と構造群

全空間 \(E\), 底空間 \(M\), ファイバー \(F\) が可微分多様体で, 射影 \(π\) が全射である束 \(E \xrightarrow{π} M\) について考える. \(M\) の開被覆 \(\{U_i\}\) に対して, 局所自明化 local trivialization と呼ばれる微分同相写像 \(φ_i : U_i × F → π^{-1}(U_i)\) が存在するとき, この束 \(E \xrightarrow{π} M\) をファイバー束 fibre bundle という.

\[\begin{CD} U_i × F @>{≃}>{φ_i}> π^{-1}(U_i) @>{ι}>> E \\ @VV{\mathrm{pr}_1}V @VV{π}V @VV{π}V \\ U_i @= U_i @>{ι}>> M \end{CD}\]

点 \(p^i ∈ U_i ⊂ M\) における局所自明化 \(φ_i\) を \(φ_{i,p} := φ_i(p,\ ) : F → π^{-1}(p)\) とする. 底空間上の点 \(p ∈ U_i ∩ U_j ≠ \varnothing\) について, \(g_{ij} (p) := φ_{i,p}^{-1} ∘ φ_{j,p} : F → F\) あるいは \(g_{ij} (p)\) を変換関数 transition function といい, \(p ∈ U_i \cup U_j \cup U_k\) に対してコサイクル条件 \(g_{ij} (p) g_{jk} (p) = g_{ik} (p)\) を満たす.

\[\xymatrix{ F \ar[r]_-{φ_{i,p}} & π^{-1}(p) \ar[d]^{π} & F \ar@/_18pt/[ll]_{g_{ij}(p)} \ar[l]^-{φ_{j,p}} \\ \{p\} \ar@{=}[r] & \{p\} & \{p\} \ar@{=}[l] }\]

\(F\) に左作用する位相群 \(G\) を用いて \(g_{ij} (p) : U_i ∩ U_j → G\) であるとき, \(G\) を構造群 structure group といい, このときのファイバー束 \(E \xrightarrow{π} M\) を \(G\)-束 \(G\)-bundle ともいう.

底空間 \(M\)とその開被覆 \(\{U_i\}\), ファイバー \(F\), 構造群 \(G\), 変換関数 \(g_{ij} (p)\) が与えられたとき, ファイバー束を構成可能である.

主 \(G\)-束と同伴ファイバー束

射影 \(π\) が微分可能な \(G\)-束 \(P \xrightarrow{π} M\) を考える. \(G\) が \(P\) に右から作用し, \(p ∈ M\) 上のファイバー上の点が \(G\) の作用で同一ファイバー上に移る (単純推移的 simply transitive) とき, このファイバー束 \(P \xrightarrow{π} M\) を主 \(G\)-束 principal \(G\)-bundle, あるいは単に主束 principal bundle という. 言い換えると, 主 \(G\)-束とは, 射影が微分可能, ファイバーが位相群 \(G\) である \(G\)-束である.

主 \(G\)-束 \(P \xrightarrow{π} M\), \(G\) が左作用する可微分多様体 \(F\) が与えられたとき, 商空間

\[P ×_G F := (P × F) / G\]

と写像 \(π_1 : P ×_G F → M, (u, f) ↦ π(u)\) はファイバー \(F\) のファイバー束 \(P ×_G F \xrightarrow{π_1} M\) を与える. これを同伴ファイバー束 associated fibre bundle という. 反対に, 上の定義のように \(G\)-束から同伴する主 \(G\)-束を構成可能である.

ベクトル束

体 \(K\) 上のベクトル空間 \(V\) をファイバーとするファイバー束 \(E \xrightarrow{π} M\) について考える. \(M\) の開被覆 \(\{U_i\}\) に対して, \(p ∈ U_i ⊂ M\) における局所自明化 \(ϕ_i(p,\ ): V → π^{-1}\) が線形同型を与えるとき, このファイバー束 \(E \xrightarrow{π} M\) をベクトル束 vector bundle という. 言い換えると, ベクトル束とは, 次元 \(n\) のベクトル空間をファイバーとして持つ \(GL(n)\)-束である. 自明かつファイバーが \(V = K\) であるベクトル束を自明な直線束という. また, 主 \(GL(n)\)-束の同伴ファイバー束は同伴ベクトル束と呼ばれる.

接束と余接束

可微分多様体 \(M\) 上の点 \(p ∈ M\) に対し, \(p\) の座標近傍における局所座標 \(\{ x_μ \}\) 上で定義された微分作用素 \(\displaystyle ∂_μ := \pdv{}{x^μ}\) を用いた \(\{ ∂_μ \}\) を基底とするベクトル空間 \(T_pM\) を接空間 tangent space といい, 接空間のベクトルを接ベクトル tangent vector という. 全空間 \(TM := \bigcup_{p ∈ M} T_pM\) に対して射影 \(π : M → TM\) が \(π^{-1} (p) ∈ T_pM\) を満たすようなベクトル束 \(TM \xrightarrow{π} M\) を接束 tangent bundle という. 接束の切断をベクトル場 vector field という.

接空間 \(T_pM\) の双対空間 \(T^{*}_pM\) を余接空間 cotangent space といい, \(T_pM\) の基底 \(\{ ∂_μ \}\) の双対基底は \(\{ \d{x^μ} \}\) である: \(\d{x^μ} (∂_ν) = δ^μ_ν\). また余接空間のベクトルを余接ベクトル cotangent vector という. 全空間 \(T^{*}M := \bigcup_{p ∈ M} T^{*}_pM\) に対して射影 \(π : M → T^{*}M\) が \(π^{-1}(p) ∈ T^{*}_pM\) を満たすようなベクトル束 \(T^{*}M \xrightarrow{π} M\) を余接束 cotangent bundle という.

微分形式とベクトル束上の接続

ベクトル束 \(E \xrightarrow{x} M\) に対し, \(M\) の余接空間の \(k\) 次交代テンソル空間 \(Λ^k (T^{*}M) := \bigcup_{p ∈ M} Λ^k (T^{*}_pM)\) を付け加えた \(Λ^k (T^{*}M) ⊗ E \xrightarrow{π_1} M\) の切断 \(Ω^{k} (M, E) := Γ(Λ^k (T^{*}M) ⊗ E)\) を \(E\) に値を取る \(k\)-形式 \(k\)-form の空間という.

\[\begin{CD} Λ^k (T^{*}M) ⊗ E \\ @AAϕ ∈ Ω^{k} (M, E)A \\ M \end{CD}\]

ベクトル束 \(E\) が自明な直線束であるとき単に \(Ω^k (M) := Ω^k (M, E) = Γ(Λ^k (T^{*}M))\) と書き, 単に \(k\)-形式の空間という.

\[\begin{CD} Λ^k (T^{*}M) \\ @AAϕ ∈ Ω^{k} (M)A \\ M \end{CD}\]

全微分 : \(Ω^0 (M) → Ω^1 (M)\)

自明な直線束に値を取る \(0\)-形式を \(1\)-形式に移す微分 \(\d{} : Ω^0 (M) → Γ(T^{*}M) = Ω^1 (M)\) は全微分である: \(f, g ∈ Ω^0 (M)\), \(fg ∈ Ω^0 (M)\) に対して, Leibniz 則を満たす:

\[\d{(fg)} = (\d{f}) g + f (\d{g}).\] \[\xymatrix{ K & T^{*}M \\ \ \ar@{=>}[r]^{\d{}} & \ \\ M \ar[uu]^{Ω^0 (M) ∋ f} & M \ar[uu]_{\d{f} ∈ Ω^1 (M)} }\]

\(T^{*}_pM\) の基底 \(\{d x^μ\}\) に対し, \(f ∈ Ω^0 (M)\) は局所的に

\[\d{f} := (∂_μ f )\ \d{x^μ}.\]

外微分 : \(Ω^k (M) → Ω^{k+1} (M)\)

自明な直線束に値を取る \(k\)-形式を \((k+1)\)-形式に移す微分 \(\d{} : Ω^k (M) → Ω^{k+1} (M)\) を外微分 exterior derivative という: \(ω ∈ Ω^k (M)\), \(ξ ∈ Ω^l (M)\), \(ω ∧ ξ ∈ Ω^{k+l} (M)\) に対して, Leibniz 則を満たす:

\[\d{(ω ∧ ξ)} = \d{ω} ∧ ξ + (-1)^k ω ∧ \d{ξ}.\] \[\xymatrix{ Λ^k (T^{*}M) & Λ^{k+1} (T^{*}M) \\ \ \ar@{=>}[r]^{\d{}} & \ \\ M \ar[uu]^{Ω^{k} (M) ∋ ω} & M \ar[uu]_{\d{ω} ∈ Ω^{k+1} (M)} }\]

\(T^{*}_pM\) の基底 \(\{d x^μ\}\) に対し, \(ω = \frac1{k!} ω_{μ_1 ⋯ μ_k} \d{x^{μ_1}} ∧ ⋯ ∧ \d{x^{μ_k}} ∈ Ω^k (M)\) は局所的に

\[\d{ω} := \frac1{k!} (∂_ν ω_{μ_1 ⋯ μ_k}) \d{x^ν} ∧ \d{x^{μ_1}} ∧ ⋯ ∧ \d{x^{μ_k}}.\]

このとき, 外積代数の交代性より外微分を2回作用させると0になる: \(\d{{}^2} = 0\). また, \(X, Y ∈ T_pM\) に対し, \(ω ∈ Ω^1 (M)\) の外微分は次の等式を満たす:

\[\d{ω} (X, Y) = X (ω (Y)) - Y (ω (X)) - ω ([ X, Y ]).\]

共変微分 : \(Ω^0 (M, E) → Ω^1(M, E)\)

ベクトル束 \(E\) に値を取る \(0\)-形式を \(1\)-形式に移す微分 \(D : Ω^0 (M, E) → Ω^1 (M, E)\) を接続 connection という: \(f ∈ Ω^0 (M)\), \(ξ' ∈ Ω^0 (M, E) = Γ(E)\), \(f ξ' ∈ Ω^0 (M, E)\) に対して, Leibniz 則を満たす:

\[D (f ξ') = \d{f} ⊗ ξ' + f D ξ'.\] \[\xymatrix{ E & T^{*}M ⊗ E \\ \ \ar@{=>}[r]^{D} & \ \\ M \ar[uu]^{Ω^0 (M, E) ∋ ϕ} & M \ar[uu]_{D ϕ ∈ Ω^1 (M, E)} }\]

\(p ∈ M\) の座標近傍 \(U_i ⊂ M\) とその局所自明化 \(φ_{i,p} := φ_i (p,\ )\) に対し, 切断 \(ϕ ∈ Γ(E)\) の接続は

\[D ϕ := φ_{i,p} (\d{} + A_i) φ_{i,p}^{-1} ∘ ϕ.\]

ここで, Lie 代数に値を取る \(1\)-形式 \(A_i ∈ Ω^1 (U_i, \mathrm{End} (E)) = Γ(T^{*}U_i ⊗ \frak{g})\) は接続 \(1\)-形式またはゲージ場 gauge field といい, 局所標構場 local frame field と呼ばれる \(Ω (U_i, E) = Γ(π^{-1} (U_i))\) の局所的な基底 \(\{ e_a \}\) を用いて, \(∇ e_a = φ_{i,p} {(A_i)^b}_a ⊗ φ_{i,p}^{-1} ∘ e_b\) と展開できる. また, ゲージ場は別の座標近傍と「接続」する役割を持つ: \(p ∈ M\) の座標近傍 \(U_i, U_j ⊂ M\) とその局所自明化 \(φ_{i,p} := φ_i (p,\ )\), \(φ_{j,p} := φ_j (p,\ )\) に対し, 切断 \(ϕ ∈ Γ(E)\) は

\[D ϕ = φ_{i,p} (\d{} + A_i) φ_{i,p}^{-1} ∘ ϕ = φ_{j,p} (\d{} + A_j) φ_{j,p}^{-1} ∘ ϕ,\]

あるいは 局所切断 \(ϕ_i := φ_{i,p}^{-1} ∘ ϕ\), \(ϕ_j := φ_{j,p}^{-1} ∘ ϕ\) と, それらに対する局所的な接続 \(D_i := \d{} + A_i\), \(D_j := \d{} + A_j\) を用いて, 変換関数による局所的な接続の変換式が得られる:

\[D_i ϕ_i = g_{ij} (p) D_j ϕ_j.\]

また, ベクトル束の構造群が \(GL(n)\) であることを用いて,

\[\begin{aligned} φ_{j,p} (\d{} + A_j) φ_{j,p}^{-1} ∘ ϕ &= φ_{j,p} \d{(φ_{j,p}^{-1} ∘ ϕ)} + φ_{j,p} A_j φ_{j,p}^{-1} ∘ ϕ \\ &= φ_{j,p} \d{(φ_{j,p}^{-1} ∘ φ_{i,p} ∘ φ_{i,p}^{-1} ∘ ϕ)} + φ_{j,p} A_j φ_{j,p}^{-1} ∘ ϕ \\ &= φ_{j,p} \d{(g_{ji} (p) φ_{i,p}^{-1} ∘ ϕ)} + φ_{j,p} A_j φ_{j,p}^{-1} ∘ ϕ \\ &= φ_{j,p} \d{(g_{ji} (p))} φ_{i,p}^{-1} ∘ ϕ + φ_{j,p} g_{ji} (p) \d{(φ_{i,p}^{-1} ∘ ϕ)} + φ_{j,p} A_j φ_{j,p}^{-1} ∘ ϕ \\ &= φ_{i,p} \d{(φ_{i,p}^{-1} ∘ ϕ)} + φ_{i,p} g_{ij} (p) \d{(g_{ji} (p))} φ_{i,p}^{-1} ∘ ϕ + φ_{i,p} g_{ij} (p) A_j g_{ji} (p) φ_{i,p}^{-1} ∘ ϕ \\ &= φ_{i,p} (d + g_{ij} (p) \d{g_{ji} (p)} + g_{ij} (p) A_j g_{ji} (p)) φ_{i,p}^{-1} ∘ ϕ . \end{aligned}\]

これが \(φ_{i,p} (\d{} + A_i) φ_{i,p}^{-1} ∘ ϕ\) と等しい条件は,

\[A_i = g_{ij} (p) \d{g_{ji}} (p) + g_{ij} (p) A_j g_{ji} (p),\]

あるいは \(A := A_j\), \(A' := A_i\), \(g := g_{ij} (p)\) として,

\[A' = g \d{g^{-1}} + g A g^{-1}.\]

変換関数による変換に相当する \(A ↦ A' = g \d{g^{-1}} + g A g^{-1}\) をゲージ変換 gauge transformation という. また, ゲージ場をスカラー倍 \(A ↦ λ A\) しても接続の性質は変わらない.

\[\xymatrix{ F \ar[r]_-{φ_{i,p}} & π^{-1}(p) & F \ar@/_18pt/[ll]_{g_{ij}(p)} \ar[l]^-{φ_{j,p}} & T^{*}_pM ⊗ F \ar[r]_-{φ_{i,p}} & T^{*}_pM ⊗ π^{-1}(p) & T^{*}_pM ⊗ F \ar@/_18pt/[ll]_{g_{ij}(p)} \ar[l]^-{φ_{j,p}} \\ & \ \ar@{=>}@/^8pt/[rrr]^{D} &&& \ \\ \{p\} \ar[uu]^{ϕ_i} \ar@{=}[r] & \{p\} \ar[uu]^{ϕ} & \{p\} \ar@{=}[l] \ar[uu]_{ϕ_j} & \{p\} \ar@{=}[r] \ar[uu]_{(d+A_i)ϕ_i} & \{p\} \ar[uu]_{Dϕ} & \{p\} \ar@{=}[l] \ar[uu]_{(d+A_j)ϕ_j} }\]

実用上, 接続はしばしば局所的な接続と同一視される:

\[D ϕ := (\d{} + A) ϕ.\]

例えば, \(D e_a = {A^b}_a ⊗ e_b\), \(D' ϕ' = g D ϕ\) など. \(T^{*}_pM\) の基底 \(\{ d x^μ \}\) に対して, 接続 \(1\)-形式 \(A = A_μ \d{x^μ}\) を用いて, 局所的に \(D ϕ = D_μ ϕ \ \d{x^μ} = (∂_μ + A_μ) ϕ \ \d{x^μ}\) と展開される. このとき, 接続の成分表示を共変微分 convariant derivative という:

\[D_μ ϕ = (∂_μ + A_μ) ϕ.\]

また, \(\{ \d{x^μ} \}\) を双対基底に持つ \(T_pM\) の基底 \(\{ ∂_μ \}\) に対して, \(X = X^μ ∂_μ ∈ T_pM\) を用いた \(D_X ϕ := D ϕ (X) = X^μ D_μ ϕ : Γ (E) → Γ (E)\) を共変微分と呼ぶこともある. また, 単に接続 \(D ϕ = (\d{} + A) ϕ\) を共変微分と呼ぶこともある.

共変外微分 : \(Ω^k (M, E) → Ω^{k+1} (M, E)\)

ベクトル束 \(E\) に値を取る \(k\)-形式を \((k+1)\)-形式に移す微分 \(D : Ω^k (M, E) → Ω^{k+1} (M, E)\) を共変外微分 covariant exterior derivative という: \(ω ∈ Ω^k (M) = Γ (Λ^k(T^{*}M))\), \(ξ ∈ Ω^l (M, E) = Γ (Λ^l(T^{*}M) ⊗ E)\), \(ω ∧ ξ ∈ Ω^{k+l} (M, E) = Γ (Λ^{k+l} (T^{*}M) ⊗ E)\) に対して, Leibniz 則を満たす:

\[D (ω ∧ ξ) = \d{ω} ∧ ξ + (-1)^k ω ∧ D ξ,\]

あるいは, \(l = 0\) のとき,

\[D (ω ⊗ ξ) = \d{ω} ⊗ ξ + (-1)^k ω ∧ D ξ.\] \[\xymatrix{ Λ^k (T^{*}M) ⊗ E & Λ^{k+1} (T^{*}M) ⊗ E \\ \ \ar@{=>}[r]^{D} & \ \\ M \ar[uu]^{Ω^{k} (M, E) ∋ ϕ} & M \ar[uu]_{Dϕ ∈ Ω^{k+1} (M, E)} }\]

接ベクトル \(X, Y ∈ T_pM\) に対し, \(ϕ ∈ Ω^1 (M, E)\) の共変外微分は次の等式を満たす:

\[D ϕ (X, Y) = D_X (ϕ (Y)) - D_Y (ϕ (X)) - ϕ ([ X, Y ]).\]

曲率

\(p ∈ M\) において \(E\) の切断を2回共変外微分する操作 \(R := D^2 : π^{-1} (p) → Λ^2(T^{*}_pM) ⊗ π^{-1} (p)\) を \(p\) における接続 \(D\) の曲率 curvature という. このとき, Bianchi 恒等式 Bianchi identity を満たす:

\[DR = 0.\]

\(ξ ∈ Γ(E) = Ω^0 (M, E)\) に対し, \(p ∈ M\) の接ベクトル \(X, Y ∈ T_pM\) を用いた等式

\[\begin{aligned} D (D ξ) (X, Y) &= D_X (D ξ (Y)) - D_Y (D ξ (X)) - D ξ ([ X, Y ]) \\ &= D_X D_Y ξ - D_Y D_X ξ - D_{[ X, Y ]} ξ \end{aligned}\]

より, Ricchi 恒等式 Ricci identity が得られる:

\[R (X, Y) ξ = (D_X D_Y - D_Y D_X - D_{[X, Y]}) ξ.\]

局所標構場 \(\{ e_a \}\) の曲率は, 接続 \(1\)-形式 \(A = ({A^b}_a)\) を用いて,

\[\begin{aligned} D^2 e_a &= D ({A^b}_a ⊗ e_b) \\ &= d {A^b}_a ⊗ e_b - {A^b}_a ∧ D e_b \\ &= d {A^b}_a ⊗ e_b - {A^b}_a ∧ {A^c}_b ⊗ e_c \\ &= (d {A^c}_a + {A^c}_b ∧ {A^b}_a) ⊗ e_c \end{aligned}\]

であるから, 構造方程式 structure equation が得られる:

\[R e_a = (d {A^b}_a + {A^b}_c ∧ {A^c}_a) ⊗ e_b.\]

このとき, \(R e_a = {F^b}_a ⊗ e_b\) となる Lie 代数に値を取る \(2\)-形式

\[\begin{aligned} F &= ({F^b}_a) \\ &= (\d{{A^b}_a} + {A^b}_c ∧ {A^c}_a) \\ &= \d{A} + A ∧ A \\ &∈ Ω^2 (M, \mathrm{End}(E)) = Γ (Λ^2 (T^{*}M) ⊗ \frak{g}) \end{aligned}\]

曲率 \(2\)-形式 curvature \(2\)-form あるいは場の強さ field strength という. ゲージ変換 \(A ↦ A' = g \d{g^{-1}} + gAg^{-1}\) に対して, 場の強さ \(F\) の変換規則は \(F ↦ F' = gFg^{-1}\) である. また, 場の強さの外微分より, Bianchi 恒等式の別の表示が得られる:

\[\begin{aligned} d F &= \d{(\d{A} + A ∧ A)} \\ &= \d{{}^2} A + \d{(A ∧ A)} \\ &= \d{A} ∧ A - A ∧ \d{A} \\ &= (F - A ∧ A) ∧ A - A ∧ (F - A ∧ A) \\ &= F ∧ A - A ∧ F \\ &=: - [A, F]. \\ \end{aligned}\] \[∴ \d{{}_A} F := \d{F} + [A, F] = 0.\]

また, ゲージ場 \(A = A_μ \d{x^μ}\), 場の強さ \(\displaystyle F = \frac12 F_{μν} \d{x^μ} ∧ \d{x^ν}\) について,

\[\begin{aligned} F &= \d{A} + A ∧ A \\ &= \d{(A_μ \d{x^μ})} + (A_μ \d{x^μ}) ∧ (A_ν \d{x^ν}) \\ &= ∂_ν A_μ \d{x^ν} ∧ \d{x^μ} + A_μ A_ν \d{x^μ} ∧ \d{x^ν} \\ &= \frac12 (∂_μ A_ν - ∂_ν A_μ) \d{x^μ} ∧ \d{x^ν} + \frac12 (A_μ A_ν - A_ν A_μ) \d{x^μ} ∧ \d{x^ν} \\ &= \frac12 (∂_μ A_ν - ∂_ν A_μ + [A_μ, A_ν]) \d{x^μ} ∧ \d{x^ν}. \end{aligned}\]

したがって, 場の強さの成分表示は,

\[F_{μν} = ∂_μ A_ν - ∂_ν A_μ + [A_μ, A_ν].\]

主 \(G\)-束の接続

参考文献

dg.md

粒子系の古典論

粒子系1の古典論の基本事項を体系的にまとめる.

最小作用の原理

粒子系の古典論において, 以下を原理として認める.

時間 \(t\) に依存する一般化座標と呼ばれるパラメータ \(q^i(t)\) に対して, 作用 action と呼ばれる汎関数 \(S[q^i]\) が存在し, 物理現象において座標 \(q^i\) は作用 \(S[q^i]\) が最小となるような経路が選ばれる.

言いかえると, 時間 \(t_1\) から \(t_2\) の運動において, \(q^i(t) ↦ q^i(t) + δq^i(t)\) (ただし両端固定 \(δq^i(t_1)=δq^i(t_2)=0\)) なる経路の微小変換に対し, 作用が停留値を取る:

\[δS[q^i] ≡ S[q^i + δq^i] - S[q^i] = 0.\]

この古典的原理を最小作用の原理という.

系に対し適当な作用 \(S[q^i]\), あるいは次節の Lagrangian を決定するのが, 物理学の本質と言えよう.

例: 自由一次元一粒子系

質量 \(m\) の自由一次元一粒子系の作用は

\[S[q] = \frac{m}{2} \frac{(q(t_2)-q(t_1))^2}{t_2-t_1}\]

である. これが \(δS[q^i] = 0\) を満たすことは明らか.

例: 調和振動子

質量 \(m\), 角振動数 \(ω\) の調和振動子の作用は

\[S[q] = \frac{mω}{2 \sin ω(t_2-t_1)} \bqty{(q(t_1)^2+q(t_2)^2) \cos ω(t_2-t_1) - 2q(t_1)q(t_2)}\]

である. これが \(δS[q^i] = 0\) を満たすことは明らか.

Euler–Lagrange の運動方程式

系の作用を直接求めることは難しく, これから定義する Lagrangian を用いるのが便利である:

作用は, 座標と時間に関する Lagrangian \(L(q^i, \.q^i, t)\) を用いて以下のように表される:

\[S[q^i] = ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} L(q^i, \.q^i, t).\]

最小作用の原理に対し, この Lagrangian が満たすべき条件を求めよう. \(q^i ↦ q^i + δq^i\) の変換に対し,

\[\begin{aligned} δS[q^i] =& ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} \bqty{ L\pqty{q^i + δq^i, \.q^i + \dv{δq^i}{t}, t} - L(q^i, \.q^i, t) } \\ =& ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} \bqty{ δq^i \pdv{L}{q^i} + \dv{δq^i}{t} \pdv{L}{\.q^i} } \\ =& ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} \bqty{ δq^i \pdv{L}{q^i} - δq^i \dv{}{t} \pqty{\pdv{L}{\.q^i}} + \dv{}{t} \pqty{ δq^i \pdv{L}{\.q^i} } } \\ =& ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} δq^i \bqty{ \pdv{L}{q^i} - \dv{}{t} \pqty{\pdv{L}{\.q^i}} } + \bqty{ δq^i \pdv{L}{\.q^i}}_{t=t_1}^{t=t_2}. \end{aligned}\]

ここで, 第2項は両端固定の境界条件 \(δq^i(t_1)=δq^i(t_2)=0\) より消える:

\[δS[q^i] = ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} δq^i \bqty{ \pdv{L}{q^i} - \dv{}{t} \pqty{\pdv{L}{\.q^i}} }.\]

\(δq^i(t)\) は \(t_1<t<t_2\) で任意だから, 原理 \(δS[q^i] = 0\) より, 次の運動方程式が得られる:

最小作用の原理を満たすとき, Lagrangian \(L(q^i,\.q^i,t)\) は以下の Euler–Lagrange の運動方程式を満たす:

\[\pdv{L}{q^i} - \dv{}{t} \pqty{\pdv{L}{\.q^i}} = 0.\]

これにより, 変分条件 \(δS[q^i]=0\) を満たす \(q^i(t)\) を求める問題は, Euler–Lagrange 方程式という微分方程式を解く問題と等価であることがわかった.

例: 一次元一粒子系

一次元一粒子系の Lagrangian は

\[L(q, \.q, t) = \frac12 m \.q^2 - V(q)\]

で与えられる. ただし \(V(q)\) は系のポテンシャルである. ここで,

\[\pdv{L}{q} = - \pdv{V}{q}, \quad \dv{}{t}\pqty{\pdv{L}{\.q}} = \dv{}{t} (m \.q) = m \"q\]

であるから, Euler–Lagrange の運動方程式は,

\[m\"q + \pdv{V}{q} = 0.\]

これは Newton の運動方程式として知られており, Lagrangian 決定の任意性を除けば, 最小作用の原理は物理原理として well-defined であることがわかる.

ポテンシャルが無い (\(V=0\)) ときの作用の表式を求める. 運動方程式 \(m\"q = 0\) を解いて,

\[\.q(t) = \frac{q(t_2)-q(t_1)}{t_2-t_1}.\]

したがって, 作用は

\[S[q] = ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} \frac{m}{2} \frac{(q(t_2)-q(t_1))^2}{(t_1-t_2)^2} = \frac{m}{2} \frac{(q(t_2)-q(t_1))^2}{t_2-t_1}\]

と求められる.

例: 調和振動子

調和振動子の Lagrangian は,

\[L(q, \.q, t) = \frac12 m \.q^2 - \frac12 m ω^2 q^2.\]

で与えられる. ここで,

\[\pdv{L}{q} = - m ω^2 q, \quad \dv{}{t}\pqty{\pdv{L}{\.q}} = \dv{}{t} (m \.q) = m \"q\]

であるから, Euler–Lagrange の運動方程式は

\[m\"q + m ω^2 q = 0.\]

作用の表式を求める. 運動方程式を解いて,

\[\begin{aligned} q(t) &= \frac{q_1 \sin ω(t-t_2) - q_2 \sin ω(t-t_1)}{\sin ω(t_1-t_2)}, \\ \.q(t) &= ω \frac{q_1 \cos ω(t-t_2) - q_2 \cos ω(t-t_1)}{\sin ω(t_1-t_2)}. \\ \end{aligned}\]

ただし, \(q_1 ≡ q(t_1)\), \(q_2 ≡ q(t_2)\) とした. したがって, 作用は,

\[\begin{aligned} S[q] &= ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} \frac{m}{2} \bqty{\qty{ω \frac{q_1 \cos ω(t-t_2) - q_2 \cos ω(t-t_1)}{\sin ω(t_1-t_2)}}^2 - ω^2 \qty{\frac{q_1 \sin ω(t-t_2) - q_2 \sin ω(t-t_1)}{\sin ω(t_1-t_2)}}^2} \\ &= ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} \frac{mω^2}{2} \frac{q_1^2 \cos 2ω(t-t_2) + q_2^2 \cos 2ω(t-t_1) - 2q_1q_2\cos(2t-t_1-t_2)}{\sin^2 ω(t_2-t_1)} \\ &= \frac{mω}{2 \sin ω(t_2-t_1)} \bqty{(q_1^2+q_2^2) \cos ω(t_2-t_1) - 2q_1q_2} \\ \end{aligned}\]

と求められる.

Noether の定理

Lagrangian は運動方程式を与えるだけでなく, 系の対称性に関する情報も持っている. 時間と座標の連続変換に対し作用が不変であるとき, 系には対応する不変量が存在することが知られている. この定理は Noether の定理と呼ばれている.

時間の微小変換 \(t↦t'=t+δt\) に対し, 座標が \(q^i(t)↦q'^i(t')=q^i(t)+δq^i(t)\) と変換されるとする. このとき \(t_1<t<t_2\) の作用は

\[\begin{aligned} δS[q^i] &= ∫_{t_1+δt(t_1)}^{t_2+δt(t_2)} \d{t'} L(q'^i(t'),∂'_tq'^i(t'),t') - ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} L(q^i(t),\.q^i(t),t) \\ & \quad \pqty{\d{t'} = \dv{t'}{t} \d{t} = (1+δ\.t) \d{t}} \\ &= ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} \Big[ (1+δ\.t) L(q'^i(t'),∂'_tq'^i(t'),t') - L(q^i(t),\.q^i(t),t) \Big] \\ & \quad \pqty{ ∂'_tq'(t') = \dv{t}{t'} ∂_t (q^i(t)+δq^i(t)) = (1-δ\.t)(\.q^i+δ\.q^i) = \.q^i+δ\.q^i-\.q^iδ\.t } \\ &= ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} \Big[ δ\.t L + L(q^i+δq^i,\.q^i+δ\.q^i-\.q^iδ\.t,t+δt) - L(q^i,\.q^i,t) \Big] \\ &= ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} \bqty{δ\.t L + δq^i \pdv{L}{q^i} + (δ\.q^i-\.q^iδ\.t) \pdv{L}{\.q^i} + δt \pdv{L}{t}} \\ & \quad \pqty{\text{Lie 微分 $δ^Lq^i(t) ≡ q'^i(t) - q^i(t) = δq^i - \.q^i δt$}} \\ &= ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} \bqty{δ\.t L + (δ^Lq^i + \.q^i δt) \pdv{L}{q^i} + (∂_tδ^Lq^i + \"q^i δt) \pdv{L}{\.q^i} + δt \pdv{L}{t}} \\ &= ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} \qty{ δ^Lq^i \bqty{\pdv{L}{q^i} - \dv{}{t} \pqty{\pdv{L}{\.q^i}}} + \dv{}{t} \pqty{δ^Lq^i \pdv{L}{\.q^i} + δt L} } \\ &= ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} δ^Lq^i \bqty{\pdv{L}{q^i} - \dv{}{t} \pqty{\pdv{L}{\.q^i}}} + \bqty{δ^Lq^i \pdv{L}{\.q^i} + δt L}_{t=t_1}^{t=t_2} \\ &= ∫_{t_1}^{t_2} \d{t} δ^Lq^i \bqty{\pdv{L}{q^i} - \dv{}{t} \pqty{\pdv{L}{\.q^i}}} + \bqty{δq^i \pdv{L}{\.q^i} - δt \pqty{\.q^i \pdv{L}{\.q^i} - L}}_{t=t_1}^{t=t_2}. \\ \end{aligned}\]

ここで, 最後の式の第一項は Euler–Lagrange の運動方程式より消え, 第二項の \(t_1\), \(t_2\) は任意である2. したがって, この変換に対し作用が不変 \(δS=0\) であるとすると, 対応する保存量が得られる:

時間の微小変換 \(t↦t'=t+δt\) に対し, 座標が \(q^i(t)↦q'^i(t')=q^i(t)+δq^i(t)\) と変換されるとき, 作用が不変であるならば, 量

\[δQ ≡ δq^i p_i - δt H ≡ δq^i \pdv{L}{\.q^i} - δt \pqty{\pdv{L}{\.q^i} \.q^i - L}\]

は保存する(Noether の定理 Noether’s theorem):

\[\dv{δQ}{t} = 0, \quad (⇔ δQ = \mathrm{const.})\]

ここで, 量

\[p_i ≡ \pdv{L}{\.q^i}, \quad H ≡ \.q^i \pdv{L}{\.q^i} - L = \.q^i p_i - L\]

はそれぞれ一般化運動量, Hamiltonian と呼ばれる(後述).

例: 空間並進に対する不変量

空間並進 \(t↦t'=t, q^i(t)↦q'^i(t')=q^i(t)+ε^i\) に対し, 作用が不変であるとき, 一般化運動量は保存する:

\[δQ = ε^i p_i = \mathrm{const.} \quad ∴ p_i = \mathrm{const.}\]

例: 時間並進に対する不変量

時間並進 \(t↦t'=t+ε\), \(q^i(t)↦q'^i(t')=q^i(t)\) に対し, 作用が不変であるとき, Hamiltonian は保存する:

\[δQ = - ε H = \mathrm{const.} \quad ∴ H = \mathrm{const.}\]

例: 空間回転に対する不変量

3 次元空間での一粒子を考える. 正規直交座標系 \(q=\bm{x}\) を取り, 空間回転 \(t↦t'=t, \bm{x}(t) ↦ \bm{x}'(t') = R(\bm{ε}) \bm{x}(t) = \bm{x}(t) - \bm{ε} × \bm{x}(t)\) に対し, 作用が不変であるとき, 対応する保存量 \(\bm{L}\) は角運動量と呼ばれる:

\[δQ = (- \bm{ε} × \bm{x}) ⋅ \bm{p} = - \bm{ε} ⋅ \pqty{\bm{x} × \bm{p}} = \mathrm{const.}\] \[∴ \bm{L} ≡ \bm{x} × \bm{p} = \mathrm{const.}\]

Hamilton–Jacobi 方程式

前節で導入された Hamiltonian は, 系に関して Lagrangian と同程度の情報を持つ. 以降, Hamiltonian の性質について詳しくみていく.

Lagrangian \(L\) が与えられたとき, \(q^i\) に対して

\[p_i ≡ \pdv{L}{\.q^i}\]

一般化運動量, または \(q^i\) に共役な運動量 conjugate momentum といい, 一般化座標とそれに共役な運動量の組 \((q^i, p_i)\) を正準変数 canonical variables という.

Lagrangian \(L\) と正準変数 \((q^i, p_i)\) が与えられたとき,

\[H(q^i, p_i, t) ≡ \.q^i p_i - L\]

Hamiltonian という.

一般化運動量と Hamiltonian は作用を端点で偏微分することで得ることもできる:

\[p_i(t) = \pdv{S}{q^i(t)}, \quad H(q^i,p_i,t) = - \pdv{S}{t}.\]

ただし作用は \(S[q^i]=∫_{t_0}^{t} \d{t'} L(q^i,\.q^i,t')\) で与えられている. 実際, Norther の定理と同じ状況での変分は

\[δS[q^i] = \bqty{δq^i p_i - δt H}_{t'=t_0}^{t'=t}.\]

始点での変位を \(δt(t_0)=δq^i(t_0)=0\) とすれば,

\[δS[q^i] = δq^i p_i - δt H.\]

この変分は経路の始点と途中 \(t'∈[t_0,t)\) によらない形になっているから, 一点 \(t\) での変位から求めたい全微分が得られる:

\[\d{S} = \d{q^i} p_i - \d{t} H.\]

これらの性質を組み合わせることで以下の方程式が得られる:

最小作用の原理を満たす作用 \(S[q^i] = ∫_{t_0}^t \d{t'} L(q^i,\.q^i,t')\) に対し, 作用の端点 \(t\), \(q(t)\) での偏微分は Hamilton–Jacobi 方程式 Hamilton–Jacobi equation を満たす:

\[H\pqty{q^i(t),\pdv{S}{q^i(t)},t}+\pdv{S}{t}=0.\]

Hamilton の運動方程式

Lagrangian の場合と同様に, 最小作用の原理に対し Hamiltonian が満たす条件を求めよう. Hamiltonian \(H(q^i, p_i, t) ≡ \.q^i p_i - L\) の全微分は,

\[\begin{aligned} \d{H} &= \.q^i \d{p_i} + p_i \d{\.q^i} - \d{L} \\ &= \.q^i \d{p_i} + p_i \d{\.q^i} - \pdv{L}{q^i} \d{q^i} - p_i \d{\.q^i} - \pdv{L}{t} \d{t} \\ & \quad \pqty{ ∵ \d{L} = \pdv{L}{q^i} \d{q^i} + \pdv{L}{\.q^i} \d{\.q^i} + \pdv{L}{t} \d{t} } \\ &= - \pdv{L}{q^i} \d{q^i} + \.q^i \d{p_i} - \pdv{L}{t} \d{t}. \end{aligned}\]

ここで, Euler-Lagrangian 方程式が成立するとき \(\.p_i = ∂L / ∂q^i\) であることを用いると, Hamiltonian に関する運動方程式が得られる:

最小作用の原理を満たすとき, Hamiltonian は以下の Hamilton の運動方程式あるいは正準方程式 canonical equation を満たす:

\[\.p_i = - \pdv{H}{q^i}, \quad \.q^i = \pdv{H}{p_i}.\]

Lagrangian が時間に陽に依存しないとき, Hamiltonian は保存する:

\[\pdv{H}{t} = -\pdv{L}{t} = 0.\]

\(q^i(t)\) と \(p_i(t)\) を独立にした作用

\[S[q^i, p_i] = ∫_{t_1}^{t_2}\d{t} \bqty{\.q^i(t) p_i(t) - H\pqty{q^i(t),p_i(t),t}}.\]

も用いられる.

例: 一次元一粒子系

一次元一粒子系の Lagrangian は,

\[L(q, \.q, t) = \frac12 m \.q^2 - V(q).\]

ここで, 一般化運動量の定義より,

\[p = \pdv{L}{\.q} = m \.q.\]

したがって \(\.q = p / m\) であるから, Hamiltonian の定義より,

\[H(q, p, t) = \frac{p}{m} p - L\pqty{q, \frac{p}{m}, t} = \frac{p^2}{2m} + V(q).\]

ここで,

\[\begin{aligned} \pdv{H}{q} &= \dv{V}{q}, & \pdv{H}{p} &= \frac{p}{m}. \end{aligned}\]

したがって, Hamilton の運動方程式は,

\[\begin{aligned} \.p &= - \dv{V}{q}, & \.q &= \frac{p}{m}. \end{aligned}\]

例: 調和振動子

調和振動子の Lagrangian は,

\[L(q, \.q, t) = \frac12 m \.q^2 - \frac12 m ω^2 q^2.\]

ここで, 一般化運動量の定義より,

\[p = \pdv{L}{\.q} = m \.q.\]

したがって \(\.q = p / m\) であるから, Hamiltonian の定義より,

\[H(q, p, t) = \frac{p}{m} p - L\pqty{q, \frac{p}{m}, t} = \frac{p^2}{2m} + \frac12 m ω^2 q^2.\]

ここで,

\[\begin{aligned} \pdv{H}{q} &= m ω^2 q, & \pdv{H}{p} &= \frac{p}{m}. \end{aligned}\]

したがって, Hamilton の運動方程式は,

\[\begin{aligned} \.p &= - m ω^2 q, & \.q &= \frac{p}{m}. \end{aligned}\]

正準変換

正準変数の変換 \((q^i, p_i) ↦ (Q^j, P_j) = (Q^j(q^i, p_i), P_j(q^i, p_i))\) に対して Hamiltonian が \(H (q^i, p_i) ↦ K (Q^j, P_j)\) と変換されるとき, この正準変数の変換を正準変換 canonical transformation という. いずれの表示でも最小作用の原理を満たすとき, Hamiltonian の定義から,

\[\begin{aligned} δS[q^i,p_i] &= δ∫\d{t} (\.q^i p_i - H) = 0, \\ δS'[Q^i,P_i] &= δ∫\d{t} (\.Q^i P_i - K) = 0. \end{aligned}\]

したがって, ある関数 \(W\) が存在して,

\[\begin{gathered} (\.q^i p_i - H) - (\.Q^i P_i - K) = \dv{W}{t}. \\ ∴\d{W} = p_i \d{q^i} - P_i \d{Q^i} - (H - K) \d{t}. \end{gathered}\]

または, 両辺に \(\d{Q^i P_i}/\d{t}\) を足して,

\[\begin{gathered} (\.q^i p_i - H) - (- Q^i \.P_i - K) = \dv{}{t} \pqty{W + Q^i P_i} =: \dv{W'}{t}. \\ ∴\d{W'} = p_i \d{q^i} + Q^i \d{P_i} - (H - K) \d{t}. \end{gathered}\]

これら \(W(q^i, Q^i, t)\), \(W'(q^i, P_i, t)\) をどちらも母関数といい, 以下を満たす.

\[\begin{gathered} p_i = \pdv{W}{q^i}, \quad P_i = - \pdv{W}{Q^i}, \quad K = H + \pdv{W}{t}, \\ p_i = \pdv{W'}{q^i}, \quad Q^i = \pdv{W'}{P_i}, \quad K = H + \pdv{W'}{t}. \end{gathered}\]

Poisson 括弧

正準変数 \((q^i, p_i)\) に対し, Poisson 括弧 Poisson braket は以下で定義される演算である:

\[\{A, B\}_\mathrm{P} ≡ \pdv{A}{q^i}\pdv{B}{p_i} - \pdv{B}{q^i}\pdv{A}{p_i}.\]

正準変数自身は以下を満たす:

\[\{q^i, p_j\}_\mathrm{P} = δ_j^i, \quad \{q^i, q^j\}_\mathrm{P} = \{p_i, p_j\}_\mathrm{P} = 0.\]

また, Hamilton の運動方程式は以下のように書き換えられる:

\[\begin{aligned} \dv{q^i}{t} = \{q^i, H\}_\mathrm{P}, && \dv{p_i}{t} = \{p_i, H\}_\mathrm{P}. \end{aligned}\]

より一般に, 正準変数と時間に関する物理量 \(A(q^i, p_i, t)\) について, 時間微分に関して以下が成立する:

\[\dv{A}{t} = \{A, H\}_\mathrm{P} + \pdv{A}{t}.\]

実際, \(A\) の時間による完全微分は,

\[\begin{aligned} \dv{A}{t} &= \pdv{A}{q^i} \.q^i + \pdv{A}{p_i} \.p_i + \pdv{A}{t} \\ &= \pdv{A}{q^i} \pdv{H}{p_i} - \pdv{A}{p_i} \pdv{H}{q^i} + \pdv{A}{t} \\ &= \{A, H\}_\mathrm{P} + \pdv{A}{t}. \end{aligned}\]

この式は, 物理量 \(A\) の全時間発展が Hamiltonian \(H\) によって記述されることを意味している. 記事の最後に登場する地味な式に見えるが, 量子化においては最初の操作で用いる大変重要な式である.

参考文献

Footnotes

  1. ここでの「粒子系」は「(一般的な意味での)場でない」程度の意味である. 厳密には粒子系も時間 \(ℝ\) から空間 \(ℝ^D\) への場 \(q=(q^i):ℝ→ℝ^D\) であるから, 場の理論の特別な場合とも言える.

  2. 最小作用の原理の場合と違い, このときの \(δq^i\) は両端固定でない. そのため, Euler-Lagrange の運動方程式の際に消えた発散項を, 今回の場合は消すことができない.

particle-c.md

粒子系の量子論

状態ベクトルと観測量

ある物理状態は状態ベクトルと呼ばれる Hilbert 空間 \(\mathcal{H}\) のベクトル \(|ψ⟩\) で表される.

状態ベクトル \(|ψ⟩\) に定数 \(c ∈ ℂ\) をかけた \(c |ψ⟩\) は同じ状態を表し, 可能な限り1状態ベクトル \(|ψ⟩\) は正規化されているとする: \(⟨ψ ∣ ψ⟩ = 1\). または, 正規化されていない状態ベクトル \(|ψ'⟩\) に対し, \(|ψ⟩ = |ψ'⟩ / \sqrt{⟨ψ' ∣ ψ'⟩}\) は正規化された状態ベクトルである. \(\{e^{i θ} |ψ⟩\}_{θ ∈ ℝ}\) を射線 ray といい, 同じ状態を表す状態ベクトルである.

物理状態が \(|ψ⟩\) から \(|φ⟩\) に遷移する確率は \(|⟨φ ∣ ψ⟩|^2\) で与えられ, \(⟨φ ∣ ψ⟩\) を遷移振幅という.

演算子 \(\^V:\mathcal{H}→\mathcal{H}\) の作用によって状態 \(|ψ⟩\) が \(|ψ'⟩ = \^V |ψ⟩\) になるとき, \(\^{V}\) の作用によって状態が \(|ψ⟩\) から \(|φ⟩\) に遷移する遷移振幅は \(⟨φ ∣ ψ'⟩ = ⟨φ|\^V|ψ⟩\) である.

ある物理量 \(A\) を観測するとき, \(A\) に対応する Hermite 演算子 \(\^A : \mathcal{H} → \mathcal{H}\) の固有値 \(a\) が観測される物理量で, この性質を観測量 observable という. このとき, 物理状態は物理量 \(A = a\) を観測後に固有値 \(a\) に属する固有状態 \(|a⟩\) に遷移する.

状態 \(|ψ⟩\) で観測量 \(\^A\) の固有値 \(a\) が観測される確率は

\[|⟨a ∣ ψ⟩|^2 = ⟨ψ ∣ a⟩ ⟨a ∣ ψ⟩ = ⟨ψ ∣ a⟩ ⟨a ∣ a⟩ ⟨a ∣ ψ⟩ = ||a⟩ ⟨a ∣ ψ⟩ |^2.\]

また, 状態 \(|ψ⟩\) に対する物理量 \(A\) の期待値は

\[\begin{aligned} ⟨A⟩ &≡ ∫ \d{a} a |⟨a ∣ ψ⟩|^2 = ∫ \d{a} a ⟨ψ ∣ a⟩ ⟨a ∣ ψ⟩ \\ &= ∫ \d{a} ⟨ψ| \^A |a⟩ ⟨a ∣ ψ⟩ = ⟨ψ| \^A \pqty{∫ \d{a} |a⟩ ⟨a|} |ψ⟩ \\ &= ⟨ψ| \^A |ψ⟩. \end{aligned}\]

物理量 \(A\) と対応する演算子 \(\^A\) を単に \(A\) と書くこともある.

Hilbert 空間の性質から, 固有状態はそれぞれ直交している:

\[\begin{aligned} \textsf{連続値} \quad &:& ⟨a∣b⟩ &= δ^D(a-b), \\ \textsf{離散値} \quad &:& ⟨m∣n⟩ &= δ_{mn}. \\ \end{aligned}\]

また, 固有状態は完全系をなす:

\[\begin{aligned} \textsf{連続値} \quad &:& ∫\d{a}|a⟩⟨a| &= 1, \\ \textsf{離散値} \quad &:& ∑_n|n⟩⟨n| &= 1. \\ \end{aligned}\]

波動関数

ある観測量 \(A\) について, 固有値 \(a\) が観測される確率振幅を \(ψ(a) ≡ ⟨a ∣ ψ⟩\) と書き, \(A\) 表示した波動関数という.

物理量 \(a\) が観測される確率は\(|⟨a ∣ ψ⟩|^2 = |ψ(a)|^2\) であり, 正規化条件は

\[\begin{aligned} 1 &= ⟨ψ ∣ ψ⟩ = ⟨ψ| \pqty{∫ \d{a} |a⟩ ⟨a|} |ψ⟩ \\ &= ∫ \d{a} ⟨ψ ∣ a⟩ ⟨a ∣ ψ⟩ \\ &= ∫ \d{a} ψ^{*}(a) ψ(a) = ∫ \d{a} |ψ(a)|^2. \end{aligned}\]

また, 波動関数は状態ベクトルを固有状態によって展開したときの係数である:

\[|ψ⟩ = \pqty{∫ \d{a} |a⟩ ⟨a|} |ψ⟩ = ∫ \d{a} |a⟩ ⟨a ∣ ψ⟩ = ∫ \d{a} ψ(a) |a⟩.\]

観測量 \(B\) について, 任意の状態ベクトル \(|ψ⟩\) に対し

\[⟨a| \^B |ψ⟩ = \^B_A ⟨a ∣ ψ⟩ = \^B_A ψ(a)\]

を満たす波動関数に対する演算子 \(\^B_A : ℂ → ℂ\) が存在するとき, 観測量 \(A\) に対して \(\^B |ψ⟩ ↔ \^B_A ψ(a)\) の対応がある.

誤解が無いとき, 区別せず \(\^B_A\) を同じ \(\^B\) と書く. \(B = b\) に属する固有状態 \(|b⟩\) に対して \(ψ_b(a) ≡ ⟨a ∣ b⟩\) とすれば, \(b\) は \(\^B_A\) の固有値, \(ψ_b(a)\) はそれに属する固有波動関数である:

\[\^B_A ψ_b(a) = ⟨a| \^B |b⟩ = b ⟨a ∣ b⟩ = b ψ_b(a).\]

また, 物理量 \(B\) の期待値は,

\[\begin{aligned} ⟨B⟩ &= ⟨ψ| \^B |ψ⟩ = ⟨ψ| \pqty{∫ \d{a} |a⟩ ⟨a|} \^B |ψ⟩ \\ &= ∫ \d{a} ⟨ψ ∣ a⟩ ⟨a| \^B |ψ⟩ \\ &= ∫ \d{a} ⟨ψ ∣ a⟩ \^B_A ⟨a ∣ ψ⟩ \\ &= ∫ \d{a} ψ^{*}(a) \^B_A ψ(a). \end{aligned}\]

また, 途中式より, \(\^B\) を \(\^B_A\) を用いて表示することができる. これを \(\^B\) の \(A\)-表示という:

\[\^B = ∫ \d{a} |a⟩ \^B_A ⟨a|.\]

時間発展と描像

系が時間 \(t\) によって発展していく表現を考える.

状態ベクトルが時間に依存するとき, その時間発展は時間発展演算子と呼ばれる unitary 演算子を用いて変換される:

\[|ψ(t)⟩ = \^U(t, t_0) |ψ(t_0)⟩.\]

ただし, \(\^U(t_2, t_1) = \^U^†(t_1, t_2) = \^U^{-1}(t_1, t_2)\) を満たす.

unitary 演算子である必要性は正規化条件からわかる:

\[1 = ⟨ψ(t)⟩∣ψ(t)⟩ = ⟨ψ(t_0)⟩| \^U^†(t, t_0) \^U(t, t_0) |ψ(t_0)⟩ = ⟨ψ(t_0)⟩∣ψ(t_0)⟩.\]

時間発展演算子が時間に依存しないとき, 時刻の基準を \(t = 0\) として \(\^U(t) ≡ \^U(t, 0)\) と略記する. 例えば \(\^U(t_2 - t_1) = \^U(t_2, t_1) = \^U(t_2, 0) \^U^{-1}(t_1, 0)\). また, 時間発展演算子が時間に依存する場合でも, 誤解が無いとき \(\^U(t) ≡ \^U(t, 0)\) と略記する.

状態ベクトルのみが時間発展し, 演算子は時間に依存しないとする方法を Schrödinger 描像 Schrödinger picture という. Schrödinger 描像の演算子, 状態ベクトル, 固有状態を以下のように書く:

\[\begin{aligned} \textsf{演算子} \quad &: \quad \^A, && \^A_\mathrm{S}, \\ \textsf{状態ベクトル} \quad &: \quad |ψ(t)⟩, && |ψ(t)⟩_\mathrm{S}, \\ \textsf{固有状態} \quad &: \quad |a⟩, && |a⟩_\mathrm{S}. \\ \end{aligned}\]

演算子のみが時間発展し, 状態ベクトルは時間に依存しないとする方法を Heisenberg 描像 Heisenberg picture という. Heisenberg 描像の演算子, 状態ベクトル, 固有状態を以下のように書く:

\[\begin{aligned} \textsf{演算子} \quad &: \quad \^A(t), && \^A_\mathrm{H}(t), \\ \textsf{状態ベクトル} \quad &: \quad |ψ⟩, && |ψ⟩_\mathrm{H}, \\ \textsf{固有状態} \quad &: \quad |a,t⟩, && |a,t⟩_\mathrm{H}. \\ \end{aligned}\]

どちらの描像でも初期状態 \(t = 0\) で一致 \(|ψ(0)⟩ = |ψ⟩\), \(\^A(0) = \^A\) するとき, 正規化条件, 確率振幅および任意の観測量 \(A\) の期待値が常に等しいとすると,

\[\begin{aligned} \^A(t) &= \^U^{-1}(t) \^A \^U(t), \\ |ψ⟩ &= \^U^{-1}(t) |ψ(t)⟩, \\ |a,t⟩ &= \^U^{-1}(t) |a⟩. \\ \end{aligned}\]

実際,

\[\begin{gathered} ⟨ψ ∣ ψ⟩ = ⟨ψ| \^U^{-1}(t) \^U(t) |ψ⟩ = ⟨ψ(t) ∣ ψ(t)⟩, \\ ψ(a,t) = ⟨a,t ∣ ψ⟩ = ⟨a| \^U(t) |ψ⟩ = ⟨a ∣ ψ(t)⟩, \\ ⟨A⟩ = ⟨ψ(t)| \^A |ψ(t)⟩ = ⟨ψ| \^U^{-1}(t) \^A \^U(t) |ψ⟩ = ⟨ψ| \^A(t) |ψ⟩. \\ \end{gathered}\]

観測量の固有値は描像に依らない. 実際, 観測量 \(A\) に対し,

\[\begin{aligned} \^A(t) |a,t⟩ &= a |a,t⟩ \\ ⇔ \^U^{-1}(t) \^A \^U(t) \^U^{-1}(t) |a⟩ &= a \^U^{-1}(t) |a⟩ \\ ⇔ \^U^{-1}(t) \^A |a⟩ &= \^U^{-1}(t) a |a⟩ \\ ⇔ \^A |a⟩ &= a |a⟩ \\ \end{aligned}\]

また交換子 \([\^A, \^B] ≡ \^A \^B - \^B \^A\) の時間変化は

\[\begin{aligned} {[}\^A(t), \^B(t){]} &= [\^U^{-1}(t) \^A \^U(t), \^U^{-1}(t) \^B \^U(t)] \\ &= \^U^{-1}(t) \^A \^U(t) \^U^{-1}(t) \^B \^U(t) - \^U^{-1}(t) \^B \^U(t) \^U^{-1}(t) \^A \^U(t) \\ &= \^U^{-1}(t) \^A \^B \^U(t) - \^U^{-1}(t) \^B \^A \^U(t) \\ &= \^U^{-1}(t) (\^A \^B - \^B \^A) \^U(t) \\ &= \^U^{-1}(t) [\^A, \^B] \^U(t) \\ &=: [\^A, \^B]_\mathrm{H}. \end{aligned}\]

時間発展演算子の具体的な表式は量子化と呼ばれる要請によってはじめて得られる.

正準量子化

古典論における Poisson 括弧 \(\{⋅,⋅\}_\mathrm{P}\) に対し, 量子論における交換関係 \(\displaystyle \frac1{iℏ}[\^⋅,\^⋅]_\mathrm{H}\) が対応するという要請を正準量子化という:

\[\{A,B\}_\mathrm{P} \overset{\text{要請}}{\mapsto} \frac1{iℏ}[\^A_\mathrm{H}(t),\^B_\mathrm{H}(t)].\]

一粒子の正準変数 \((q^i, p_i)\) に対して正準量子化すると,

\[\begin{aligned} \{ q^i, p_j \}_\mathrm{P} &= δ_j^i, \\ \overset{\text{正準量子化}}{⟶} \frac1{iℏ} [{\^q^i}{}_\mathrm{H}, {\^p_j}{}_\mathrm{H}] &= δ_j^i, \\ \end{aligned}\] \[\begin{aligned} \{ q^i, q^j \}_\mathrm{P} = \{ p_i, p_j \}_\mathrm{P} &= 0, \\ \overset{\text{正準量子化}}{⟶} \frac1{iℏ} [{\^q^i}{}_\mathrm{H}, {\^q^j}{}_\mathrm{H}] = \frac1{iℏ} [{\^p_i}{}_\mathrm{H}, {\^p_j}{}_\mathrm{H}] &= 0. \\ \end{aligned}\]

したがって, 演算子 \((\^q^i, \^p_i)\) の交換関係が得られる:

一粒子の正準変数の演算子 \((\^q^i, \^p_i)\) は正準交換関係をと呼ばれる以下の交換関係を満たす:

\[\begin{gathered} {[}{\^q^i}, {\^p_j}{]} = iℏ δ_i^j, \\ [\^q^i, \^q^j] = [\^p_i, \^p_j] = 0. \end{gathered}\]

正準変数を変数として持つ物理量 \(A = A(q^i, p_i)\) に対応する演算子は, 正準変数の演算子を形式的に代入したものである:

\[A = A(q^i, p_i) \quad \overset{\text{正準量子化}}{⟶} \quad \^A |ψ(t)⟩ = A(\^q^i, \^p_i) |ψ(t)⟩.\]

TODO: ただし, \(\^A\) が Hermite になるよう量子化前に正準変数の順序を調整する.

また, \(B\) 表示した波動関数に対する演算子 \(\^A_B\) について, 同様に正準変数の演算子を代入したものとなる:

\[A = A(q^i, p_i) \quad \overset{\text{正準量子化}}{⟶} \quad \^A_B ψ(b,t) = A({\^q^i}{}_B, {\^p_i}{}_B) ψ(b,t).\]

特に, 正準変数の演算子が \(b\) とそれの微分の関数 \(({\^q^i}{}_B, {\^p_i}{}_B) = ({q^i}{}_B(b, \pdv{}{b}), {p_i}{}_B(b, \pdv{}{b}))\) であるとき, これを Schrödinger 表現という.

時間発展演算子と運動方程式

時間発展演算子の具体的な表式と, 系の時間発展を記述する運動方程式を求めよう.

時間に依存する物理量 \(A(q^i,p_i,t)\) の時間発展を正準量子化して,

\[\begin{aligned} \dv{A}{t} &= \{A, H\}_\mathrm{P} + \pdv{A}{t} \\ \overset{\text{正準量子化}}{⟶} \quad \dv{\^A_\mathrm{H}}{t} &= \frac1{iℏ}[\^A_\mathrm{H},\^H] + \pqty{\dv{\^A}{t}}_\mathrm{H}. \\ \end{aligned}\]

これは観測量 \(A\) の時間発展を表した方程式である:

時間に依存する物理量 \(A(q^i,p_i,t)\) に対応する演算子 \(\^A(q^i,p_i,t)\) の時間発展は以下であり, これを Heisenberg の運動方程式 Heisenberg equation という:

\[iℏ \dv{\^A_\mathrm{H}}{t} = [\^A_\mathrm{H},\^H] + iℏ \pqty{\dv{\^A}{t}}_\mathrm{H}.\]

特に, 時間に依存しない物理量 \(A(q^i,p_i)\) の Heisenberg の運動方程式は,

\[iℏ \dv{\^A_\mathrm{H}}{t} = [\^A_\mathrm{H},\^H].\]

この運動方程式を用いて, 時間発展演算子 \(\^U(t)\) の具体的な表式を求める. 両辺それぞれ計算して,

\[\begin{aligned} iℏ \dv{\^A_\mathrm{H}}{t} &= iℏ \dv{}{t} \bqty{\^U^{-1}(t) \^A \^U(t)} \\ &= iℏ \dv{\^U^{-1}(t)}{t} \^A \^U(t) + iℏ \^U^{-1}(t) \^A \dv{\^U(t)}{t}, \\ [\^A_\mathrm{H},\^H_\mathrm{H}] &= \^U^{-1}(t) \^A \^H \^U(t) + \^U^{-1}(t) \^H \^A \^U(t). \end{aligned}\]

辺々比較して,

\[iℏ \dv{\^U(t)}{t} = \^H \^U(t).\]

これは時間発展演算子 \(\^U(t)\) に関する微分方程式であり, これを解くことで \(\^U(t)\) の表式が得られる:

Hamiltonian が時間に陽に依存しないとき, 時間発展演算子は初期時間に依存せず,

\[\^U(t-t_0) = e^{- \frac{i}{ℏ} {(t-t_0) \^H}},\]

または Hamiltonian が時間に陽に依存するとき, 時間発展演算子は初期時間に依存し,

\[\^U(t, t_0) = T \exp \bqty{- \frac{i}{ℏ} ∫_{t_0}^t \d{t'} \^H(t')}.\]

ただし, \(T\) は時間順序積 time ordered product で, 演算子の積を時間の順序関係に応じて並び替える: Heaviside の階段関数 \(θ(t)\) を用いて,

\[\begin{aligned} T \^A(t_1) \^B(t_2) &= θ(t_1 - t_2) \^A(t_1) \^B(t_2) + θ(t_2 - t_1) \^B(t_2) \^A(t_1) \\ &= \begin{cases} \^A(t_1) \^B(t_2), & (t_1 > t_2) \\ \^B(t_2) \^A(t_1). & (t_2 > t_1) \\ \end{cases} \end{aligned}\]

つまり, 先に右に作用する演算子ほど「若い」ように並び換える.

実際, \(\^U(t)\) に関する微分方程式を両辺積分して,

\[\begin{aligned} &\ \^U(t,t_0) \\ =&\ 1 + \frac1{iℏ} ∫_{t_0}^t \d{t_1} \^H(t_1) \^U(t_1, t_0) \\ &\ \quad (\text{$\^U(t_1,t_0)$ を代入}) \\ =&\ 1 + \frac1{iℏ} ∫_{t_0}^t \d{t_1} \^H(t_1) + \frac1{iℏ} ∫_{t_0}^t \d{t_1} \frac1{iℏ} ∫_{t_0}^{t_1} \d{t_2} \^H(t_1) \^H(t_2) \^U(t_2, t_0) \\ &\ \quad (\text{繰り返し $\^U(t_j,t_0)$ を代入}) \\ =&\ 1 + \frac1{iℏ} ∫_{t_0}^t \d{t_1} \^H(t_1) + \frac1{iℏ} ∫_{t_0}^t \d{t_1} \frac1{iℏ} ∫_{t_0}^{t_1} \d{t_2} \^H(t_1) \^H(t_2) \\ &\ \qquad \qquad + \frac1{iℏ} ∫_{t_0}^t \d{t_1} \frac1{iℏ} ∫_{t_0}^{t_1} \d{t_2} \frac1{iℏ} ∫_{t_0}^{t_2} \d{t_3} \^H(t_1) \^H(t_2) \^H(t_3) + ⋯ \\ =&\ ∑_{n=0}^∞ \frac1{(iℏ)^n} ∫_{t_0}^t \d{t_1} ∫_{t_0}^{t_1} \d{t_2} ⋯ ∫_{t_0}^{t_{n-1}} \d{t_n} \^H(t_1) \^H(t_2) ⋯ \^H(t_n) \\ &\ \quad (\text{$t>t_1>…>t_{n-1}$ であることに注意して, 時間順序積を作用させる}) \\ =&\ T ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} \frac1{(iℏ)^n} ∫_{t_0}^t \d{t_1} ∫_{t_0}^t \d{t_2} ⋯ ∫_{t_0}^t \d{t_n} \^H(t_1) \^H(t_2) ⋯ \^H(t_n) \\ =&\ T ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} \bqty{\frac1{iℏ} ∫_{t_0}^t \d{t} \^H(t)}^n \\ =&\ T \exp \bqty{\frac1{iℏ} ∫_{t_0}^t \d{t} \^H(t)}. \end{aligned}\]

\(\^U(t)\) に関する微分方程式 \(iℏ \d{\^U(t)} / \d{t} = \^H \^U(t)\) を \(|ψ⟩\) に作用させると,

\[\begin{aligned} iℏ \dv{\^U(t)}{t} |ψ⟩ &= \^H \^U(t) |ψ⟩. \\ ∴ \quad iℏ \dv{}{t} |ψ(t)⟩ &= \^H |ψ(t)⟩. \end{aligned}\]

これは状態 \(|ψ(t)⟩\) の時間発展を表した方程式である:

状態 \(|ψ(t)⟩\) 時間発展は以下であり, これを Schrödinger の運動方程式 Schrödinger equation という:

\[iℏ \dv{}{t} |ψ(t)⟩ = \^H |ψ(t)⟩.\]

Schrödinger の運動方程式に左から \(⟨q|\) を内積させると,

\[⟨q| \^H |ψ(t)⟩ = iℏ \pdv{}{t} ψ(q, t).\]

これは Hamiltonian の Schrödinger 表現 \(\^H ψ(q, t) = ⟨q| \^H |ψ(t)⟩\) である:

位置 \(q\) 表示の波動関数 \(ψ(q, t)\) に対して, Hamiltonian \(\^H\) の Schrödinger 表現は,

\[\^H ψ(q, t) = iℏ \pdv{}{t} ψ(q, t).\]

位置演算子と運動量演算子

正準変数の演算子 \((\^q^i, \^p_i)\) について Schrödinger 表現を求める.

位置 \(q\) 表示の波動関数 \(ψ(q, t)\) に対して, 位置演算子 \(\^q\) の Schrödinger 表現は,

\[\^q^i ψ(q, t) = q^i ψ(q, t).\]

実際,

\[\^q^i ψ(q,t) = ⟨q| \^q^i |ψ(t)⟩ = q^i ⟨q ∣ ψ(t)⟩ = q^i ψ(q,t).\]

これに対応する \(\^p_i\) の表現を求める. ある定数 \(a^i\) に対し, \(e^{\frac{i}{ℏ} a^j \^p_j} \^q^i e^{- \frac{i}{ℏ} a^j \^p_j} = \^q^i + a^i\) である. 実際,

\[\begin{aligned} &\ \dv{(e^{\frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} \^q^i e^{- \frac{i}{ℏ} a^k \^p_k})}{a^j} \\ =&\ \dv{e^{\frac{i}{ℏ} a^k \^p_k}}{a^j} \^q^i e^{- \frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} + e^{\frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} \^q^i \dv{e^{- \frac{i}{ℏ} a^k \^p_k}}{a^j} \\ =&\ \frac{i}{ℏ} \^p_j e^{\frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} \^q^i e^{- \frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} - \frac{i}{ℏ} e^{\frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} \^q^i \^p_j e^{- \frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} \\ =&\ \frac{i}{ℏ} \^p_j e^{\frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} \^q^i e^{- \frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} - \frac{i}{ℏ} e^{\frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} (i ℏ δ_i^j + \^p_j \^q^i) e^{- \frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} \\ &\ \quad (∵ [\^q^i, \^p_j] = \^q^i \^p_j - \^p_j \^q^i = i ℏ δ_i^j) \\ =&\ \frac{i}{ℏ} \^p_j e^{\frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} \^q^i e^{- \frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} + δ_i^j - \frac{i}{ℏ} e^{\frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} \^p_j \^q^i e^{- \frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} \\ &\ \quad (∵ [e^{\frac{i}{ℏ} a^k \^p_k}, \^p_j] = e^{\frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} \^p_j - \^p_j e^{\frac{i}{ℏ} a^k \^p_k} = 0) \\ =&\ δ_i^j. \end{aligned}\]

したがって,

\[\^q^i e^{- \frac{i}{ℏ} a^j \^p_j} |q⟩ = e^{- \frac{i}{ℏ} a^j \^p_j} (\^q^i + a^i) |q⟩ = (q^i + a^i) e^{- \frac{i}{ℏ} a^j \^p_j} |q⟩.\] \[∴ e^{- \frac{i}{ℏ} a^i \^p_i} |q⟩ = |q+a⟩.\]

一般の状態ベクトル \(|ψ(t)⟩\) に \(e^{- \frac{i}{ℏ} a^i \^p_i}\) を作用させることを考える:

\[\begin{aligned} e^{- \frac{i}{ℏ} a^i \^p_i} |ψ(t)⟩ &= e^{- \frac{i}{ℏ} a^i \^p_i} \pqty{∫ \d{{}^D q'} |q'⟩ ⟨q'|} |ψ(t)⟩ = ∫ \d{{}^D q'} e^{- \frac{i}{ℏ} a^i \^p_i} |q'⟩ ⟨q' ∣ ψ(t)⟩ \\ &= ∫ \d{{}^D q'} ψ(q',t) |q'+a⟩ \\ &= ∫ \d{{}^D q'} ψ(q'-a,t) |q'⟩. \end{aligned}\]

左から \(⟨q|\) をかけると,

\[\begin{aligned} ⟨q| e^{- \frac{i}{ℏ} a^i \^p_i} |ψ(t)⟩ &= ⟨q| ∫ \d{{}^D q'} ψ(q'-a,t) |q'⟩ = ∫ \d{{}^D q'} ψ(q'-a,t) ⟨q ∣ q'⟩ \\ &= ∫ \d{{}^D q'} ψ(q'-a,t) δ^D(q - q') \\ &= ψ(q-a,t). \end{aligned}\]

ただし固有状態の直交性 \(⟨q ∣ q'⟩ = δ^D(q - q')\) を用いた. \(a\) について1次まで羃展開して,

\[⟨q| \pqty{1 - \frac{i}{ℏ} a^i \^p_i} |ψ(t)⟩ = \pqty{1 - a^i \pdv{}{q^i}} ψ(q,t). \quad ∴ - \frac{i}{ℏ} ⟨q| \^p_i |ψ(t)⟩ = - \pdv{}{q^i} ψ(q,t).\] \[∴ \^p_i ψ(q,t) = ⟨q| \^p_i |ψ(t)⟩ = - iℏ \pdv{}{q^i} ψ(q,t).\]

位置 \(q\) 表示の波動関数 \(ψ(q, t)\) に対して, 運動量演算子 \(\^p\) の Schrödinger 表現は,

\[\^p_i ψ(q, t) = - iℏ \pdv{}{q^i} ψ(q, t).\]

運動量 \(p\) の固有波動関数 \(ψ_p(q,t)\) に対し,

\[- i ℏ \pdv{}{q^i} ψ_p(q,t) = \^p_i ψ_p(q,t) = p_i ψ_p(q,t).\] \[∴ ψ_p(q,t) = ⟨q ∣ p⟩ = \frac1{(\sqrt{2π ℏ})^D} e^{\frac{i}{ℏ} q^i p_i}.\]

ただし, \(D\) は座標 \(q\) の次元とし, 固有状態の直交性を満たすよう定数を決めた:

\[\begin{aligned} ⟨p',t ∣ p,t⟩ &= ⟨p',t| \pqty{∫ \d{{}^Dq} |q,t⟩ ⟨q,t|} |p,t⟩ = ∫ \d{{}^D q} ⟨p',t ∣ q,t⟩ ⟨q,t ∣ p,t⟩ \\ &= ∫ \d{{}^D q} ψ_{p'}^{*}(q,t) ψ_p(q,t) = ∫ \frac{\d{{}^D q}}{(2π ℏ)^D} e^{\frac{i}{ℏ} q^i (p_i - {p'}_i)} \\ &= δ^D(p_i - {p'}_i). \end{aligned}\]

Schrödinger 方程式

Schrödinger の運動方程式に \(\^H = H(\^q^i, \^p_i)\) やその表現を代入したものもまた Schrödinger 方程式という: 位置 \(q\) 表示では,

\[\begin{aligned} H\pqty{q^i, - iℏ \pdv{}{q^i}} ψ(q, t) &= iℏ \pdv{}{t} ψ(q, t). \end{aligned}\]

TODO: 定常状態の Schrödinger 方程式

例: 一次元一粒子系

一次元一粒子系の Hamiltonian は

\[H(q,p) = \frac{p^2}{2m} + V(q).\]

正準量子化して, Hamiltonian の演算子は

\[H(\^q, \^p) = \frac{\^p^2}{2m} + V(\^q) = - \frac{ℏ^2}{2m} \pdv{{}^2}{q^2} + V(q).\]

したがって Schrödinger 方程式は,

\[\bqty{- \frac{ℏ^2}{2m} \pdv{{}^2}{q^2} + V(q)} ψ(q, t) = iℏ \pdv{}{t} ψ(q, t).\]

例: 三次元一粒子系

三次元一粒子系の Hamiltonian は

\[H(\bm{x},\bm{p}) = \frac{\bm{p}^2}{2m} + V(\bm{x}).\]

正準量子化して, Hamiltonian の演算子は

\[H(\^{\bm{x}}, \^{\bm{p}}) = \frac{\^{\bm{p}}^2}{2m} + V(\^{\bm{x}}) = - \frac{ℏ^2}{2m} \laplacian + V(\bm{x}).\]

したがって Schrödinger 方程式は,

\[\bqty{- \frac{ℏ^2}{2m} \laplacian + V(\bm{x})} ψ(\bm{x}, t) = iℏ \pdv{}{t} ψ(\bm{x}, t).\]

生成・消滅演算子

演算子 \(\^a\) とその Hermite 共役 \(\^a^†\) が次の交換関係を満たすとき, \(\^a\) を消滅演算子 annihilation operator, \(\^a^†\) を生成演算子 creation operator という:

\[\begin{gathered} {}[\^a, \^a^†] = 1, \\ [\^a, \^a] = [\^a^†, \^a^†] = 0. \end{gathered}\]

また, Hermite 演算子 \(\^N ≡ \^a^† \^a\) を数演算子 the number operation といい, \(\^N\) の固有値 \(n\) に属する固有状態を \(|n⟩\) とする:

\[\^N|n⟩ = n|n⟩.\]

\(\^a^†|n⟩\) は固有値 \(n+1\) に属する固有状態である:

\[\begin{aligned} \^N\^a^†|n⟩ &= \^a^†\^a\^a^†|n⟩ \\ &= \^a^†(\^a^†\^a + 1)|n⟩ \\ &= \^a^†(\^N + 1)|n⟩ \\ &= (n + 1)\^a^†|n⟩. \end{aligned}\]

したがって \(|n+1⟩\) は \(\^a^†|n⟩\) を正規化して,

\[\begin{gathered} |n+1⟩ = \frac{\^a^†|n⟩}{\sqrt{⟨n|\^a\^a^†|n⟩}} = \frac{\^a^†|n⟩}{\sqrt{⟨n|(\^N + 1)|n⟩}} = \frac{\^a^†|n⟩}{\sqrt{n+1}}. \\ ∴ \^a^†|n⟩ = \sqrt{n+1}|n+1⟩. \end{gathered}\]

また, 同様に \(\^a|n⟩\) は固有値 \(n-1\) に属する固有状態である:

\[\begin{aligned} \^N\^a|n⟩ &= \^a^†\^a\^a|n⟩ \\ &= (\^a\^a^† - 1)\^a|n⟩ \\ &= \^a(\^a^†\^a - 1)|n⟩ \\ &= \^a(\^N - 1)|n⟩ \\ &= (n - 1)\^a|n⟩. \end{aligned}\]

したがって \(|n-1⟩\) は \(\^a|n⟩\) を正規化して,

\[\begin{gathered} |n-1⟩ = \frac{\^a|n⟩}{\sqrt{⟨n|\^a^†\^a|n⟩}} = \frac{\^a|n⟩}{\sqrt{⟨n|\^N|n⟩}} = \frac{\^a|n⟩}{\sqrt{n}}. \\ ∴ \^a|n⟩ = \sqrt{n}|n-1⟩. \end{gathered}\]

特に \(n=0\) のときの状態 \(|0⟩\) を真空状態といい, \(\^a|0⟩ = 0\) を満たす:

\[⟨0|\^a^†\^a|0⟩ = ⟨0|\^N|0⟩ = 0.\]

\(n<0\) は許されない: ある固有値 \(n<0\) に属する固有状態 \(|n⟩\) に対し,

\[n = ⟨n|\^N|n⟩ = ⟨n|\^a^†\^a|n⟩ = ⟨n'∣n'⟩ ≥ 0.\]

ただし \(|n'⟩ ≡ \^a|n⟩\). これは \(n<0\) に矛盾する. したがって, \(n≥0\) である. また, \(n\) が正の非整数とすると, 繰り返し \(\^a\) を左右することで \(n\) を負にすることができてしまうから, \(n\) は非整数ではない. したがって, \(n\) は 0 以上の整数である: \(n = 0,1,2,…\).

TODO: 調和振動子による例

不確定性原理

物理量 \(A\) の分散 \((ΔA)^2 ≡ ⟨(A-⟨A⟩)^2⟩\) に対し, 以下の関係が成立する:

\[(ΔA)^2 (ΔB)^2 \geq \frac14 \abs{⟨[A,B]⟩}^2.\]

実際,

\[\begin{aligned} (ΔA)^2 (ΔB)^2 &= ⟨(A-⟨A⟩)^2⟩ ⟨(B-⟨B⟩)^2⟩ \\ &≥ \abs{⟨(A-⟨A⟩)(B-⟨B⟩)⟩}^2 \\ &≥ \abs{\Im{⟨(A-⟨A⟩)(B-⟨B⟩)⟩}}^2 \\ &≥ \frac14\abs{⟨(A-⟨A⟩)(B-⟨B⟩)⟩ - ⟨(B-⟨B⟩)(A-⟨A⟩)⟩}^2 \\ &= \frac14\abs{⟨[A-⟨A⟩,B-⟨B⟩]⟩}^2 \\ &= \frac14\abs{⟨[A,B]⟩}^2. \\ \end{aligned}\]

相互作用描像

Hamiltonian \(\^H\) を, 相互作用を含まない自由項 \(H_0\) と相互作用項 \(H_\mathrm{I}\) に分ける:

\[H(t) = H_0 + H_\mathrm{I}(t).\]

このとき, 以下を満たす演算子 \(\^A_\mathrm{T}(t)\) と状態ベクトル \(|ψ(t)⟩\) は相互作用描像 Interaction picture と呼ばれる:

\[\begin{gathered} iℏ \dv{\^A_\mathrm{T}}{t} = [\^A_\mathrm{T},\^H_0], \\ iℏ \dv{}{t} |ψ(t)⟩_\mathrm{T} = \^H_\mathrm{I} |ψ(t)⟩_\mathrm{T}. \end{gathered}\]

第 1 式より, Schrödinger 描像と相互作用描像の演算子の対応が得られる:

\[\^A_\mathrm{T}(t) = e^{\frac{i}{ℏ}(t-t_0)\^H_0} \^A e^{-\frac{i}{ℏ}\^H_0(t-t_0)}.\]

また, 期待値がどの描像でも等しいという条件

\[{}_\mathrm{T}⟨ψ(t)| \^A_\mathrm{T}(t) |ψ(t)⟩_\mathrm{T} = {}_\mathrm{T}⟨ψ(t)| e^{i\^H_0(t-t_0)} \^A e^{-i\^H_0(t-t_0)} |ψ(t)⟩_\mathrm{T} = ⟨ψ(t)| \^A |ψ(t)⟩\]

より, Schrödinger 描像と相互作用描像の状態ベクトルの対応が得られる:

\[|ψ(t)⟩ = e^{-i\^H_0(t-t_0)} |ψ(t)⟩_\mathrm{T}.\]

また, 時間発展演算子と同様の議論から,

\[|ψ(t)⟩_\mathrm{T} = T \exp \bqty{- \frac{i}{ℏ} ∫_{t_0}^t \d{t'} \^H_\mathrm{I}(t')} |ψ(t_0)⟩_\mathrm{T}\]

経路積分量子化

時刻 \(t_i\) から \(t_f\) の運動で粒子が \(q_i ≡ q(t_i)\) から \(q_f ≡ q (t_f)\) へ移動するときの作用は

\[S[q(t)] = ∫_{t_i}^{t_f} \d{t} L(q, \.q, t)\]

で与えられる. このとき, 汎関数積分を用いた次の量子化が定義される:

状態 \(|q_i,t_i⟩\) から状態 \(|q_f,t_f⟩\) への確率振幅は以下であるという要請を経路積分量子化 Path integral formulation という:

\[\begin{gathered} K(q_f,t_f;q_i,t_i) ≡ ⟨q_f,t_f ∣ q_i,t_i⟩ \overset{\text{要請}}{=} ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ e^{\frac{i}{ℏ} S[q(t)]}. \end{gathered}\]

また, この \(K(q_f,t_f;q_i,t_i)\) を伝播関数という. これは Green 関数とも呼ばれ, 以下を満たす:

\[\pqty{H(q^i,p_i,t)-iℏ\pdv{}{t}} K(q,t;q_0,t_0) = -iℏδ^D(q-q_0)δ(t-t_0).\]

位置表示の波動関数に対して以下が成立する:

\[ψ(q,t) = ∫ \d{{}^D q_0} K(q,t;q_0,t_0) ψ(q_0,t_0).\]

実際,

\[\begin{aligned} ψ(q,t) &= ⟨q,t ∣ ψ⟩ \\ &= ⟨q,t| \pqty{∫ \d{{}^D q_0} |q_0,t_0⟩ ⟨q_0,t_0|} |ψ⟩ \\ &= ∫ \d{{}^D q_0} ⟨q,t∣q_0,t_0⟩ ⟨q_0,t_0∣ψ⟩ \\ &= ∫ \d{{}^D q_0} K(q,t;q_0,t_0) ψ(q_0,t_0). \end{aligned}\]

経路積分量子化は古典極限を取ることで最小作用の原理を与える. \(q'=q+δq\) として鞍点法を用いると,

\[\begin{aligned} K(q_f,t_f;q_i,t_i) &= ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq' \ e^{\frac{i}{ℏ} S[q'(t)]} \\ &\quad \pqty{\text{$q'=q+δq$ のとき $\displaystyle S[q'] = S[q] + ∫_{t_i}^{t_f} \d{t'} \fdv{S[q(t)]}{q(t')} δq(t')$}} \\ &= e^{\frac{i}{ℏ} S[q(t)]} ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dδq \ \exp\pqty{\frac{i}{ℏ} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t'} \fdv{S[q(t)]}{q(t')} δq(t')}. \\ \end{aligned}\]

したがって, \(ℏ→0\) の極限で \(|K(q_f,t_f;q_i,t_i)|^2=1\) となる条件は

\[\fdv{S[q^i(t)]}{q^j(t')} = 0 \quad (t_1<t'<t_2)\]

となる. これは最小作用の原理に他ならない.

例: 一次元自由一粒子系

一次元自由一粒子系の Lagrangian は

\[L(q,\.q,t) = \frac{m}{2} \.q^2.\]

このときの伝播関数を求めると,

\[\begin{aligned} K(q_f,t_f;q_i,t_i) &= ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}q \ \exp\bqty{\frac{i}{ℏ} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t} \frac{m}{2} \.q^2} \\ &= \sqrt{\frac{m}{2πiℏ(t_f-t_i)}} \exp\bqty{\frac{im(q_f-q_i)^2}{2ℏ(t_f-t_i)}}. \\ \end{aligned}\]

したがって, 一般の位置表示の波動関数 \(ψ(q,t)\) は,

\[ψ(q,t) = ∫\d{q_0} \sqrt{\frac{m}{2πiℏ(t-t_0)}} \exp\bqty{\frac{i}{ℏ} \frac{m}{2} \frac{(q-q_0)^2}{t-t_0}} × ψ(q_0,t_0).\]

TODO: 調和振動子

\(n\) 点 Green 関数と生成汎関数

\(t_f>t_m>t_i\) (\(m=1,…,n\)) に対し

\[⟨q_f,t_f| T\^q(t_1)⋯\^q(t_n) |q_i,t_i⟩ = ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ q(t_1)⋯q(t_n) e^{\frac{i}{ℏ} S[q(t)]}\]

\(n\) 点 Green 関数という. ただし \(T\) は時間順序積.

実際, \(t_f>t_{σ_1}>⋯>t_{σ_n}>t_i\) を満たす適当な置換 \(σ = \pmqty{1&⋯&n\\σ_1&⋯&σ_n}\) を用いると,

\[\begin{aligned} &\ ⟨q_f,t_f| T\^q(t_1)⋯\^q(t_n) |q_i,t_i⟩ \\ =&\ ⟨q_f,t_f| \^q(t_{σ_1})⋯\^q(t_{σ_n}) |q_i,t_i⟩ \\ =&\ ⟨q_f,t_f| \^q(t_{σ_1}) \pqty{ ∫\d{{}^D q_{σ_1}} |q_{σ_1},t_{σ_1}⟩ ⟨q_{σ_1},t_{σ_1}|} ⋯ \^q(t_{σ_n}) \pqty{∫\d{{}^D q_{σ_n}}|q_{σ_n},t_{σ_n}⟩ ⟨q_{σ_n},t_{σ_n}|} |q_i,t_i⟩ \\ =&\ ∫\d{{}^D q_{σ_1}}⋯∫\d{{}^D q_{σ_n}} ⟨q_f,t_f| \^q(t_{σ_1}) |q_{σ_1},t_{σ_1}⟩ ⟨q_{σ_1},t_{σ_1}| ⋯\^q(t_{σ_n}) |q_{σ_n},t_{σ_n}⟩ ⟨q_{σ_n},t_{σ_n}∣q_i,t_i⟩ \\ =&\ ∫\d{{}^D q_{σ_1}}⋯∫\d{{}^D q_{σ_n}} q_{σ_1}⋯q_{σ_n} ⟨q_f,t_f∣q_{σ_1},t_{σ_1}⟩ ⟨q_{σ_1},t_{σ_1}| ⋯ |q_{σ_n},t_{σ_n}⟩ ⟨q_{σ_n},t_{σ_n}∣q_i,t_i⟩ \\ =&\ ∫\d{{}^D q_{σ_1}}⋯∫\d{{}^D q_{σ_n}} q_{σ_1}⋯q_{σ_n} \pqty{∫_{q_{σ_1}}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ e^{\frac{i}{ℏ} S_{t∈[t_{σ_1},t_f]}[q]}} \pqty{∫_{q_{σ_2}}^{q_{σ_1}} \mathcal{D}^Dq \ e^{\frac{i}{ℏ} S_{t∈[t_{σ_2},t_{σ_1}]}[q]}} ⋯ \pqty{∫_{q_i}^{q_{σ_n}} \mathcal{D}^Dq \ e^{\frac{i}{ℏ} S_{t∈[t_i,t_{σ_n}]}[q]}} \\ =&\ ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ q(t_{σ_1})⋯q(t_{σ_n}) e^{\frac{i}{ℏ} S[q(t)]}. \\ =&\ ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ q(t_1)⋯q(t_n) e^{\frac{i}{ℏ} S[q(t)]}. \\ \end{aligned}\]

これは置換 \(σ\) に依らず成立する.

\(n\) 点 Green 関数は次に定義される生成汎関数から機能的に得ることができる:

\[\begin{aligned} Z[J(t)] &≡ ⟨q_f,t_f| T\exp\bqty{\frac{i}{ℏ} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t} J(t)\^q(t)} |q_i,t_i⟩ \\ &= ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ \exp\bqty{\frac{i}{ℏ} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t} J(t)q(t)} e^{\frac{i}{ℏ} S[q(t)]} \\ &= ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \exp\bqty{\frac{i}{ℏ} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t} \qty{L(q(t),\.q(t),t) + J(t)q(t)}} \\ \end{aligned}\]

で定義される汎関数 \(Z[J(t)]\) を生成汎関数という. この生成汎関数を \(n\) 回汎関数微分すると \(n\) 点 Green 関数が得られる:

\[(-i)^n ℏ^n \left. \frac{δ^n Z[J(t)]}{δJ(t_1)⋯δJ(t_n)} \right|_{J=0} = ⟨q_f,t_f| T\^q(t_1)⋯\^q(t_n) |q_i,t_i⟩.\]

実際, 生成汎関数の汎関数積分表示は

\[\begin{aligned} &\ ⟨q_f,t_f| T\exp\bqty{\frac{i}{ℏ} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t} J(t)\^q(t)} |q_i,t_i⟩ \\ =&\ ⟨q_f,t_f| T ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} \bqty{\frac{i^n}{ℏ^n} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_1} ⋯ ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_n} J(t_1)⋯J(t_n) \^q(t_1)⋯\^q(t_n)} |q_i,t_i⟩ \\ =&\ ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} \frac{i^n}{ℏ^n} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_1} ⋯ ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_n} J(t_1)⋯J(t_n) ⟨q_f,t_f| T\^q(t_1)⋯\^q(t_n)|q_i,t_i⟩ \\ =&\ ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} \frac{i^n}{ℏ^n} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_1} ⋯ ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_n} J(t_1)⋯J(t_n) ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ q(t_1)⋯q(t_n) e^{\frac{i}{ℏ} S[q(t)]} \\ =&\ ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ \bqty{∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} \frac{i^n}{ℏ^n} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_1} ⋯ ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_n} J(t_1)⋯J(t_n) q(t_1)⋯q(t_n)} e^{\frac{i}{ℏ} S[q(t)]} \\ =&\ ∫_{q_i}^{q_f} \mathcal{D}^Dq \ \exp\bqty{\frac{i}{ℏ} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t} J(t)q(t)} e^{\frac{i}{ℏ} S[q(t)]}. \\ \end{aligned}\]

また, 式変形の途中

\[Z[J(t)] = ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_1} ⋯ ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_n} \bqty{\frac{i^n}{ℏ^n} ⟨q_f,t_f| T\^q(t_1)⋯\^q(t_n)|q_i,t_i⟩} J(t_1)⋯J(t_n)\]

を \(Z[J(t)]\) の \(J=0\) まわりの汎関数冪展開

\[Z[J(t)] = ∑_{n=0}^∞ \frac1{n!} ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_1} ⋯ ∫_{t_i}^{t_f} \d{t_n} \left. \frac{δ^n Z[J(t)]}{δJ(t_1)⋯δJ(t_n)} \right|_{J=0} J(t_1)⋯J(t_n)\]

と比較すると \(n\) 点 Green 関数との関係式が得られる.

非相対論的方程式

非相対論的な一粒子 \((\bm{x},\bm{p})\) の分散関係

\[H(\bm{x},\bm{p},t) = \frac{\bm{p}^2}{2m} + V(\bm{x},t)\]

の量子化を考える. このときの Schrödinger 方程式は,

\[\pqty{\frac{{\^{\bm{p}}}^2}{2m} + V(\^{\bm{x}},t)} |ψ(t)⟩ = iℏ \dv{}{t} |ψ(t)⟩,\]

あるいは位置 \(\bm{x}\) 表示の Schrödinger 方程式は,

\[\pqty{-\frac{ℏ^2}{2m} \laplacian + V(\bm{x},t)} ψ(\bm{x},t) = iℏ \pdv{}{t} ψ(\bm{x},t).\]

一般に Schrödinger 方程式というとき, この方程式を指すことが多い.

非相対論的な一粒子の位置表示の波動関数 \(ψ(\bm{x},t)\) は次の Schrödinger 方程式を満たす:

\[\pqty{-\frac{ℏ^2}{2m} \laplacian + V(\bm{x},t)} ψ(\bm{x},t) = iℏ \pdv{}{t} ψ(\bm{x},t).\]

時間 \(t\) にいて粒子が \(\bm{x}\) に見い出される確率密度を

\[ρ(\bm{x},t) = |ψ(\bm{x},t)|^2\]

とすると, 粒子の確率は連続方程式

\[\pdv{ρ}{t} + \div\bm{j} = 0\]

を満たす. ただし

\[\bm{j}(\bm{x},t) ≡ \frac{ℏ}{2im} \pqty{ψ^* \grad ψ - ψ \grad ψ^*}\]

は確率流密度と呼ばれる. 実際,

\[\begin{aligned} \pdv{ρ}{t} &= \pdv{}{t} (ψ^* ψ) \\ &= \frac1{iℏ} \pqty{ψ^* iℏ\pdv{}{t} ψ + ψ iℏ\pdv{}{t} ψ^*} \\ &= \frac1{iℏ} \bqty{ψ^* \pqty{-\frac{ℏ^2}{2m} \laplacian + V(\bm{x},t)} ψ - ψ \pqty{-\frac{ℏ^2}{2m} \laplacian + V(\bm{x},t)} ψ^*} \\ &= - \frac{ℏ}{2im} \pqty{ψ^* \laplacian ψ - ψ \laplacian ψ^*} \\ &= - \frac{ℏ}{2im} \bqty{\div (ψ^* \grad ψ) - \grad ψ^* \grad ψ - \div (ψ \grad ψ^*) + \grad ψ \grad ψ^*} \\ &= - \div \bqty{\frac{ℏ}{2im} \pqty{ψ^* \grad ψ - ψ \grad ψ^*}} \\ &= - \div \bm{j}. \\ \end{aligned}\]

相対論的方程式

相対論的な一粒子 \((\bm{x},\bm{p})\) の分散関係

\[\pqty{\frac{H(\bm{x},\bm{p})}{c}}^2 = \bm{p}^2 + (mc)^2\]

の量子化を考える. 状態ベクトル \(|ψ(t)⟩\) に Hamiltonian 演算子を二回作用させると,

\[\frac{{\^H}^2}{c^2} |ψ(t)⟩ = \frac1{c^2} \pqty{iℏ\dv{}{t}} \pqty{iℏ\dv{}{t}} |ψ(t)⟩ = - ℏ^2 \frac{\d{{}^2}}{c^2\d{t^2}} |ψ(t)⟩.\]

また, 分散関係より,

\[\frac{{\^H}^2}{c^2} |ψ(t)⟩ = \pqty{\frac{H\pqty{\^{\bm{x}},\^{\bm{p}}}}{c^2}}^2 |ψ(t)⟩ = \bqty{{\^{\bm{p}}}^2 + (mc)^2} |ψ(t)⟩.\]

したがって,

\[\bqty{{\^{\bm{p}}}^2 + (mc)^2} |ψ(t)⟩ = - ℏ^2 \frac{\d{{}^2}}{c^2\d{t^2}} |ψ(t)⟩.\]

特に, 位置 \(\bm{x}\) 表示の波動関数については,

\[\bqty{- ℏ^2 \laplacian + (mc)^2} ψ(\bm{x},t) = - ℏ^2 \frac{∂^2}{c^2∂t^2} ψ(\bm{x},t).\]

あるいは \(x=(x^μ)=(t,\bm{x})\), \((∂^μ) = (c^{-1} ∂_t,\grad)\) として,

\[\bqty{∂^μ∂_μ + \pqty{\frac{mc}{ℏ}}^2} ψ(x) = 0.\]

これは相対論的な一粒子の位置表示の波動関数が満たすべき方程式である:

相対論的な一粒子の位置表示の波動関数 \(ψ(x)\) は次の Klein-Gordon 方程式を満たす:

\[\bqty{∂^μ∂_μ + \pqty{\frac{mc}{ℏ}}^2} ψ(x) = 0.\]

\(d\) 次正方行列 \(α_1\), \(α_2\), \(α_3\), \(β\) に対し,

\[\frac{H}{c} = α^1p_1 + α^2p_2 + α^3p_3 + βmc ≡ \bm{α}⋅\bm{p} + βmc,\]

としたとき, 相対論的分散関係式 \((H/c)^2=p^2+(mc)^2\) を満たす \(\bm{α}\), \(β\) の条件を考える. 2乗すると,

\[\begin{aligned} \pqty{\frac{H}{c}}^2 &= (α^1p_1 + α^2p_2 + α^3p_3 + βmc)(α^1p_1 + α^2p_2 + α^3p_3 + βmc) \\ &= (α^1)^2p_1^2 + (α^2)^2p_2^2 + (α^3)^2p_3^2 + \{α^i,α^j\}p_ip_j|_{i≠j} + \{α^i,β\}p_imc + β^2(mc)^2. \end{aligned}\]

これが分散関係式を満たす条件は

\[β^2=0, \quad \{α^i,β\} = 0, \quad \{α^i,α^j\} = δ^{ij}.\]

定義の式に左から \(β\) をかけて,

\[\frac{H}{c} = \bm{α}⋅\bm{p} + βmc,\]

または左から \(β\) をかけ, \((γ^μ)=(γ^0,\bm{γ})≡(β,β\bm{α})\) とすれば,

\[γ^0\frac{H}{c} = \bm{γ}⋅\bm{p} + mc.\]

ただし, \(γ^μ\) は以下の反交換関係を満たす:

\[\{γ^μ,γ^ν\}=g^{μν}.\]

実際, \(\{α^i,α^j\} = δ^{ij}\) に \(β^2\) を左からをかけると,

\[δ^{ij} = β^2 \{α^i,α^j\} = ββα^iα^j + ββα^jα^i = - βα^iβα^j - βα^jβα^i = - \{βα^i,βα^j\}.\]

ただし, \(βα^i=-α^iβ\) を使った. さて, このときの分散関係式は \(d^2\) 本の連立方程式である. これらを量子化すると,

\[\begin{gathered} \pqty{\bm{α}⋅\bm{p} + βmc} |ψ(t)⟩ = iℏ\frac{\d{}}{c\d{t}} |ψ(t)⟩, \\ \pqty{-iℏ\bm{α}⋅\grad + βmc} ψ(x,t) = iℏ\frac{∂}{c∂t} ψ(x,t). \end{gathered}\]

または \(γ^μ\) を使って,

\[\begin{gathered} \pqty{\bm{γ}⋅\bm{p} + mc} |ψ(t)⟩ = iℏγ^0\frac{\d{}}{c\d{t}} |ψ(t)⟩, \\ \pqty{-iℏ\bm{γ}⋅\grad + mc} ψ(x,t) = iℏγ^0\frac{∂}{c∂t} ψ(x,t). \end{gathered}\]

偏微分をまとめると,

\[\pqty{iγ^μ∂_μ - \frac{mc}{ℏ}} ψ(x,t) = 0.\]

または Dirac 演算子 \(\/∂≡γ^μ∂_μ\) を用いると,

\[\pqty{i\/∂ - \frac{mc}{ℏ}} ψ(x,t) = 0.\]

相対論的な一 Fermi 粒子の位置表示の波動関数 \(ψ(x)\) は次の Dirac 方程式を満たす: \(β^2=0\), \(\{α^i,β\} = 0\), \(\{α^i,α^j\} = δ^{ij}\) を満たす行列 \(α\), \(β\) に対し,

\[ \pqty{-iℏ\bm{α}⋅\grad + βmc} ψ(x,t) = iℏ\frac{∂}{c∂t} ψ(x,t),\]

あるいは, \(\{γ^μ,γ^ν\}=g^{μν}\) を満たす \(γ\) 行列に対し, \(\/∂≡γ^μ∂_μ\) として,

\[ \pqty{i\/∂ - \frac{mc}{ℏ}} ψ(x,t) = 0.\]

時間 \(t\) にいて粒子が \(\bm{x}\) に見い出される確率密度を

\[ρ(\bm{x},t) = ψ^†(\bm{x},t) ψ(\bm{x},t)\]

とすると, 粒子の確率は連続方程式

\[\frac{∂ρ}{c∂t} + \div\bm{j} = 0\]

を満たす. ただし

\[\bm{j}(\bm{x},t) ≡ ψ^†(\bm{x},t)\bm{α}ψ(\bm{x},t)\]

は確率流密度と呼ばれる. あるいは, \(γ\) 行列を用いると, 連続方程式は

\[∂_μ j^μ(x) ≡ 0\]

と簡単になる. 実際,

\[\begin{aligned} \frac{∂ρ}{c∂t} &= \frac{∂}{c∂t} (ψ^† ψ) \\ &= \frac1{iℏ} \bqty{ψ^† \pqty{iℏ\overrightarrow{\frac{∂}{c∂t}}} ψ - ψ^† \pqty{-iℏ\overleftarrow{\frac{∂}{c∂t}}} ψ} \\ &= \frac1{iℏ} \bqty{ψ^† \pqty{-iℏ\bm{α}⋅\overrightarrow{\grad} + βmc} ψ - ψ^† \pqty{iℏ\bm{α}⋅\overleftarrow{\grad} + βmc} ψ} \\ &= - \bqty{ψ^† \bm{α}⋅\overrightarrow{\grad} ψ + ψ^† \bm{α}⋅\overleftarrow{\grad} ψ} \\ &= - \grad⋅\pqty{ψ^† \bm{α} ψ}, \\ \end{aligned}\] \[\begin{aligned} \frac{∂ρ}{c∂t} &= \frac{∂}{c∂t} (\overline{ψ}ψ) ≡ \frac{∂}{c∂t} (ψ^†γ^0ψ) \\ &= \frac1{iℏ} \bqty{ψ^† \pqty{iℏγ^0\overrightarrow{\frac{∂}{c∂t}}} ψ - ψ^† \pqty{-iℏγ^0\overleftarrow{\frac{∂}{c∂t}}} ψ} \\ &= \frac1{iℏ} \bqty{ψ^† \pqty{-iℏ\bm{γ}⋅\overrightarrow{\grad} + mc} ψ - ψ^† \pqty{iℏ\bm{γ}⋅\overleftarrow{\grad} + mc} ψ} \\ &= - \bqty{ψ^† \bm{γ}⋅\overrightarrow{\grad} ψ + ψ^† \bm{γ}⋅\overleftarrow{\grad} ψ} \\ &= - \grad⋅\pqty{ψ^† \bm{γ} ψ}. \\ \end{aligned}\]

ここで \(\overline{ψ}≡ψ^†γ^0\) は Dirac 共役と呼ばれる.

場の量子論との関係

位置 \(\bm{x}\) 表示の波動関数 \(Ψ(\bm{x},t)\) に対し,

\[Ψ(\bm{x},t) = ⟨\bm{x},t∣Ψ⟩ = ⟨0|\^ψ(\bm{x},t)|Ψ⟩\]

を満たすような演算子 \(\^ψ(\bm{x},t)\) を場の演算子という. つまり,

\[|\bm{x},t⟩ = {\^ψ}^†(\bm{x},t)|0⟩.\]

ここで, \(|0⟩\) は真空状態と呼ばれる状態で, \({\^ψ}^†(\bm{x},t)\) を真空状態に作用させることで \((\bm{x},t)\) に1粒子が観測される状態になる. この場の演算子 \(\^ψ(\bm{x},t)\) はある古典場 \(ψ(\bm{x},t)\) を力学変数として量子化した結果に得られるものである.

場の演算子 \(\^ψ(\bm{x},t)\) は波動関数 \(Ψ(\bm{x},t)\) と同じ Schrödinger 方程式を満たす. 実際, Schrödinger 方程式に代入すると,

\[H \pqty{\bm{x},-iℏ\grad} ⟨0|\^ψ(\bm{x},t)|Ψ⟩ = iℏ\pdv{}{t} ⟨0|\^ψ(\bm{x},t)|Ψ⟩.\] \[∴ H \pqty{\bm{x},-iℏ\grad} \^ψ(\bm{x},t) = iℏ\pdv{}{t} \^ψ(\bm{x},t).\]

反対に, 古典場 \(ψ(\bm{x},t)\) が満たす Euler-Lagrange 方程式に対し, その場を量子化した演算子 \(\^ψ(\bm{x},t)\) によって得られる1粒子状態の波動関数 \(Ψ(\bm{x},t) = ⟨\bm{x},t∣Ψ⟩ = ⟨0|\^ψ(\bm{x},t)|Ψ⟩\) は, Euler-Lagrange 方程式のうちの1つと同じ形の Schrödinger 方程式を満たす.

参考文献

Footnotes

  1. ノルム \(|⟨ψ∣ψ⟩|^2\) が有限値に収束するときに限る. 例えば後述の位置の固有状態 \(|q⟩\) のノルムは発散する: \(⟨q∣q⟩=δ^D(q-q)=δ^D(0)\).

particle-q.md