一般相対論

; draft

反変べクトルと共変ベクトル

\(\{\bm{e}_μ(\bm{x})\}\) の双対基底を \(\{\bm{W}^μ(\bm{x})\}\) とする. それぞれの基底で張られるベクトル \(\bm{u} = u^μ \bm{e}_μ(\bm{x})\), \(\bm{V} = V_μ \bm{W}^μ(\bm{x})\) について, \(u^μ\) を反変ベクトル, \(V_μ\) を共変ベクトルという. 以降, わかりやすいように

\[⟨\bm{V},\bm{u}⟩ ≡ \bm{V}(\bm{u})\]

と書くことにする. つまり, 反変ベクトルの基底 \(\{\bm{W}^μ(\bm{x})\}\) は

\[⟨\bm{W}^μ(\bm{x}),\bm{e}_ν(\bm{x})⟩ = δ^μ_ν\]

を満たすから,

\[⟨\bm{V},\bm{u}⟩ = ⟨V_μ \bm{W}^μ(\bm{x}), u^ν \bm{e}_ν(\bm{x})⟩ = V_μ u^ν ⟨\bm{W}^μ(\bm{x}),\bm{e}_ν(\bm{x})⟩ = V_μ u^μ\]

となる.

反変ベクトルの共変微分

点 \(\bm{x}\) から有限変位 \(Δ\bm{x}\) 移した点 \(\bm{x}'≡\bm{x}+Δ\bm{x}\) について, ベクトル場 \(\bm{u}(\bm{x})\) と \(\bm{u}(\bm{x}')\) を比較する. \(\bm{u}(\bm{x})\) を点 \(\bm{x}'\) 上に平行移動したベクトルを \(\bm{u}_{\parallel}(\bm{x}')\) として, 差を

\[Δ\bm{u}(\bm{x}') ≡ \bm{u}(\bm{x}') - \bm{u}_{\parallel}(\bm{x}')\]

とする. 点 \(\bm{x}'\) 上の基底ベクトル \(\{\bm{e}_μ(\bm{x}')\}\) で展開して,

\[\begin{aligned} Δ\bm{u}(\bm{x}') &= Δu^μ(\bm{x}') \bm{e}_μ(\bm{x}'), \\ \bm{u}_{\parallel}(\bm{x}') &= {u_{\parallel}}^μ(\bm{x}') \bm{e}_μ(\bm{x}'), \\ \bm{u}(\bm{x}') &= u^μ(\bm{x}') \bm{e}_μ(\bm{x}') \\ \end{aligned}\]

とする. 有限変位を \(Δ\bm{x} = Δx^β(\bm{x}')\bm{e}_β(\bm{x}')\) と展開すると, 変位とベクトルの差の関係は

\[Δu^μ(\bm{x}') = \frac{Δu^μ(\bm{x}')}{Δx^β(\bm{x}')} Δx^β(\bm{x}') = \frac{u^μ(\bm{x}')-u^μ_{\parallel}(\bm{x}')}{Δx^β(\bm{x}')} Δx^β(\bm{x}').\]

と書き表せる. さて, 有限変位を \(Δ\bm{x}→\d{\bm{x}}\), \(Δx^β(\bm{x}')→\d{x^β(\bm{x}')}\) と無限小にして, 共変微分を

\[∇_βu^μ ≡ \lim_{Δx→0} \frac{u^μ(\bm{x}')-u^μ_{\parallel}(\bm{x}')}{Δx^β(\bm{x}')}, \quad ∇_β\bm{u} ≡ ∇_βu^μ \bm{e}_μ(\bm{x}) = \lim_{Δx→0} \frac{\bm{u}(\bm{x}')-\bm{u}_{\parallel}(\bm{x}')}{Δx^β(\bm{x}')}\]

と定義する. つまり, \(\d{\bm{x}} = \d{x^β}\,\bm{e}_β(\bm{x})\) に対して

\[\d{\bm{u}} = \d{x^β} ∇_β\bm{u} = ∇_βu^μ \d{x^β} \bm{e}_μ(\bm{x})\]

と書ける. さて, 共変微分を \(\bm{u} = u^μ \bm{e}_μ(\bm{x})\) に作用させたとき

\[∇_β \bm{u} = (∂_β u^μ) \bm{e}_μ(\bm{x}) + u^μ ∇_β \bm{e}_μ(\bm{x})\]

と定義する. また, 単位ベクトル \(\bm{e}_μ(\bm{x})\) の共変微分を

\[∇_β \bm{e}_μ(\bm{x}) = {Γ^α}_{μβ} \bm{e}_α(\bm{x})\]

と定義すれば,

\[\begin{gathered} ∇_β \bm{u} = (∂_β u^μ) \bm{e}_μ(\bm{x}) + {Γ^α}_{μβ} u^μ \bm{e}_α(\bm{x}) = (∂_β u^μ + {Γ^μ}_{αβ} u^α) \bm{e}_μ(\bm{x}) \end{gathered}\]

となる. したがって, 反変ベクトルの共変微分は

\[∇_βu^μ = ∂_β u^μ + {Γ^μ}_{αβ} u^α\]

と求まる.

共変ベクトルの共変微分を求める.

\[\begin{gathered} ∇_β⟨\bm{W}^μ(\bm{x}),\bm{e}_ν(\bm{x})⟩ = ⟨∇_β\bm{W}^μ(\bm{x}),\bm{e}_ν(\bm{x})⟩ + ⟨\bm{W}^μ(\bm{x}),∇_β\bm{e}_ν(\bm{x})⟩ = ∇_βδ^μ_ν = 0, \\ ∴⟨∇_β\bm{W}^μ(\bm{x}),\bm{e}_ν(\bm{x})⟩ = - ⟨\bm{W}^μ(\bm{x}),∇_β\bm{e}_ν(\bm{x})⟩ = - ⟨\bm{W}^μ(\bm{x}), {Γ^α}_{νβ} \bm{e}_α(\bm{x})⟩ = -{Γ^μ}_{νβ} \end{gathered}\]

したがって, 共変ベクトルの基底の共変微分は

\[∇_β\bm{W}^μ(\bm{x}) = -{Γ^μ}_{νβ} \bm{W}^ν(\bm{x})\]

と求まる. \(\bm{V} = V_μ \bm{W}^μ(\bm{x})\) に共変微分を作用させると

\[∇_β\bm{V} = (∂_βV_μ) \bm{W}^μ(\bm{x}) + V_μ ∇_β\bm{W}^μ(\bm{x}) = (∂_βV_μ) \bm{W}^μ(\bm{x}) - {Γ^μ}_{νβ} V_μ \bm{W}^ν(\bm{x}) = (∂_βV_μ - {Γ^ν}_{μβ} V_ν) \bm{W}^μ(\bm{x})\]

となるから, 共変ベクトルの共変微分は

\[∇_βV_μ = ∂_βV_μ - {Γ^ν}_{μβ} V_ν\]

と求まる.

反変ベクトル \(u^μ\) の共変微分は

\[∇_βu^μ = ∂_β u^μ + {Γ^μ}_{νβ} u^ν,\]

共変ベクトル \(V_μ\) の共変微分は

\[∇_βV_μ = ∂_βV_μ - {Γ^ν}_{μβ} V_ν\]

である.

一般のテンソル

\[\bm{T} = {T^{μ_1 \cdots}}_{ν_1 \cdots} \bm{e}_{μ_1} \otimes \cdots \otimes \bm{W}_{ν_1} \otimes \cdots\]

への共変微分も同様にして

\[∇_β {T^{μ_1 \cdots}}_{ν_1 \cdots} = ∂_β {T^{μ_1 \cdots}}_{ν_1 \cdots} + ∑_n {Γ^{μ_n}}_{αβ} {T^{μ_1 \cdots α \cdots}}_{ν_1 \cdots} - ∑_m {Γ^α}_{ν_mβ} {T^{μ_1 \cdots}}_{ν_1 \cdots α \cdots}\]

と求まる.