反変べクトルと共変ベクトル
{eμ(x)} の双対基底を {Wμ(x)} とする. それぞれの基底で張られるベクトル u=uμeμ(x), V=VμWμ(x) について, uμ を反変ベクトル, Vμ を共変ベクトルという. 以降, わかりやすいように
⟨V,u⟩≡V(u)
と書くことにする. つまり, 反変ベクトルの基底 {Wμ(x)} は
⟨Wμ(x),eν(x)⟩=δνμ
を満たすから,
⟨V,u⟩=⟨VμWμ(x),uνeν(x)⟩=Vμuν⟨Wμ(x),eν(x)⟩=Vμuμ
となる.
反変ベクトルの共変微分
点 x から有限変位 Δx 移した点 x′≡x+Δx について, ベクトル場 u(x) と u(x′) を比較する. u(x) を点 x′ 上に平行移動したベクトルを u∥(x′) として, 差を
Δu(x′)≡u(x′)−u∥(x′)
とする. 点 x′ 上の基底ベクトル {eμ(x′)} で展開して,
Δu(x′)u∥(x′)u(x′)=Δuμ(x′)eμ(x′),=u∥μ(x′)eμ(x′),=uμ(x′)eμ(x′)
とする. 有限変位を Δx=Δxβ(x′)eβ(x′) と展開すると, 変位とベクトルの差の関係は
Δuμ(x′)=Δxβ(x′)Δuμ(x′)Δxβ(x′)=Δxβ(x′)uμ(x′)−u∥μ(x′)Δxβ(x′).
と書き表せる. さて, 有限変位を Δx→dx, Δxβ(x′)→dxβ(x′) と無限小にして, 共変微分を
∇βuμ≡Δx→0limΔxβ(x′)uμ(x′)−u∥μ(x′),∇βu≡∇βuμeμ(x)=Δx→0limΔxβ(x′)u(x′)−u∥(x′)
と定義する. つまり, dx=dxβeβ(x) に対して
du=dxβ∇βu=∇βuμdxβeμ(x)
と書ける. さて, 共変微分を u=uμeμ(x) に作用させたとき
∇βu=(∂βuμ)eμ(x)+uμ∇βeμ(x)
と定義する. また, 単位ベクトル eμ(x) の共変微分を
∇βeμ(x)=Γαμβeα(x)
と定義すれば,
∇βu=(∂βuμ)eμ(x)+Γαμβuμeα(x)=(∂βuμ+Γμαβuα)eμ(x)
となる. したがって, 反変ベクトルの共変微分は
∇βuμ=∂βuμ+Γμαβuα
と求まる.
共変ベクトルの共変微分を求める.
∇β⟨Wμ(x),eν(x)⟩=⟨∇βWμ(x),eν(x)⟩+⟨Wμ(x),∇βeν(x)⟩=∇βδνμ=0,∴⟨∇βWμ(x),eν(x)⟩=−⟨Wμ(x),∇βeν(x)⟩=−⟨Wμ(x),Γανβeα(x)⟩=−Γμνβ
したがって, 共変ベクトルの基底の共変微分は
∇βWμ(x)=−ΓμνβWν(x)
と求まる. V=VμWμ(x) に共変微分を作用させると
∇βV=(∂βVμ)Wμ(x)+Vμ∇βWμ(x)=(∂βVμ)Wμ(x)−ΓμνβVμWν(x)=(∂βVμ−ΓνμβVν)Wμ(x)
となるから, 共変ベクトルの共変微分は
∇βVμ=∂βVμ−ΓνμβVν
と求まる.
反変ベクトル uμ の共変微分は
∇βuμ=∂βuμ+Γμνβuν,共変ベクトル Vμ の共変微分は
∇βVμ=∂βVμ−ΓνμβVνである.
一般のテンソル
T=Tμ1⋯ν1⋯eμ1⊗⋯⊗Wν1⊗⋯
への共変微分も同様にして
∇βTμ1⋯ν1⋯=∂βTμ1⋯ν1⋯+n∑ΓμnαβTμ1⋯α⋯ν1⋯−m∑ΓανmβTμ1⋯ν1⋯α⋯
と求まる.